エイプ@ログ

ホンダのバイク『エイプ』専門のカスタム・チューニング・メンテナンスブログ

小説でつづる人生初乗り 原付MTバイク【エイプ】② ブレーキ〜加速編

ヤフオクで購入した中古エイプのエンジンを載せ替え、ナンバーも取得し、ようやく乗る準備が整ったエイプ。人生ではじめてバイクに乗った経験談を、私小説でつづる第二話です。

前回・第一話はこちら→

 

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 自動車と異なりmバイクという乗り物は前後ブレーキが独立している。

 

 リアブレーキは安定したブレーキングを可能にするが、ロックさせてしまえば挙動を大きく乱してしまう可能性がある。フロントブレーキは減速のためのメインブレーキであると同時に、バイクの姿勢を管理するために使用する。肝心なのは使いどころだ。

 

 目前に横切る真っ白な停止線との距離を測りながら、リアブレーキのフィーリングを確かめるように右足でペダルを踏み込む。

 

 リアのドラムブレーキは緩やかに車速を減衰させ、後側が沈み込むような挙動を示した。その瞬間にフロントブレーキを効かせることで車体全体が沈み込むように速度を落とす。

 

 ドラム式からディスクブレーキへと換装されたフロントブレーキは、素晴らしい制動力をもって車体を停止させようとする。速すぎる減速の立ち上がりに、クラッチレバーを握る手が追いつかないほどだ。

 

 停止線の1mもの手前で減速を終えてしまうほどのポテンシャルを発揮するブレーキ性能に満足しつつ、地面を蹴って停止線の位置まで車体を移動させた。

 

 停止線があったT字路を右折し、30m程先の交差点を左に曲がれば、そこは開けた田園のなかの一本道だ。そこまでいけばこいつを思う存分走らせることができる。

 

 交差点までの短いストレートで4速までギアを上げ、交差点に侵入する手前で減速させた。

 

 クラッチを切ると同時に右手でアクセルレバーをひねりエンジンの回転数を高めシフトダウンに備える、ブリッピングをしながら2度のシフトダウンを完了させると、ヨシムラが吐き出す轟音に路地横の畑にいた農夫が何事かと振り返った。

 

 左に身体を倒し、自転車のごとき体重移動で交差点をコンパクトにターンすると、キャブレターを流れる空気の流速を落とさないように気をつけつつ、大きめにスロットルを開ける。

 

 キャブレターはその操作に機敏に追従する。鼓動のようだった排気音は回転の高まりとともに連続的な音へと変化しあたりに咆哮を響かせた。インジェクションとくらべ、キャブレターのスロットルレスポンスは鋭い。急激な加速度変化によって私はわずかに身体を後ろにのけぞらせた。

 

 4,000rpm……4,500rpm……3速へシフトアップ。ドグミッションとクロースしたギア比により、ギアを上げても加速はほとんど衰えない。一度落ちたタコメーターのデジタル指針は再び上昇に転じる。しかし、私はそこでスロットルレバーをわずかに戻す。レブリミットまで回すことはできないからだ。

 

 中古のエンジンであるため本来は「ならし運転」の必要はないが、エンジンはアクセルワークの癖ひとつでピストンリングやベアリングの摩耗状態が変わる。乗り手が変わればエンジンの調子も変わってくるのが通説だ。そのため時間をかけて、私の乗り方にアジャストさせていく必要があった。

 

 エイプに搭載された排気量50ccのエンジンは、その3馬力強のすべてを使わなくとも、私の軽い身体をいとも簡単に加速させる。

 

 バイクには、自動車のようなフロントウィンドウも強固なスチールモノコックも存在しない。私は身体を外気にさらしながら、青空の下に広がる田園風景が織りなすライトグリーンとスカイブルーのコントラストへと向かう。私は、決して人間の身体ひとつでは到達できない速度で猛進していた。

 

 スピードメーターが示す速度は15km/h…16……17……まだまだ伸びていく。

 

 しかし、20km/hを超えたあたりで本能的にスロットルレバーを緩めた。これ以上は速度を上げることができなかった。

 

 身体がスピードに対する恐怖でこわばってしまうのだ。これまで数多くの乗り物を乗りこなしてきた私ともあろうものが情けない。己を罵りながら、左足でペダルを蹴り上げ等速巡航に切り替えた。

 

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