バイクのエアクリーナーをパワーフィルターに付け替えると確かにパワーアップします。しかしそれは、吸気管長の短縮および吸気径拡大によってトルクバンドが高回転側へシフトしただけです。
そのため安易にパワーフィルターへと変更すると低速トルクが低下し、乗りづらいバイクになってしまします。
高回転まで回すのならともかく、街乗りをするぶんにはエアクリーナーボックスのほうが有用です。バイク購入時に付いてたパワーフィルターを純正エアクリーナーボックスへと戻すとどのように変化するかを実例をもって解説します。
目次
パワーフィルターは必要か?
自動車界隈では俗に毒キノコなどと呼ばれるむき出し型のエアクリーナーは、吸気面積を増やし、吸気抵抗を減らしてパワーを出しやすくするエンジンカスタムの定番アイテムです。とくにパイク用の剥き出しエアクリーナーは『パワーフィルター』などとも呼ばれます。
吸気抵抗が減れば、エンジン吸気工程での機械ロスが減るためパワーアップにつながります。純正エアクリーナーボックスでは吸気量が足りない、あるいはサーキットなどで高回転域を多用するのであればパワーフィルターは有用なパーツです。ただし相応のデメリットも存在します。
パワーフィルターはデメリットだらけ
剥き出し型のエアクリーナーは遮音壁を持たないため、エンジンのメカニカルノイズは吸気管内を反響して直接耳に届きます。おまけに、エアクリーナーからスピーカーのようにノイズが発せられるため非常にうるさく、回転を上げると排気音以上の騒音となる場合があります。
パワーフィルターなどの装着や直キャブによる吸気抵抗低減はパワーが上がるのは確かですが、正確にはトルクバンドがより高回転側にシフトするだけの結果にすぎません。そのため、発進加速が弱く感じられたり、微妙にスロットルを開けた際のトルク感に欠け、バイクが扱いづらくなるデメリットがあります。
バイクは絶対的なパワーよりもスロットルレスポンスとコントロール性など、入力操作に対しての出力レスポンスがなによりが重要な乗り物です。
程度のよい中古品が手に入ったため、購入時に付いていた武川製のパワーフィルターは取り払い、ノーマルエアクリーナーボックスに交換します。
エイプのエアクリーナーBOXは年式によって違う
ヤフオクで購入したのは100ccタイプD用のエアクリーナーボックス。送料無料で3,200円でした。難なく取りつけて完了と思いきや、なかなかフレームのなかに入っていきません。アッチを入れればコッチが入らず、コッチを入れればアッチが入らない知恵の輪状態です。
落ち着いてよく見てみると、エアクリーナーボックスの上についている「くの字形」の金具が邪魔している模様。これがちょうどフレーム側のレギュレーターステーにあたって取りつけできない模様です。仕方がないので手で折り曲げるも、厚手のスチール製で硬く、なかなか曲がらりません。なんとか取りつけできる位置まで力づくで曲げて、ようやく取り付けできました。
このボックス上部にある「くの字」型のステーは、環境性能を向上させるための装置を取付けるためのステーのようです。
コネクティングパイプの長さにも注意!
エアクリーナーボックス自体の取付けはできたものの、今度はコネクティングパイプが短くてキャブレターまで届きません。
購入したのは100cc用エアクリーナーボックスであり、エイプ100はキャブレターが大きいぶん、コネクティングパイプが短く設計されているため、単純に流用はできません。
さしあたり、これまで付いていた武川製パワーフィルターのパイプを流用すると、少々短いながらもなんとか届きます。
エイプのコネクションパイプの長さは、50cc用>武川パワーフィルター>100cc用の順になります。パーツを購入する際は、エンジン仕様や年式などを確認し、しっかりと適合するものを選ぶことが大切です。
エンジンピックアップと静粛性が改善
純正エアクリーナーボックスに換装後は、巡航速度で聞こえるのは「キュルルルル」という滑らかな回転音と、マフラー重低音のみ。エアクリーナーボックスが不快なメカニカルノイズをキレイに抑えてくれています。吸気音の大小によっても、ロングツーリングでの疲労感は大幅に変化します。
またエアクリーナーボックスを装着したことで吸気量が適度に制限され、アイドリングより少し上の極低回転域からトルクが増しました。発進でクラッチをラフにつないだとしてもエンストする気配がありません。街乗りでは非常に乗りやすくなります。
そのぶん、6,000rpm以上では回転上昇が鈍る感じはするものの、エンジンノイズの高まりによる心理的圧迫がないため、高回転を維持して走行することに抵抗がなくなります。
定常円旋回をしてみると、微低速でのトルクアップと、スロットルのつきがよくなっているため、より低い速度かつ小さな半径で旋回できるようになりました。姿勢を崩しても、わずかにスロットルを開ければ即トルクが立ち上がるため、姿勢を立て直すのも容易になります。
これらの結果から、街乗りにおいてはパワーフィルターを装着するメリットはないと個人的には判断します。
エアクリーナーボックスのままでもパワーアップはできる
ボアアップエンジンやチューニングエンジンでは純正エアクリーナーボックスにもどすと吸気量が足りずにパワーダウンが顕著になる場合があります。
その場合はエアクリーナーボックス状のインレット(空気取り込み口)をカッターなどで削って拡大してやることで吸気量が確保できます。
これでも吸気量が足りなければインレットを取り外したり、より吸気口が広く確保されたホンダ XR100用のインレットに交換するなどの手法も取れます。
ただし、それでも総合的な吸気管長の短縮や吸気管内径が大きなることでわずかにパワーバンドが高回転寄りに変化するのは避けられません。
吸気効率に優れる順番で並べると以下のようになります。
- インレットなし(もっとも吸気効率が高い)
- XR100純正インレットの流用
- インレットあり
- インレット加工
- ノーマルインレット(もっとも吸気効率が低い)
エンジンのチューニング度合いやバイクの使用環境、求める性能に応じて選び分けることが大切です。
エアクリーナーBOXのままパワーアップできるエアフィルターは?
それでも吸気量が足りないようであればエアクリーナーエレメントを交換しましょう。
定番パーツはスポンジのみを交換する『デイトナ・ターボフィルター』ですが、同製品は集塵性が著しく低下する割に、ノーマルのエレメント基部を使用するため吸気抵抗の低減はほとんど期待できません。
エイプのエアクリーナーエレメントは、本体そのものを交換することをおすすめします。
以下の記事では、レースシーンでも用いられるラムエアフィルターを装着方法を解説しています。本来、剥き出しにか付けられないラムエアフィルターをエアクリーナーボックス内に収めるための手順です。これにより静粛性もさらにアップします。
エアクリーナーはブローバイガスの排出効率にも関わる
低抵抗のエアフィルターは、吸気管内の負圧を低下させ、ブローバイガスの排出効率低下を招く恐れがあります。
ブローバイガスが効率的に排出されないと、高くなったクランクケース内圧がエンジン内部で抵抗となりパワーロスを招きます。
むき出しのパワーフィルターは高回転域でパワーアップする一方で、同時にブローバイガスの排出効率が落ちることで高回転域でパワーロスを起こしている場合があります。
↓以下はブローバイガスの排出効率を高める方法についての記事です。
↓ハンドルの振動対策にはこちらも有効。バーエンドはハンドルの材質や震え方によって取り付け方を変えてやるやることが肝心です。