アンダーパワーの小排気量エンジンは回転数を上げてパワーを稼ぐしかありません。
吸気経路の段差は、高回転になるほど吸気抵抗が大きくなりパワーやエンジンフィーリングに影響します。
費用をかけずにできる吸気系の改善方法を解説します。
ポート段付き
ポートに段付きがある状態とは、エンジンとインテークポートの製造精度によりポート径が異なったり、しっかりと一致していない状態を指します。
エンジンポート径に対してインテークマニホールドが細ければ、エンジンの吸気量に対して、インテークマニホールドがボトルネックとなりパワーロスの原因になります。
ポート径が一致していなければ、有効ポート径は楕円に狭まり、やはりパワーは出ません。
また、エンジンポートとインテークマニホールドの間にに大きな段差があれば、乱流が発生しやすく吸気ロスとなります。
吸気経路にある障害を取り除き、なるべく吸気ロスのない状態にリファインしてやるのがマニホールドポートの段付き修正です。
インテークマニホールドをヤスリで削る
エンジン右側(クラッチ側)の、ポートとマニホールドに段差が見つかりました。
ポートに対してマニホールドの出っ張っている部分にマジックでマーキングし、その部分をヤスリで削ります。
マニホールドはアルミ製のため比較的削りやすく、手作業でもそれほど時間はかかりません。
エイプ50の吸気経路は、マニホールドで緩く「くの字」に曲がっています。
キャブとフレームの干渉を防ぐための措置と思われますが、こういった曲がりも吸気ロスとなるため、できる限り真っ直ぐに近くなるようにマニホールドを削り込んでやるのがよいでしょう。
鏡面加工にすると効率はかえって落ちる
最後はペーパーである程度滑らかに仕上げます。しかし、鏡面仕上げにするのは考えものです。
流体は流速が早まるほど粘度が増すため、平らな面にへばりつきやすく吸気流速は逆に低下してしまいます。
そのため、ゴルフボール表面の凸凹(ディンブル加工)は空気抵抗を減らすための加工が施されています。流速が高まるポート内部も同じく、ある程度ザラザラしていたほうが吸気抵抗が少なくなります。
一昔前はピカピカに磨かれていたレーシングエンジンのポート研磨も、現在はある程度表面を荒らしておくのが常識のようです。
インシュレータの段差をなくしつつ拡大
キャブレター➝インシュレーター間と、インシュレーター➝マニホールド間も段差がつかないように削ってやらなければ効果は半減します。
ノーマルでは、このキャブとインマニ間のインシュレーターの内径が極端に小さく設計され、エンジンの吸気量が規制されています。
穴を拡大し、キャブとインマニを空気が滑らかに流れるようにしてやることでエンジン性能を引き出すことができます。
ヤフオク中古で購入した50ccエンジンは、インシュレーターがあらかじめ拡大された状態だったため、より精度高く削り込んでやります。
パーツの取付精度を高める
せっかく削ったマニホールドやインシュレーターも、無造作に取りつけただけでは努力が水の泡です。
ボルトとボルト穴にはわずかな遊びがあるため、しっかりと位置あわせをして取りつけなければ段差が生じ、これも吸気抵抗となってしまいます。
取付け前にマーキングするなどして、最適な位置になるように各部を調整して取付けましょう。小排気量でアンダーパワーのエイプこそ細かな部分に気を使う必要があります。
エアクリーナーボックスインレット穴を拡大
エアクリーナーボックス上のインレットパイプも拡大して吸気量を確保します。
エアクリーナーボックス上についたインレットパイプは内部に絞りが設けられ、小指第一関節大にまで吸気が制限されています。
そこで、ゴム製のインレットパイプをカッターで削って吸気口を拡大しました。スムーズに空気が流れるようにテーパー状に加工するのがポイントです。
吸気効率を望むのならば外してしまうのがよいのでしょうが、吸気管長確保や雨天走行を考慮するとそのまま残しておきたい部品です。
また、このゴム製のインレット自体にも消音効果があるため、安易にはずしては吸気音が増大してしまいます。
50ccや100cc程度の排気量であればこの程度の内径が確保できれば十分でしょう。
吸気系リファインの実走インプレッション
実際に乗って吸気系リファインによる変化度合いをはかります。
キックペダルがいつもより軽くなった……ような気がします。
エンジンが始動すると、マフラーの音がいつもより静かになった……ような気がします。
走り出してみると、いつもよりも中間加速が滑らかになった……ような気がします。
軽々と前に進むように感じるのは、やや追い風気味だったせいかもしれませんし、コネクティングパイプ径が変わったことで吸気流速が変化したのかもしれません。
いずれも気の所為と片付けられる程度にしか感じられません。
しかし、少なくとも悪くはなってはいません。チューニングを進めるほど、こういった細部の処理が重要になってきます。
吸気経路の取り付け状態は高回転まで回すほど影響の大きい箇所でもあります。
高回転を常用する場合には常にベストな状態に保っておきたいところです。
↓後日、インテークマニホールドおよびキャブレターにディンプル加工を施しました。
こちらも工具さえ揃えれば0円でエイプをパワーアップできます。
↓吸気系の仕上げと同じくらい電気配線端子のメンテナンスも重要です。端子磨きをするだけで、バイクの調子が良くなったように感じられるはずです。
↓以下、サスペンション周りの0円カスタム・定額カスタムシリーズ記事です。