吸気抵抗低減を狙って、インマニにディンプル加工を施しました。
期待した結果とはなりませんでしたが、何らかの変化はあるようです。ディンプル加工の機能と有用性について解説します。
ゴルフボールがよく飛ぶ理由「ディンプル加工」とは?
ゴルフボールや野球の軟式球に全面に渡って、小さなくぼみを設けたディンプル加工が施されています。
これは、バックスピンしながら高速度で進むボールの空気抵抗を減らすための加工であり、ディンプル加工があることで飛距離と球速が上がります。
空気や水などの流体は流速が上がると粘性を帯び、平面にへばりつくような動きをするため、物体の動きを妨げる抵抗になります。
高速度で流れるほどその特性は強くなるため、表面に凹凸加工を施すことで、乱流を発生させ、まとわりつく空気の剥離を促すのがディンプル加工の目的です。
ディンブル加工はゴルフボールだけでなく、競技強自転車のホイール、スピードスケートや競泳のスーツ、調理器具の撥水加工などにも用いられており、物質表面を流れる流体抵抗を低減することが証明されています。
ディンプル加工による効果は?
「バイク ディンプル加工」で検索すると、このディンプル加工をインテークマニホールドやインテークポートに内壁に施す方々が散見されます。
エンジンの吸気経路を流れる空気は秒速数10mにも達し、吸気管内側で発生する抵抗はかなりのもの。
とくにバイクの高回転型エンジンでは、それだけ流速が上がりやすいため効果的と考えたのでしょう。
ディンプル加工後のインプレッション結果の多くは、「トルクがアップする代わりに、トップエンドでパワーがでなくなる」「燃調が薄くなるため、ジェットの番手を上げた」などです。
エイプ50は細いインテークポート径がパワーアップのネックになります。トップエンドまで回したときにはかなりの流速になり、大きな抵抗が発生しているものと思われます。
ポートを拡大すればピークパワーの向上が望めますが、それには高い加工技術と費用が必要です。
簡単に手を加えられる方法としてインテークマニホールドのディンプル加工を試してみます。
インテークマニホールドをリューターで削るだけ
作業は単純です。インテークマニホールドの内壁を、丸型の砥石がついたリューターで凹状の穴をつくっていきます。加工時間は1箇所あたり5秒間程度。
削ったディンプルの数は100箇所くらいでしょうか。比較的柔らかいアルミの鋳造マニホールドなら加工にそれほど時間はかかりません。
最後に、バリを紙ヤスリで落とし、パーツクリーナーで洗浄して完了です。
インプレッション
期待したような劇的変化は感じられませんでした。トルク感が増しているといわれれば増しているような気がしないでもありません。
吸気抵抗が減るどころか、わずかにレスポンスダウンしたようにも感じられます。加えて、先人達が言うように高回転まで回りにくくなっているような気もします。
しかし、エンジンがきめ細かやかな回り方をするようになったのが印象的です。
とくに、エンジン停止後の再始動直後が顕著であり、キャブレターが熱くなった状態で走り出すと、エンジンがいつもより滑らかに回っているように感じられます。
これはディンプルの乱気流と熱による燃料の気化が相まって、燃料の霧化が促進されたとのではないかと予想されます。
燃料が気化したぶん充填されるガソリン量が減ったためか、スパークプラグが焼け気味に変化していました。ジェットをリセッティングすればパワーアップが狙えるかもしれません。
「燃調が薄くなる」という点も先人達の言うとおりの結果になりました。
霧化について:ガソリンにとって燃料は細かいほど良い
ガソリンを効率よく燃やし、多くのエネルギーを取り出すには、ガソリンと空気を一定割合で均一分布に混合する必要があります。
不均一な混合分布では燃え残りが発生し、使った燃料に対して小さなエネルギーしか取り出せません。また、燃え残ったガソリンはそのままマフラーから排出され大気汚染の原因となります。
キャブレターは、大気圧と吸入空気による負圧の圧力差によって燃料を霧化させる装置です。
その霧化性能はインジェクションには言うに及ばず、ボトルスプレーほどにもキレイな霧状の混合気にはなりません。
実際には、以前Youtubeの動画で見たように、多くの燃料が吸入空気に沿って壁面を流れ、そのうちの一定割合が霧状となりエンジンに吸気されているのでしょう。
ディンプル加工によって、壁面を流れる燃料の一部が霧化しやすくなったのが今回の結果につながったのだと思われます。
今回の件で、キャブレターの欠点である霧化性能を促進させることでバイクの性能を向上させられる可能性があることがわかりました。
ディンプル加工による吸気抵抗の減少は、もっと速い流速でなければ体感は難しいようです。
キャブレターにディンプル加工を施すとどうなる?
後日、さらにガソリンの霧化を促すべくキャブレターにもディンプル加工を施しました。
ジェットを変更して、燃料を増量するほどトルクが出る感覚は感動を覚えるほどの変化。しっかりとパワーアップが体感できました。
キャブレターとディンプル加工は相性がよいと自身をもっていえます。ただし、加工に失敗すると調子を崩す恐れがあることは理解しておく必要があります。
↓加工したインマニの取付け方も重要です。吸気経路の勘合部に段差があったり、内径が揃っていないとパワーダウンの原因になりえます。
↓電気配線の劣化もバイクの調子に関わります。劇的な改善は見込めなくとも、なんとなく調子がよくなったように感じられるのが配線メンテの効果です。
シートを外したときに同時にできる配線メンテナンス方法を解説しています。