手軽エンジン内部が洗浄できる『ワコーズ フューエルワン』は洗浄系燃料添加剤の決定版ともいえる商品です。ただし効果が高いぶん使用上の注意点も多く、とくに小排気量エンジンへの入れ過ぎは不調に陥る可能性が高まります。
今回は原付エイプ50をテスト車両として小型バイクにワコーズ フューエルワンを使用したレポートです。使用後のパワーや燃費の変化の検証に加え、フューエルワンを使用する際に気をつけたい点を解説します。
目次
- ワコーズ フューエルワンとは?洗浄系ガソリン添加剤の決定版!
- ワコーズ フューエルワンの効果とメリット
- ワコーズ フューエルワンの正しい使い方
- フューエルワンの効果検証結果【ホンダ エイプ50の場合】
- 【フューエルワンのデメリット】エンジンのパワーダウンや始動不良の症状が
- フューエルワンは適切な投入量とタイミングを厳守
- 燃料添加剤とは
- 燃料添加剤の使い方
ワコーズ フューエルワンとは?洗浄系ガソリン添加剤の決定版!
数ある洗浄系の燃料添加剤のなかでも、『ワコーズ・フューエルワン』は日本を代表するモーターケミカルの総合メーカー「WAKO'S(和光ケミカル)」が古くから販売している定番の洗浄系燃料添加剤です。
こういった化学薬品は、効果レベルを問わず、効果さえ認められれば低コストで製造可能です。たいした効果がないものが高価で販売されていたり、効果が高い代わりに、エンジン故障のリスクがあるものなど、体感しづらいことを逆手にとって営利をむさぼる目的で製造される製品も少なくありません。
そのなかでも、ワコーズ フューエルワンは、価格と効果、信頼性の総合力が非常に高い商品です。
ワコーズ フューエルワンの効果とメリット
フューエルワンの特徴的な青いパッケージボトルには以下の3点の効能が記載されています。
- 燃費・パワー回復
- 有害排出ガス低減
- 燃料タンク防錆
ガソリンの流路には長年の使用で堆積物(スラッジやワニス)が溜まり、燃料ラインなどは走行距離に比例して狭くなり、キャブレターのジェットやインジェクター小さな穴は詰まりがちになります。
また、長年の使用でエンジン内部の燃焼室は燃えカス(カーボン)が溜まることで、多くの場合にエンジン性能を低下。多気筒エンジンでは各気筒の燃調バランスが崩れ、エンジンフィーリングも悪化する傾向にあります。
フューエルワンにはPEA(ポリエーテルアミン)という化学物質が高濃度で配合され、燃料系統に付着したカーボンやスラッジ、ワニスなどを溶かして洗浄し、エンジン本来の性能を取り戻します。
それによりフューエルワンの効能である「燃費・パワー回復」と「有害排出ガス低減」が発揮されます。とくにインジェクション車への使用は、洗浄困難なフューエルエンジェクター内部を洗浄できる大きなメリットがあります。
また、フューエルワンには燃料の酸化や腐食を防止する作用もあるため、古いエンジンや冬場は動かせないバイクの調子を保つための必須アイテムといってもよいでしょう。
過走行車や、どういう使われ方をしたのかわからない中古車には、まずフューエルワンを使って燃料系統をリフレッシュしておくことをおすすめします。
使い方が非常に簡単な点もフューエルワンを使う大きなメリットです。
ワコーズ フューエルワンの正しい使い方
フューエルワンの使い方は燃料タンクに薬液をいれるだけです。フューエルワンは200ml入りであり、ガソリン20〜60Lに対して1本を投入して使用します。
自動車ならガソリン満タンのタンクにフューエルワン1本投入。フューエルワンを投入してからガソリンを満タンにすることで薬液の撹拌を促すことができます。
バイクは入れすぎ厳禁! 入れ方にも気をつけて
注意したいのは燃料タンクが小さなバイクへの投入時です。フューエルワンの取扱説明には『20L以下の燃料には濃度1%を超えないように使用するように』と注意書きがなされており、これは薬液自体が不燃性であるフューエルワン使用時の始動トラブルやパワーダウンを防ぐための措置です。
原付バイクであるホンダ エイプの燃料タンク容量は5.5Lであるため、投入量は最大でも55mlです。ただし、エイプの燃料タンクは中央でセパレートしているため、燃料コック側だけにフューエルワンを入れてしまうと薬液濃度が高くなりトラブルが発生してしまいます。
こういったバイクの場合はタンク内の左右に分割して入れ、さらにバイクを傾けてシャッフルさせてやりましょう。あとは走行時に撹拌されます。
連続投入でさらに効果的に洗浄!ただし残存濃度に注意
2回以上続けて投入すると効果が高まるとのことですが、2度目のフューエルワン投入量は給油量に応じて、やや少なめに入れなければ濃度が高まってしまう点には注意が必要です。
とくに燃料の絶対量が少なく、エンジン出力も低い原付では、投入量を誤るとフューエルワンによる始動不良やパワーダウンが顕著に現れます。バイクへの使用時は投入量をしっかりと計算して入れるようにしてください。
エイプには4〜5回ほど使えそうなので、値段は1本あたり2,000円強。やや高価ではありますが、そのコストパフォーマンスは高いものといえるでしょう。
フューエルワンの効果検証結果【ホンダ エイプ50の場合】
投入直後の変化
自動車の場合、60Lに対して1本=0.3%でも効果は出るようなので厳密に計る必要はないと思われますが、フューエルワンの投入によるトラブルを避けるため、原付のホンダ エイプには濃度約0.7%の40mlに抑えて投入しました。
案の定、フューエルワンを投入したことで始動性がやや低下。始動してもアイドルが安定する前にスロットルを離してしまうとエンジンが止まってしまいます。
エンジンが温まってさえいればいつもと同じように始動できますが、冷間始動時はアイドリングが落ち着くまでスロットルを固定しておかなければならなくなりました。
キャブレターは想像以上に燃料濃度に敏感な様子。排気量が小さい原付のキャブレターエンジンには0.7%程度でも性能に大きな影響があるため、もう少しフューエルワンの投入量を減らしてもよいでしょう。
投入後、100kmほど走行しましたが体感できるような変化はありません。過去に自動車へと使用した際は走行しながら洗浄による変化が感じられたことを覚えています。
つまりはフューエルワンを投入したエイプに、極端な燃料系統のや吸気系統の詰まりなどはないということでしょう。洗浄系燃料添加剤は、当然エンジン内部が極端に汚れていなければ効果は体感できないものです。
普段のメンテナンスがおざなりにされている過走行気味の車両や、インジェクション車ならもっと効果を体感できるかもしれません。
給油後の変化
後日、給油後の変化を改めて検証しました。156km走行して給油量は3.2L。フューエルワンの割合は給油後でも、0.3%程度混在している計算になります。
給油後は始動性が明らかに向上しました。排気音も勇ましくなり、低中速の加速が一回りトルクフルに変化。最高速度もわずかにアップした模様です。ただし、これはフューエルワンの効果とはいい切れません。
燃えづらいフューエルワンが給油によって希釈されたため、給油前に比べてパワーアップするのは当然です。フューエルワン投入前の状態をしっかりと覚えていなければ、投入前後の状態変化を感じ取るのは困難でしょう。
パワーアップはわかりやすものの、パワーダウンは非常に感じづらいのが人間の感覚であり、人間は相対的にしか物事を判断できないのが普通です。
フューエルワンによるパワーアップの是非はともかく、始動性は確実に向上している模様。温間時であれば、ほぼキック1発で始動できるようになっています。
【フューエルワンのデメリット】エンジンのパワーダウンや始動不良の症状が
もちろんフューエルワンにもデメリットがあります。
前述したように、フューエルワンは 『濃度が1%以上にならないように』と注意書きがされており、過剰に入れた場合は、薬液自体の不燃性による影響でエンジン不調や始動不良に陥ります。
今回の検証からわかったこととして、フューエルワンの投入量は1%では明らかに過剰。0.7%程度でも一時的なパワーダウンは必至であること。
自動車の場合はガソリン40〜60Lに対して、200ml(1本)の割合となっているため、0.5%前後に抑えて使っても十分に効果を発揮することでしょう。それくらいの割合であれば、走行しながらフューエルワンの洗浄効果過程が体感できると思われます。
また、連続使用は効果的であるものの、残った燃料にも洗浄成分が残っているため、連続2回目以降の投入量は、過剰にならないように調整する必要があります。
とくに軽自動車やバイクなどの小排気量エンジンや、燃料濃度に過敏な反応をしめすキャブレターエンジンはフューエルワンによる一時的なパワーダウン症状が顕著に現れるため、0.5%弱の薄めの濃度で使用するのがよいでしょう。
フューエルワンは適切な投入量とタイミングを厳守
もちろん、インジェクターや吸気バルブにカーボンやワニス等の汚れがほとんど体積していない場合は、フューエルワンを投入しても無意味です。
フューエルワンにはガソリンの劣化防止やタンクの防錆効果も備わっていますが、あくまで洗浄剤です。投入中はカーボンの堆積量は減るものの、これ自体にカーボンの付着を予防する効果はありません。
前述したとおり、フューエルワン投入中は燃料濃度が低下するため、洗浄効果によるパワーアップや燃費アップはあれど、絶対的なエンジン出力は低下します。つまり、汚れていないエンジンへの投入はドライバビリティや燃費性能、燃料コストを悪化させるだけです。
ある程度の走行距離ごとに使うのがフューエルワン本来の使い方であり、入れ過ぎと使い過ぎはむしろ金銭的なデメリットの方が大きくなるでしょう。また、長期の継続使用は材料工学的な観点でエンジンや燃料系統にどのような影響が出るかも定かではありません。
ワコーズフューエルワンをご使用の際は、用法用量を守って正しくお使いください。
フューエルワンを使い切れない場合もある小排気量バイクには『AZ(エーゼット)FCR-062』をおすすめします。
フューエルワンと同じくPEA配合であるうえ、フューエルワンの半分の量となる100mlボトルも販売されており、なにより安価。200mlあたりの価格が2,000円強もするフューエルワンに対し、FCR-062は100mlあたりわずか400円強です。(2023年4月現在の価格)
燃料添加剤とは
燃料添加剤とは、ガソリンや軽油などの燃料に混ぜることで特殊な効果を発揮する商品です。添加する成分によって効果は異なります。燃料添加剤を大きく分けると、洗浄効果をもつものと、燃焼を促進させてパワーアップさせるものがあります。なかには、その両方の効果を謳う製品もあります。
洗浄系添加剤
『ワコーズ フューエルワン』に代表される洗浄系添加剤は、燃料系統および燃焼室の洗浄が目的です。
ガソリンは劣化するとガム質の物質が配管やフィルターなどに堆積するため、燃料供給量が低下してしまいます。キャブレターエンジンはジェットの詰まりにより、燃料不足や燃調ズレが起こる場合があります。
インジェクションエンジンでは、より細かい経路をガソリンが通るため、キャブレターに比べて燃料噴射装置であるインジェクターに堆積物が蓄積しやすい傾向にあります。
しかし、インジェクションは燃料供給量がわずかに減ったとしても、補正機能が働くため調子の悪化に気づきづらく、知らず知らずのうちにパワーや燃費がダウンしている場合があります。
洗浄系燃料添加剤を使うもっとも大きなメリットは、分解洗浄が難しいインジェクター内部を安価に洗浄できる点といえるでしょう。
また、吸気バルブにカーボンが体積しがちなポート噴射エンジンは、バルブに体積したカーボンが除去されることで吸気効率の回復が期待できます。短距離走行を繰り返すような、燃調が濃い状態で乗られる車はとくに大きな恩恵が受けられるでしょう。
このように洗浄系の燃料添加剤はパワーダウンの原因の一部となる燃料系統の詰まりを取り除き、機能を回復させる効果をもちます。ただしそれを裏返せば、効果が体感できる車やバイクほど、エンジンの状態が悪いということを意味します。
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パワーアップ系添加剤
パワーアップを目的にする製品は、燃焼促進や潤滑促進、耐ノッキング性能を高めるものなど、さまざまなものが販売されています。
しかし、出力は向上するもののコストが非常に高く、常用するのは少々ムリがあるため、サーキットレースやドラッグレースなどの限定用途に留められるのが一般的です。
また、ハイチューンエンジンでは添加剤の配合量によっては燃調が狂い、エンジンブローが懸念されます。また、一般的に強力な薬品であるほど物質への攻撃性が高まる傾向にあるため、用法・用量には細心の注意が必要です。
ちなみに「ニトロ」と通称される「NOS(ナイトラス・オキサイド・システム)」は、燃料添加剤ではありません。亜酸化窒素の投入により高密度酸素をエンジンに吸入させる仕組みであるため燃料添加剤ではなく、むしろ空気の添加剤といえます。
燃料添加剤の使い方
パワーアップを目的とした燃料添加剤は、「スポーツ選手のドーピング」に近いものといえます。対して、洗浄目的の添加剤は、人間の身体でいう「デトックス」に近いものです。
しかし、身体の毒素を抜くデトックスであっても、成分のとり過ぎや、行為のやり過ぎは健康を害します。それと同じように、燃料添加剤の継続使用は金属や樹脂の劣化を引き起こし、エンジンの故障につながる場合があります。
少なくとも、自動車メーカーは燃料添加剤を投入した状態で稼働チェックなどはしていないでしょう。燃料添加剤は必要なときに限定して使用し、常用すべきものではないというのが持論です。
洗浄系燃料添加剤に限れば、さしあたり使ってみて効果が出たらしばらく継続使用し、効果がなければ1年に一度程度の頻度で保険的意味合いとして使うのがよいでしょう。
なかでも『ワコーズ フューエルワン』と『AZ FCR-062』は多くのユーザーに使用されている実績があるため、容量さえ守れば安心して使える洗浄系燃料添加剤といえます。
↓吸排気バルブや燃焼室の洗浄が目的であればエンジンコンディショナーの方が効率的にカーボンを落とせます。ただし即効性は高いものの、燃料添加剤の使用時以上に注意が必要です。
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↓燃費改善が目的であれば、駆動周りのロスの低減が有効です。ベルハンマーは、わずかフューエルワンと同程度の出費で燃費性能を1割向上させられることを確認しています。