トルクレンチを購入したため、規定トルクに則った増し締めを行います。
「手ルクレンチ」の精度には自信がありましたが、やはり感覚だけでは限界がありました。振動が大きいバイクのボルトは思いの外緩みます。
トルクレンチがない場合は定期的なチェック&増し締めが大切です。
目次
- バイクのボルト・ナットは緩む
- デジタルトルクレンチで緩み具合をチェック
- 締め付けトルク管理と定期的な増し締めを
- エイプのサスペンションおよびエンジンの締め付けトルク一覧
- 増し締め後はバイクの乗り味が変化する
バイクのボルト・ナットは緩む
規定トルクでボルトを締め付けたとしても、バイクのボルトは緩みます。とくにエンジンがリジッドマウントされたバイクは車体振動が大きいため、非常に緩みやすい環境です。
とはいえ、バイクの重要箇所は緩み止めナットや、2本以上のボルトで固定されているため、すぐに大事に至るケースは少ないでしょう。
しかしそのままにしていては、いずれパーツの破損や脱落を起こします。
もっとも注意したいのはアクスルシャフトです。ホイールベアリングが固着すると、ボルトの取り付け方向によってはアクスルシャフトおよびナットが緩むため重篤な事故につながる恐れがあります。
デジタルトルクレンチで緩み具合をチェック
デジタルトルクレンチはリアルタイムでトルク値が視認できるため、ボルトがどれだけ緩んでいるかを確認することができます。
リアアクスルシャフトは、スプロケット交換やチェーンの張り調整で頻繁に手を付けていたためしっかりと締まっていました。
しかしフロントアクスシャフトは規定トルク59N・mに対して20N・mほど。そういえば、締め付けるとフロントフォークの動きが極端に悪くなったため少し緩めたのを思い出しました。
エンジンマウントの太いリア側ボルトはそこそこ締まっていましたが、フロント側は22N・mに対してわずか5N・m程度でした。
高張力ボルトが使われる足回りは大きめのトルクで締め付けていたようで問題なし。ただし、ピボットシャフトは規定トルクの半分ほど。これはスイングアームの動きを気にして遠慮したのが原因だと思われます。
締め付けトルクは同じくらいの力で締め付けたつもりでも、締め付ける際のわずかな姿勢や工具の握り具合の違い、エクステンションの有無などで予想以上に大きな幅で変動します。
また、これだけボルトが緩んだ状態でも問題なく走れてしまうのが乗り物の怖いところです。ヘッドライトステーは3本のボルトの内、1本がなくなっていることに気づきました。
締め付けトルク管理と定期的な増し締めを
走行頻度にもよりますが、個人的には年に1回の総点検では不十分に感じます。
外気温によっても適正な締め付けトルクは変化するため、夏場と冬場に分けて半年に一回は確認したいところです。
とくに重要なのはアクスルシャフト・サスペンション・エンジンマウントなどの走行に関わる箇所。
サスペンションリンクはグリスが付着しているとトルク過大になりがちです。
また、アクスルシャフトはボルトの呼び径に対して極端に大きな力で締め付けなければならないため、感覚だけでトルク管理するのは難しい箇所です。
バイクの状態を維持するためには、トルクレンチによる締め付けトルクの管理と、走行距離が多い方ほど増し締めの頻度を増やすことが大切です。
エイプのサスペンションおよびエンジンの締め付けトルク一覧
エイプの重要箇所の規定締め付けトルク値一覧です。
ただし、適正な締め付けトルクはネジ部の状態や外気温によっても変化するため、これらの数値はあくまで参考値として用います。
アクスルシャフト
締付トルク※参考値 |
|
フロントアクスルシャフト |
59N・m(6.0kgf・m) |
リアアクスルシャフト |
62N・m(6.3kgf・m) |
エンジンマウント
締付トルク※参考値 |
|
エンジンマウント前側 |
26N・m(2.7kgf・m) |
エンジンマウント後側 |
44N・m(4.5kgf・m) |
リアサスペンション
締付トルク※参考値 |
|
リアサスペンションアッパー |
44N・m(4.5kgf・m) |
リアサスペンションロワー |
34N・m(3.5kgf・m) |
スイングアームピボット |
63N・m(6.4kgf・m) |
増し締め後はバイクの乗り味が変化する
増し締め後はわずかに乗り味がシャキっとした感じがします。
また、身体に伝わるエンジンの振動が増し、リアサスペンションの動きに抵抗を感じるようになったものの、断定はできません。変化したとしても気のせいで片付けられるレベルでの変化です。
プロが限界領域で走らせればハッキリと変化が感じられるのかもしれませんが、素人の公道30km/h走行では変化はほとんど感じられません。
近い内にサスペンションのグリスアップをする予定のため、総じて10%ほど少ないトルクで締め付けたことも影響しているのかもしれません。
今回のチェックで、規定トルクの半分程度でもとりあえず走れることが確認できました。
原付一種に限定すれば、アクスルシャフトの締め付け具合にさえ気をつければ、トルクレンチを用いずとも十分でしょう。ただし、定期的にボルトというボルトを総チェック&増し締めする必要はあります。
2021年4月追記
後日、ロングツーリングに出かけた際は、車体剛性の違いがハッキリと感じられました。
乗り味ややや固く感じるものの、車体に芯があるようなイメージに変わり、以前よりもバイクに体重をあずけても恐怖を感じません。
体力が消耗してくるにつれて身体の力が抜けるせいか、車体剛性の高さが頼もしく感じられます。ツーリング先では増し締めはできませんので、遠出をするほど出発前のボルトチェックが大切です。
車体の増し締めならトルクレンチに高い精度は必要ありません。使用頻度が少ないのであれば、省スペースかつリアルタイムにトルク値を確認できるデジタルトルクレンチがおすすめです。安価なものであっても、有ると無いとでは整備信頼正が大きく変わります。
↓小型・軽量・安価なデジタルトルクレンチは、やや使いづらさはあるものの、低頻度の点検・軽整備に最適な工具です。以下の記事も合わせてご覧ください。
↓もちろんトルクレンチはカスタムや一般整備でも活躍します。スイングアームなどは規定の締め付けトルクを守らなければ部品脱落や乗り心地の悪化につながります。