オイルセパレーターの位置を見直すことで、水分によるエンジンオイルの劣化や、オイルの白濁化を防止できます。
とくにオイルが白濁するような症状はないのですが、ある懸念点からオイルセパレーターの取付位置を見直しました。
理想的なオイルセパレーター位置はここ!
新たなオイルセパレーターの取り付け位置は、スイングアームの上です。
さまざまな検討を重ねた結果、エイプのオイルセパレーターの最適な取付位置は、この場所に決定しました。
ここならば、エンジンのブローバイ排出口より低いため、真っ直ぐ、かつ緩やかな傾斜を付けた配管経路にできます。
それによりエンジンからブローバイガスとともに排出された水はすべてオイルセパレーターに流れ込むため、エンジン内にも配管内にも水は溜まりません。
専用のステーを作ることも検討しましたが、そうすると今度は水分排出や清掃のための着脱が面倒なります。
整備性を確保するため、くり返し使える25cmの結束バンド2本での簡単で確実な固定方法としました。
移設によりコンディションとフィーリングを両立
タンクの移設によりスイングアームの重量増が懸念されるものの、慣性が働きづらいピボット付近であるうえ、そもそもこの程度の重量増ならサスペンション性能には何の問題にもならないでしょう。
もちろんフレームとの干渉もありません。
移設後は以前の経路よりもブローバイの流れが改善されているようで、セパレーター後は垂直に立ち上る配管の壁面に付いた水滴がアイドリングの負圧でも引っ張り上げられて落下壁面に留まっていました。
これまで配管内に溜まった水滴が、細い配管内を通るブローバイガスの流れを阻害していたのは間違いがないよう。なんとなくエンジンが軽く回るようになったような気もします。
ただし、同じようにスイングアーム上への移設は安全管理上の理由からおすすめはしません。
オイルセパレーターの役割
オイルセパレーターとは、ブローバイガスに含まれるオイル分と水分を分離する小型のタンクです。
オイルセパレーターはブローバイガス配管の途中に設けられており、高温のブローバイガスが配管内を通過する際に冷却され、水蒸気としてエンジンから放出された水分が飽和水蒸気量に達することでセパレータータンクに水だけが溜まるしくみです。
ガソリンは完全燃焼すると水が発生するため、調子の良いエンジンほどブローバイガスに水分が混じり、クランクケースに溜まります。
また、走行後の熱を帯びたエンジンは、冷却される際に結露で生じた水分がクランクケース内に溜まります。
エンジンから水を排除せよ!
溜まった水を適切に排出できなければ、クランクケース内でオイルと水分が混じりあうことで白濁した乳化物質が出来上がり、それが過剰になるとオイルラインを詰まらせ、あげくの果にはエンジンブローを起こす危険性をはらんでいます。
シールド式と呼ばれる古いバイクに採用される単純なブローバイシステムでは、ブローバイガスはある程度回転数を上げなければ効率的に排出されません。
また、エンジンが冷えた状態はシリンダーとピストンリングのクリアランスも広いため、ブローバイガスの発生量も多くなります。
そのため、短距離移動ばかりを繰り返すとエンジン内部の乳化物質が増え、オイルが白濁してきます。
さらにオイル交換も怠ると、乳化物質を排出できないため、前述したようにエンジンブローを起こしやすい状態に陥ってしまいます。
エンジン内で発生したブローバイガスおよび水分は可能な限り排出すべきものです。
なぜセパレータータンクを移設する必要がある?
停車中に結露で溜まった水分の多くは、エンジン始動直後に排出されるため、始動直後はブローバイガスに大量の水蒸気が混じりオイルセパレーターに溜まることになります。
しかし、エンジンから垂直に立ち上がったエイプのオイルセパレーターの標準位置と取付け向きでは、始動直後に発生した水分のほとんどが水滴となってクランクに逆戻りします。
その状態は、クランクケース内で水とオイルが撹拌され、乳化物質ができやすい状態です。
エンジンが適正温度となり回転数を上げてやれば、水分は揮発してブローバイガスと一緒に抜けるものの、一時とはいえエンジンオイルに大量の水分が混入した状態をつくることは、オイル劣化の観点から見ても芳しくありません。
そのため、エンジン始動直後に発生した水分をエンジンに戻さないように、オイルセパレーターはエンジンのブローバイ排出口よりも低い位置に設けるのが望ましいでしょう。
以前のブローバイ配管経路は溜まった水が抜けを阻害していたよう
ただし、エイプに以上の条件を完全に満たすタンク取付け位置は見当たりません。苦肉の策としてブローバイ配管を見直し、一度エンジンの排出口よりも低い位置を経由してオイルセパレーターにつなぐことでエンジンへの水の逆流を防いでいました。
しかし、その経路では配管内の低い位置に常に水が溜まっているせいか、ロングツーリングなどに出かけると、ときどきによってエンジンの調子にばらつきがあるような気がしていました。
長らく観察した結果、配管内に溜まっている水の量によってブローバイガスの排出効率に変化が生じているという結論に至りました。
セパレーター移設後は、長距離を運転でも調子の変化が極小に抑えられているように思えます。
これによるエンジン性能への影響はほとんどありませんが、常によいエンジンフィーリングを保ったまま走行できるようになったような気がします。
原理上、ノーマルの標準位置がもっとも配管が短く圧力損失が少ない位置となるため、長距離移動が主体の場合はオイルセパレーターを移設する理由はありません。
しかし短距離走行が多い場合や、エンジンオイルが白濁する症状が出る場合はエンジン内部に混入する水分量が増えているため、オイルセパレーターになんらかの対策を施すことをおすすめします。