チェーンコンバートについての情報を集めて精査しました。
より軽量なチェーンに交換するダウンコンバートを行なうことで駆動ロスを抑え、バイクの加速性能や燃費性能を向上させられます。
その一方、チェーンの寿命は短くなるうえ、安全性も低下します。ただし、エイプのチェーンコンバートは寿命うんぬんの前に致命的な問題があります。
目次
チェーンコンバートとは
チェーンコンバートとは、規格の異なるサイズのチェーンに変更するカスタムメニューです。
純正装着されているチェーンは、メーカーがしっかりと強度計算したうえで導き出したサイズが装着されているものの、場合によっては過剰な強度が持たされていたり、バイクの使い方によってはチェーンの強度不足に陥る場合があります。
現在装着しているチェーンより、細く軽いチェーンにコンバート(変換)することで動力伝達効率を向上させたり、より太いチェーンに変えてチェーンの耐久性を増したりとバイクの性能を調整できるのがチェーンコンバートの意義です。
とくチェーンのダウンサイズ・コンバートは、発進トルクを犠牲にすることなくフライホイールの軽量化に近いメリットが得られます。
チェーンコンバートをするには
チェーンコンバートをするには、チェーンの他、エンジン側のドライブスプロケットと、リアホイール側のドリブンスプロケットの交換も必要です。
チェーン規格は、3桁の数字で表され、上1桁目の数字がチェーンピンおよびスプロケットの歯の間隔を表し、下2桁の数字がチェーンの内幅およびスプロケットの厚さを表します。
仮に「520」から「428」規格のチェーンに交換するのであれば、チェーンと前後ふたつのスプロケットを同じ「428」規格の部品に統一することでドライブチェーン全体の入れ替えを行います。
また、バイクによってはチェーンラインを真っ直ぐに保つためのオフセット調整をする必要もあります。
チェーンコンバートのメリット・デメリット
チェーンサイズの選定は、駆動伝達効率と耐久性のトレードオフ関係にあります。そのため、チェーンコンバートにはメリットとデメリットの両方が存在します。
1レースを走り切るだけの耐久性があれば十分なサーキットマシンは、より細いチェーンを使用することでエンジンパワーのロスを最小限に抑えられています。
一方、公道を走るバイクは安全性が優先されるため、強度に優れ長寿命の太いチェーンが用いられます。
とくにダウンサイズ・チェーンコンバート(ダウンコンバート)は、メリットとデメリットをしっかりと理解して行なう必要があります。
ダウンコンバートのメリットは加速性能アップ
- 駆動ロスが減ることによる、加速力アップ・最高速度アップ・燃費性能アップ
- バイクの自立力(ジャイロ効果)が低減することによる運動性能の向上
- バネ下荷重低減によるサスペンションの路面追従性向上
- チェーンサイズによっては、スプロケットセッティングの幅が広がる
ダウンコンバートのデメリットは耐久性の低下
- ジャイロ効果の低減による自立性・直進安定性の低下
- チェーンのピンとローラー、およびスプロケットに極圧がかかりやすく、摩耗しやすくなるためチェーン寿命が著しく低下する
- 頻繁なチェーンの摩耗状態チェック・張り具合のチェックを迫られる
チェーンコンバートの判断要素
ダウンサイズのチェーンコンバートはワンサイズダウンの規格に留めるのが一般的です。エンジン出力に対して極端に細いチェーンでは破断の恐れがあるからです。
しかし、エンジンのパワーやトルクだけでは測れないのがダウンコンバートの難しいところです。
チェーンの耐久性には、エンジンの出力特性や車重、タイヤのグリップ力や乗り方も影響します。
エンジン特性も影響する
穏やかに回転上昇するエンジンならチェーンの負担は比較的少ないと思われます。
しかし、パワーが立ち上がりが鋭いハイレスポンスエンジンや、低回転から大きなトルクを発揮するエンジンなどは、単位時間あたりでチェーンに加わる速度変化量が大きいため、瞬間的に大きな力が加わりやすく、チェーンの寿命を著しく低下させます。
バイクの乗り方でも寿命は変わる
急加速や急減速が多い乗り方は、よりチェーンに負担をかけます。急加速時には駆動系の重量を含む加速抵抗+タイヤのグリップ抵抗+転がり抵抗の合計と瞬間的なエンジントルクが、チェーンの上側で綱引き状態になります。
急減速時にはタイヤの慣性力とエンジンの回転落ちの力が、チェーンの下側で綱引きを起こして引っ張られる状態になります。
スプロケットの強度も重要
さらに、スプロケットギア比もチェーンの耐久性に影響します。
ハイギアードのスプロケットであるほど大きな力で引っ張られるためチェーンへの負担が増す一方、ローギアードの大径ドリブンスプロケットでは、スプロケットの肉厚が薄いぶん横方向への強度が心配です。
瞬間的に加わる大きな力は、ハブダンパーがある程度吸収してくれるものの、多くの要素が複雑に絡み合うため、最適なチェーンサイズを求める正確な強度計算は不可能に近いでしょう。
ただし、同じピッチのチェーンを使用している限りは、チェーン自体の強度に大きな差はないため、チェーン破断の心配は少ないと思われます。むしろ薄くなったスプロケットの強度や精度が重要になるでしょう。
チェーンコンバートできるバイクとできないバイク
チェーンのサイズ変更は、装着できるスプロケットさえラインナップしていれば、どのバイクでも行えます。ただし、もっとも細く軽量な415サイズのチェーンを公道で使用するのは125cc以下のバイクに限られます。
エイプのチェーンコンバート
標準で420チェーンを装着するエイプは、最軽量の415サイズチェーンを使用して、さらなる走行抵抗の低減が図れます。50ccエンジンなら強度不足への心配も不要でしょう。
ただし、エイプはドラムブレーキ車とディスクブレーキ車でドリブンスプロケットの形状が異なるため、チェーンコンバートが難しい場合があります。
それに関してはこちらの記事で解説しています。
エイプの415チェーンコンバート計画・実態調査【パワーロスを抑える最適解】
↓原付にとって、チェーンのパワーロスは無視できません。パワーロスを最小限に抑えるチェーン清掃方法を解説しています。
↓使用するチェーンルブによっても駆動抵抗低減が図れます。高性能極圧潤滑剤であるベルハンマーはチェーンルブとしても使えます。ただし、相応の注意点もあります。
↓チェーン交換ついでにスプロケット交換でファイナルギア比も見直しましょう。ただし、それに合わせてチェーンのコマ数も変更しなくてはいけません。