ホンダ純正エンジンオイルがリニューアルしてすでに3年目。ボトルデザインも刷新され、ホワイトのニュアンスカラーに変わった新G1オイルはホームセンターの売り場でもよく目立ちます。
新G1オイルを丸1年使用したパワー感や燃費性能の長期インプレッションです。
目次
- 何が変わった? ウルトラG1オイル新旧比較
- 『新ウルトラG1』オイル交換直後インプレッション
- どれくらいで劣化する? 新G1オイルの長期インプレッション
- 新G1オイルの燃費向上はどれくらい?
- まとめ:依然としてコストパフォーマンスは高い!
何が変わった? ウルトラG1オイル新旧比較
変更点1.鉱物油から部分合成油へ
新G1オイルは、基油(ベースオイル)が鉱物油から部分合成油へと変わっています。部分合成油とは、鉱物油に化学合成油をブレンドしたオイルです。
鉱物油とは石油から精製されたオイル。それに対し化学合成油とはエンジンオイルに不要な不純物を可能な限り排除し、分子構造を変化させるなどしてエンジンのベースオイルとしてより高い性能が与えられたオイルです。
とくに鉱物油に含まれる硫黄は熱により硫黄酸化物に変化し、水分と化合して硫酸となり金属を腐食させます。
そのためエンジンには硫黄分をはじめとする不純物が極力排除され、最適な性能が持たされた化学合成油が望ましいといえるでしょう。しかし、製造コストがかかる化学合成油はオイル価格を大きく引き上げます。
部分合成油に化学合成油が配合される量はオイルによって異なり、混合比率や添加剤の配合量は多くの場合に企業秘密となっています。
変更点2.オイルの粘度指数が10W-30から5W-30に
新G1オイルは、SAE規格粘度が10W-30から5W-30に変更されており、低温粘度(W:ウィンターグレード)の指数が小さくなったことで低温始動性が向上しています。
ただし、これらの数値はあくまで目安です。一般的に低温粘度を上下させると使用可能温度帯は上下どちらかへシフトする傾向にあるため、それぞれ単体の数値だけで下限および上限温度の判断はできません。
新G1オイルは、低温粘度を旧G1より抑えながら、100℃強を境に高温粘度でも旧G1より高くなるように調整されています。
つまり、低温から常用温度帯での粘度を旧G1よりも低減しエンジンパワーのロスを低減しつつ、それとは相反する、過酷な高温環境下でのエンジン保護性能を引き上げているということです。
一般的に油温はオイルパン内の温度を指しますが、実際に稼働中のエンジン内油温は部位によって温度が大きく異なり、燃焼室に近い位置ほど高温です。オイルパンの油温が100℃であっても、ピストンリング付近は150℃にも達します。リニューアルされた新G1オイルの特性は、より安心して使えるように微調整が加えられています。
変更点3. 約1.5倍の価格上昇
新G1オイルのメーカー希望小売価格は、1リットルボトルで1,400円(2024年4月時点では1,650円)へと大幅に値上がりしました。
旧G1が近所のホームセンターで800円程度だったのに対し、新G1オイルの実売価格は1,200円程度まで上昇しています。こうなると一つ上のランクのG2や他の社外オイルが視野に入ってきます。
ちなみに、新G2の実売価格は1,400円程度で価格差が小さくなりました。ただしG2の粘度は原付1種にはやや硬い10W-40です。エステルベース高性能オイルのモチュール300Vや7100はAmazonで1Lあたり3,000円前後で手に入ります。
価格の安さと信頼性の高さが最大の魅力であった旧G1から、約1.5倍も値上がりした新G1のコストパフォーマンスの如何が、このままG1オイルを使い続けるか、それとも社外オイルに変更するかの分水嶺になるでしょう。
『新ウルトラG1』オイル交換直後インプレッション
旧G1との比較すると「バイクが軽くなった」というのが第一印象。全回転域でのエンジンフィーリングとパワー感の向上具合は、これまで手を加えたどのカスタムよりもはっきりと違いが分かるほどです。
とくに、充填効率が高まる4,000〜6,000rpmの回転域の振動が劇的に減り、50ccとはいえ本当に気持ちよく回るようになりました。エンジンノイズの高周波成分が減っていることも関係していると思われます。
旧G1では、なんとか登っていた長い坂道も楽々と登れるようになっており、いつものテストコースがより快適に走行できるようになっています。
しかし、体感できるだけのパワー感の向上にも関わらず最高速自体は大きく変わっていません。正確な計測はしていないものの、最高速度到達までの時間は短縮されていると思われます。
この結果は、実用温度域での粘度低下と高温域の粘度上昇が大きく影響しているのかもしれません。
とはいえ、この特性はエンジンの低回転化が進む現代的な正常進化といえるでしょう。メーカーが設定するレブリミット以上の超高回転を使用するのは想定外の使い方です。
シフトペダルの節度感も向上しており、カチンとシフトが変わるようになりました。潤滑性能が向上するとクラッチが滑りやすくなると言われるものの、気のせいで片付けられるレベルです。むしろクラッチのつながりがマイルドになったのはむしろ好印象に感じられます。
どれくらいで劣化する? 新G1オイルの長期インプレッション
半年経っても上記の印象は変わりません。テストの総走行距離が短いせいもあってか、早期のヘタリは感じ取れませんでした。真夏の暑い時期に長距離を移動でも熱ダレは皆無。とはいえ旧G1でも常用域では熱ダレを感じたことはありません。
ただし、半年経過後はやや劣化が感じ取れました。オイル交換直後の車体が前へスルスルと進む感じがやや薄くなった印象です。翌年のオイル交換後は、抵抗減少によりスルスルと前に進む感じが復活します。
旧G1は、丸々1年使ったオイルを新しいオイルを交換しても何ら変化は感じ取れませんでしたが、新オイルはオイル交換の変化具合がしっかりと感じ取れるため、潤滑性能は飛躍的に向上しているものの当然として劣化進行も著しくなるようです。
しかし、オイル交換時に指で触った感じでは粘度が残っていることが確認できたため、添加剤の性能は低下しても1年間しっかりと使えるものと思われます。500km程度の走行では汚れもほとんどありませんでした。
新G1オイルの交換直後の高い潤滑性能は、半年もしくは500km程度までは維持されるようです。
タペットスクリューの摩耗低減も確認
タペットスクリューの摩耗量も抑えられています。旧G1では1,000kmの走行で0.03mmほど摩耗していたタペットスクリューが、新G1オイルでは約700km時点で0.01mm程度にとどまっていました。
これは、バルブクリアランス調整サイクルのロングスパン化に加え、その他エンジン各部の摩耗も大きく抑えられることを意味します。
ただし、結果はバイクの状態や仕様、バイクの使用環境により変化します。
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新G1オイルの燃費向上はどれくらい?
新G1オイルのウリは低粘度化による燃費性能の向上です。2022年度の通算走行距離はたったの474km強と絶対的な走行距離が短いため、データの信頼性には欠けますがメモとして書き残しておきます。
2022年・走行距離および燃費記録
- 走行距離233kmに対して給油量3.42L=68.1km/L
- 走行距離241kmに対して給油量3.80L=63.4km/L
旧G1時の平均燃費は長距離走行を含めた使用で72km前後だったため厳密には燃費が低下しています。とはいえこの程度の違いは誤差でしかありません。
該当年は2度の長距離走行と2度の短距離走行をしましたが、それぞれの給油までに2〜3ヵ月ほどの期間が開いているため、ガソリンの揮発・劣化が著しいと思われます。
また、昨年はエンジン関係のメンテナンスを一切行っていないため、基礎的なエンジン出力の低下も感じられました。
それらを加味すると、新G1オイル単体での燃費上昇は十分なものといえるでしょう。
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まとめ:依然としてコストパフォーマンスは高い!
オイルの価格上昇は手痛いものの、新G1の性能は価格上昇ぶんの価値はあると思えます。それどころか、お釣りが来るとさえ思えるほどの性能向上です。
値上がりしても、依然としてホンダG1オイルのコストパフォーマンスは高いオイルであると確信が持てました。
価格上昇に文句は言いつつも、新G1オイルの性能にはスーパーカブやジャイロに乗る近所のじいちゃん、ばあちゃんも驚いているのではないでしょうか。
低負荷走行、低走行距離の使い方ならG1を年一回の交換する頻度で十分でしょう。乗車頻度が高い場合は添加剤の劣化による性能低下を配慮して、春夏にG2を使い、秋冬にG1を使うのが理想的かもしれません。
↓価格上昇したウルトラオイルは、G1、G2ともにホームセンターよりもセール中のAmazonの方がお得に購入できるようです。時期によっては300円以上違うこともあります。
↓燃焼で生じる水分もエンジンオイルを劣化させる一因です。クランクケース内に混入した水分はブローバイガスとして排出されますが、バイクの使い方もしくはブローバイの排出経路が不適切だとエンジンオイルが白濁することがあります。白濁したエンジンオイルはエンジンブローの危険性が高まります。
↓走行中のエンジン回転数によってもオイルの劣化度合いは変化します。バイクは、それぞれのエンジンに設定された適切な回転数を使うことが大切です。
↓ベルハンマーの原液はオイル添加剤としてもつかえますが、エイプのような湿式クラッチエンジンはクラッチ滑りを誘発するため使えません。