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ブローバイガスの水分がエンジンを壊す!ホース経路の見直しでオイルの乳化を防止

ブローバイガスを上手く排出できないとエンジンを壊す恐れがあります。とりわけブローバイガスに含まれる水分は、確実にエンジンオイルやエンジン自体の劣化を早めるため、速やかに排出したいものです。

しかし車種よっては、効率的にブローバガスが排出される設計になっていない場合があるうえ、車やバイクの乗り方によっても排出されるブローバイガスには差が出ます。

本記事ではブローバイガスの特性について説明するとともに、ブローバイガスに含まれる水分を効率的に排出するための対策方法を紹介します。

目次

 

ブローバイガスとはシリンダーから漏れ出す燃焼ガス

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ノーマル位置のオイルセパレータ

ブローバイガスとは、ピストンリングの隙間から漏れ出すガソリン燃焼ガスとエンジンオイルミストの混合ガスであり、その成分は一酸化炭素(CO)・炭化水素(HC)・窒素化合物(NOx)、そして水分です。これらの成分はエンジンオイルの劣化を促します。

また、ブローバイガスの外気開放は環境汚染を引き起こすため近年のエンジンは吸気経路に戻すことで再度燃焼させる構造になっています。

しかし、吸気経路に戻されたブローバイガスはスロットルバルブなどを汚すとともに、混合気にブローバイガスが混入することで空燃比が変化し燃焼効率を悪化させたり、キャブレターセッティングを難しくします。

一方で、ブローバイホースが詰まるなどしてブローバイガスが排出できなくなった場合は、高まった圧力によりエンジンガスケットなどを破り、オイル漏れの原因になります。

加えて、ブローバイガスに含まれる水分にも注意が必要です。

ブローバイガスを上手く排出できないと、ブローバイガス由来の水分がエンジンオイルに混ざることで、潤滑性能低下やオイルラインの詰まりを引き起こし、最悪はエンジンブローに発展することもあります。

ブローバイガスはできる限り速やかにエンジン内から排出すべきものです。

 

オイルセパレーターの役割

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エンジン始動直後の配管内への水分付着の様子。

バイクのブローバイホースの途中には、エンジンから排出されるブローバイガスを気体と液体に分離することを目的とした小さなタンクが設置されています。これを「オイルセパレーター」といいます。

高温のブローバイガスが配管内およびオイルセパレーターを通過する際に冷却され、水蒸気としてエンジンから放出された水分が飽和水蒸気量に達することでセパレータータンクには水だけが溜まります。

オイルセパレーターは、ブローバイガスの温度を下げるとともに滞留させて不要な油分や水分を取り除き、エンジンパフォーマンスと整備性、環境性能の並立させています。

厳密には異なりますが、オイルセパレーターはバイクに標準で備わる小容量のオイルキャッチタンクのようなものといえるでしょう。

ガソリンは完全燃焼すると水が発生するため、調子の良いエンジンほどブローバイガスに水分が混じり、クランクケースに溜まります。また、走行後の熱を帯びたエンジンは、冷却される際に結露で生じた水分がクランクケース内に溜まります。

ブローバイガスは、これらエンジンから出る水分を排出する役目も担っています。

 

ブローバイガスホースの排出方法に問題がある車両も

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エイプはエンジンの吸気負圧を利用してブローバイガスを吸い出す「シールド式構造」を採用していますが、その機構のせいで問題も生じます。

エイプが採用するスロットル手前から1系統でブローバイガスを戻すシールド式構造は、スロットルを大きく開いたときにしか積極的に吸い出されません。

一般的な巡航回転数の4,000rpm程度では十分に吸い出されず、スロットル全開でレブリミット付近まで回してようやく完全に吸い出せるだけの負圧が生じます。そのため、低回転を保って走行しているとブローバイガスはほとんど排出されないのが実情です。

それどころか、ブローバイホース通過時にガス温度が下がってホース内に付着した水分は、吸い出される前に自重でブローバイパイプを逆流してエンジン内部に落ちてしまいます。

ブローバイ経路を透明ホースに交換して様子を確認すると、エンジン始動直後にホースは湿気で曇り、1kmも走らないうちに水滴が付着。5kmも走れば大粒の水滴ができ上がります。

 

エンジンオイルに水が混じると乳化が起こり白濁する

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白っぽいヘドロ状の乳化物質。オイルセパレータ内にも微量に発生します。

エンジンオイルと水は混ざりませんが、一部エステル系のエンジンオイルは加水分解により劣化が促進されます。

また、鉱物油などの一般的なオイルでも、水分はエンジン内部で高速で撹拌されるとオイルと混ざりあう乳化現象を起こし、白色ヘドロ状の物体がエンジン内部に体積します。これはマヨネーズやガナッシュを作る際の調理方法と同じ原理です。

その乳化作用でできあがった固形物質が過剰に発生してオイルラインに詰まると、潤滑不良を起こしてエンジンブローの危険すらあります。

エンジンオイルの乳化は、ピストンリングの隙間が大きくなるエンジン冷間時の走行短距離走行を繰り返したり、エンジン内部が結露しやすい冬季は始動直後に発生した大量の水がエンジンオイルに混ざり込み、乳化現象が起こりやすい状態です。

これら以外の条件でエンジンオイルの白濁が起こる場合は、オイルセパレータの配置およびブローバイ経路を見直してみましょう。

 

エンジンから水を排除せよ!短距離移動は水分発生量が多くなる

古いバイクに採用される単純な構造のシールド式ブローバイガス排出システムでは、ブローバイガスはある程度回転数を上げなければ効率的に排出されません。

また、エンジンが冷えた状態はシリンダーとピストンリングのクリアランスも広いため、ブローバイガスの発生量も多くなります。そのため、短距離移動ばかりを繰り返すとエンジン内部の乳化物質が増え、オイルが白濁してきます。

さらにオイル交換も怠ると、乳化物質を排出できないため、前述したようにエンジンブローを起こしやすい状態に陥ってしまいます。エンジン内で発生したブローバイガスおよび水分は可能な限り排出すべきものです。

 

エンジンからはどれくらいの水が出る?

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エンジン始動直後にエンジンから排出される水分

停車中にエンジン内部に結露して溜まった水分に加え、エンジンが冷えている状態は、ピストンリングからの燃焼ガスの吹き抜け量も増えるためエンジン始動直後はブローバイとともにエンジンから排出される水分が増えます。

このブローバイガスに含まれる水分は軽視できません。長期に渡って計量したところ、おおよそ走行距離500kmあたり、最低でも10〜20cc程度の水が採取されるため、実際はこれ以上の量の水が発生していると思われます。

エンジンから垂直に立ち上るノーマル状態のオイルセパレータ配置では、それらは全てクランクケース内に逆戻りしエンジンオイルに混入することになります。

 

ブローバイガスの流れを見る

単気筒エンジンをはじめとする奇数シリンダーを持つエンジンは、ピストン上下動でクランクケース容積が変化するため、内部圧力が高速で変化します。

そのため、吸気と排気を1系統のホースで行なうシールドタイプでは、ピストンが上死点にあるときには減圧され、下死点にあるときは加圧されることになり、ブローバイガスの流れはピストンの下動に応じてホース内のガスが行ったり来たりします。

巡航エンジン回転数となる4〜5,000rpm以下で稼働中の水滴の動きを観察すると、その様はちょうど「3歩進んで2歩下がる」ように停滞する動きとなり、ブローバイガスおよび含まれる水分が効率的に排出されているとはいえません。

 

セパレータータンクの移設で対策

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ノーマルのオイルセパレーター位置

停車中、結露でエンジン内に溜まった水分の多くは、エンジン始動直後に排出されるため、始動直後はブローバイガスに大量の水蒸気が混じりオイルセパレーターに溜まることになります。

しかし、エンジンから垂直に立ち上がったエイプのオイルセパレーターの標準位置と取付け向きでは、始動直後に発生した水分のほとんどが水滴となってクランクに逆戻りします。その状態は、クランクケース内で水とオイルが撹拌され、乳化物質ができやすい状態です。

エンジンが適正温度となり回転数を上げてやれば、水分は揮発してブローバイガスと一緒に抜けるものの、一時とはいえエンジンオイルに大量の水分が混入した状態をつくることは、オイル劣化の観点から見ても芳しくありません。

そのため、エンジン始動直後に発生した水分をエンジンに戻さないように、オイルセパレーターやオイルキャッチタンクはエンジンのブローバイ排出口よりも低い位置に設けるのが望ましいといえるでしょう。

 

ブローバイホースの改善方法

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オイルセパレーターは、エンジンのブローバイ排出口よりも下に配置することが大切です。そうすれば水滴は自重によりエンジン側ではなくオイルセパレータ側に流れ込むようになり、エンジンオイルへの水分混入量を抑え、その結果オイルの劣化を抑えられます。

しかし、条件を満たせる適切な取付場所が車体に存在しません。その場合はホースの中腹部を排出口よりも下げてから、高い位置のタンクに接続することで低い部分に水滴が留まりエンジンへの逆流を防ぐことができます。

また、オイルセパレーターを取付ける際は、出入り口を上に向けタンク自体を水平に配置することで、少ない容量ながら簡易オイルキャッチタンクとして機能させられるようにもなります。

 

理想的なオイルセパレーター位置はココ!

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2023年5月、オイルセパレーター取付位置を見直しました。

新たなオイルセパレーターの取り付け位置は、スイングアームの上です。さまざまな検討を重ねた結果、エイプのオイルセパレーターの理想的な取付位置は、この非常識な位置に決定しました。

ここならば、エンジンのブローバイ排出口より低いため、真っ直ぐ、かつ緩やかな傾斜を付けた配管経路にできます。

それによりエンジンからブローバイガスとともに排出された水はすべてオイルセパレーターに流れ込むため、エンジン内にも配管内にも水は溜まりません。

専用のステーを作ることも検討しましたが、そうすると今度は水分排出や清掃のための着脱が面倒なります。

整備性を確保するため、くり返し使える25cmの結束バンド2本での簡単で確実な固定方法としました。

 

移設によりコンディションとフィーリングを両立

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タンクの移設によりスイングアームの重量増が懸念されるものの、慣性が働きづらいピボット付近であるうえ、そもそもこの程度の重量増ならサスペンション性能には何の問題にもならないでしょう。もちろんフレームとの干渉もありません。

移設後は以前の経路よりもブローバイの流れが改善されているようで、セパレーター後は垂直に立ち上る配管の壁面に付いた水滴がアイドリングの負圧でも引っ張り上げられて落下壁面に留まっていました。

これまで配管内に溜まった水滴が、細い配管内を通るブローバイガスの流れを阻害していたのは間違いがないよう。なんとなくエンジンが軽く回るようになったような気もします。

 

以前の配管経路は溜まった水がブローバイガスの抜けを阻害していた

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以前の取付位置

以前のブローバイホースの配管の取り回しは、一度エンジンの排出口よりも低い位置を経由してオイルセパレーターにつなぐことでエンジンへの水の逆流を防いでいました。

しかし、その経路では配管内の低い位置に常に水が溜まっているせいか、ロングツーリングなどに出かけると、ときどきによってエンジンの調子にばらつきがあるような気がしていました。

長らく観察した結果、配管内に溜まっている水の量によってブローバイガスの排出効率に変化が生じているという結論に至りました。時間が経つに連れ、ホースの下部に溜まった水分が乳化して壁面にこびりつき、配管経路を狭めて排出効率も引き下げられていたようです。

セパレーター移設後は、ホースを交換したこともあって長距離を運転でも調子の変化が極小に抑えられているように思えます。

これによるエンジン性能への影響はほとんどありませんが、常によいエンジンフィーリングを保ったまま走行できるようになったような気がします。

原理上、ノーマルの標準位置がもっとも配管が短く圧力損失が少ない位置となるため、長距離移動が主体の場合はオイルセパレーターを移設する理由はありません。

しかし短距離走行が多いバイクの使い方をする場合や、エンジンオイルが白濁する症状が出る場合は、エンジン内部に混入する水分量は確実に増えているため、オイルセパレーターやオイルキャッチタンクになんらかの対策を施すことをおすすめします。

まとめ:エンジンから出る水は可能な限り除去するのが望ましい

エンジンと燃焼で発生する水は、そのまま水と油の慣用句どおりの相容れない関係です。

エイプは純正オイルセパレータの配置や配管経路を変えるだけで、ブローバイガスに含まれる水分を適切に排除できるようになります。

それにより、オイル交換サイクルが長くなります。さらにはエンジンそのものの耐久性を向上させることに繋がります。

ただし、オイルセパレータ内に水が溜まるようになるため、定期的に排出する必要がある点には注意しましょう。

 

↓こちらは、ブローバイ経路を見直しパワーアップさせる方法です。

パワーアップさせるブローバイ経路チューニング【0円カスタム】

↓大気開放でも、クランクケース内圧コントロールバルブでもない新しいブローバイ還元装置を開発しました。ブローバイ配管は既存のままで、パワーアップが可能です。

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