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エンジンオイルの白濁対策法【オイルセパレータ位置修正】ひと手間加えて乳化を防止

ブローバイガスはできる限り排出したいもの。しかし、エイプのノーマルブローバイ経路は最適とは言えません。

 

とくにブローバイガスに含まれる水分はエンジンオイル、強いてはエンジンそのものの劣化を早めます。この問題はブローバイの経路を見直すだけで解決できます。

 

エイプのコレ何? オイルキャッチタンク?

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ノーマル位置のオイルセパレータ

これはオイルキャッチタンクではなくオイルセパレータ。エンジンから排出されるブローバイガスを気体と液体に分離するためのタンクです。

 

ブローバイガスとは、ピストンリングの隙間から漏れ出すガソリン燃焼ガスと気化したエンジンオイルの混合ガスであり、外気開放は環境汚染を引き起こすため近年のエンジンは吸気経路に戻すことで再度燃焼させる構造になっています。

 

エイプはエンジンの吸気負圧を利用してブローバイガスを吸い出すシールド構造を採用していますが、その機構のせいで問題も生じます。

 

ブローバイガスはスロットルバルブを含む吸気経路を汚すとともに、混合気にブローバイガスが混入することで空燃比が変化し、燃調ズレにより燃焼効率の悪化やキャブレターセッティングを難しくさせます。

 

オイルセパレータは、ブローバイガスを通過させることでガスの温度を下げるとともに滞留させて不要な油分や水分を取り除き、エンジンパフォーマンスと整備性、環境性能の並立させています。

 

ブローバイガスを吸い出せないと

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ブローバイガスの成分は一酸化炭素(CO)・炭化水素(HC)・窒素化合物(NOx)、そして水分です。これらはエンジンオイルを劣化させる大きな原因になるため、できる限り速やかに排出すべきものです。

 

しかし、エイプが採用するスロットル手前に1系統でブローバイガスを戻すシールドタイプ構造は、スロットルを大きく開いたときにしか積極的に吸い出されません。

 

ハーフスロットルの4、5,000rpm程度では十分に吸い出されず、全開でレブリミット付近まで回してようやく完全に吸い出せるだけの負圧が生じます。そのため、低回転を保って走行しているとブローバイガスはほとんど排出されないのが実情です。

 

それどころか、ブローバイホース通過時にガス温度が下がってホース内に付着した水分は、吸い出される前に自重でブローバイパイプを逆流してエンジン内部に落ちてしまいます。

 

ブローバイ経路を透明ホースに交換して様子を確認すると、エンジン始動直後にホースは湿気で曇り、1kmも走らないうちに水滴が付着。5kmも走れば大粒の水滴ができ上がります。

 

エンジン内の水分を効率的に排出できないと

停車中にエンジン内部に結露して溜まった水分に加え、エンジンが冷えている状態は、ピストンリングからの吹き抜けも増えるためエンジン始動直後はブローバイとともにエンジンから排出される水分が増えます。

 

このブローバイガスに含まれる水分は軽視できません。長期に渡って計量したところ、おおよそ走行距離500kmあたり、最低でも10〜20cc程度の水が採取されるため、実際はこれ以上の量の水が発生していると思われます。

 

エンジンから垂直に立ち上るノーマル状態のオイルセパレータ配置では、それらは全てクランクケース内に逆戻りしエンジンオイルに混入することになります。

 

エンジンオイルに水が混じると

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白っぽいヘドロ状の乳化物質。オイルセパレータ内にも微量に発生します。

エンジンオイルと水は混ざりませんが、一部エステル系のエンジンオイルは加水分解により劣化が促進されます。

 

また、鉱物油などの一般的なオイルでも、水分はエンジン内部で高速で撹拌されるとオイルと混ざりあう乳化現象を起こし、白色ヘドロ状の物体がエンジン内部に体積します。これはマヨネーズやガナッシュを作る際の調理方法と同じ原理です。

 

その乳化作用でできあがった固形物質が過剰に発生し、オイルラインに詰まると部分的に潤滑不良を起こしてエンジンブローの危険すらあります。

 

エンジンオイルの乳化は、ピストンリングの隙間が大きくなるエンジン冷間時の走行短距離走行を繰り返したり、エンジン内部が結露しやすい冬季は始動直後に発生した大量の水がエンジンオイルに混ざり込み、乳化現象が起こりやすい状態です。

 

これら以外の条件でオイルの白濁が起こる場合は、オイルセパレータの配置およびブローバイ経路の見直しが必要と思われます。

 

ブローバイガスの流れを見る

単気筒エンジンをはじめとする奇数シリンダーを持つエンジンは、ピストン上下動でクランクケース容積が変化するため、内部圧力が高速で変化します。

 

そのため、吸気と排気を1系統のホースで行なうシールドタイプでは、ピストンが上死点にあるときには減圧、下死点にあるときは加圧され、ブローバイガスの流れはピストンの下動に応じてホース内のガスが行ったり来たりします。

 

巡航エンジン回転数となる4〜5,000rpm以下で稼働中の水滴の動きを観察すると、その様はちょうど「3歩進んで2歩下がる」ように停滞する動きとなり、ブローバイガスおよび含まれる水分が効率的に排出されているとはいえません。

 

対策方法

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水滴をエンジンに逆流させないためには、オイルセパレータ位置の見直しが肝心です。エンジンから垂直に立ち上るように取り付けられるノーマルの配置はエンジンに良いとはいえません。

 

オイルセパレーターは、エンジンのブローバイ排出口よりも下に配置することが大切です。そうすれば水滴は自重により自然とオイルセパレータ側に流れ込むようになり、水分混入によるエンジンオイルの劣化を抑えられます。

 

しかし、条件を満たせる適切な取付場所が車体に存在しません。その場合はホースの中腹部を排出口よりも下げてから、高い位置のタンクに接続することで低い部分に水滴が留まりエンジンへの逆流を防ぐことができます。

 

また、オイルセパレータを取付ける際は、出入り口を上に向けて水平に配置することで、少ない容量ながら簡易オイルキャッチタンクとして機能させられるようにもなります。

 

まとめ

エンジンと燃焼で発生する水は、そのまま水と油の慣用句どおりの相容れない関係です。

 

エイプは純正オイルセパレータの配置や配管経路を変えるだけで、ブローバイガスに含まれる水分を適切に排除できるようになります。

 

それにより、オイル交換サイクルが長くなります。さらにはエンジンそのものの耐久性を向上させることに繋がります。

 

ただし、オイルセパレータ内に水が溜まるようになるため、定期的に排出する必要がある点には注意しましょう。

 

↓後日、オイルセパレータータンクを移設しました。ホースの内に溜まった水もわずかながらブローバイガスの排出効率に影響するよう。新しい取付位置はこれらの問題をすべて解消しています。

↓こちらは、ブローバイ経路を見直しパワーアップさせる方法です。

↓大気開放でも、クランクケース内圧コントロールバルブでもない新しいブローバイ還元装置を開発しました。ブローバイ配管は既存のままで、パワーアップが可能です。

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