サスペンションのグリスアップついでに各部のメンテナンスを行います。約2年ぶりに分解するリンク部分の状態チェックと作業後のインプレッション。並びに、作業のついでに行っておきたい5つのメンテナンスを紹介します。
グリスアップでスイングアームを外すついでに各所のチェックも同時に行うことで効率的にメンテナンスが進められます。
目次
【エイプ50】約2年ぶりのグリスアップ
状態チェック
前回のグリスアップから2年弱が経過し、やや乗り心地の悪化が気になってきました。
また、後に控えるダンパー交換およびセッティング出し前のリフレッシュと、足まわりのクリーニングを兼ねてサスペンションリンクのグリスアップを行います。
分解した状態はグリスが切れていることもなく、とくに目立った機械的劣化も見あたりませんでした。
エイプのサスペンションは、走行頻度にもよりますが3年程度ならノーメンテでも問題なさそうです。
グリスは前回同様、高価なスーパーゾイルのリチウムグリスを使います。ただしスーパーゾイルが謳う金属表面改質剤の効果はいまいち体感できません。
摺動部表面がきれいになっているかと思いきや、そうではない模様。もっとも、劣化の進行を食い止められているだけでもグリスとして確かな性能であることは実感できます。
グリスアップ箇所
元々、中古購入時から痛みが激しかったスイングアーム側のリンクカラーは、ダンパー側のリンクカラーと入れ替えて延命措置。
以前は固着して外れなかったサスペンションダンパー下側のリンクカラーを外すことができたため、ヤスリでサビを落として洗浄し、ここもグリスアップします。
リンク部を保護するカバーも、ボルトを締めると摺動するため、カバー内側にもしっかりとグリスを塗布しておきます。
各ボルトの摺動箇所にもグリスを塗布して組み付けます。ただし、サスペンションボルトは、ネジ部にグリスが付着しやすいため締付トルク過大になりがちです。
弱めのトルクで締め付けるか、しっかりとグリスを拭き取ってからナットを取り付けましょう。
インプレッション
グリスアップ後は以前にも増してリアサスペンションがよく動いていることを実感できます。上下動には大きな変化が感じられませんが、車体を前後に揺するとピッチ方向に動きやすくなった印象です。
乗り心地の向上も体感できました。後日、100kmのツーリングを敢行しましたが、以前は痛かったお尻がまったく問題なし。
一切我慢を強いられることなく100kmを走行できました。これがエイプ本来の乗り心地であるならば、原付として必要十分な性能と言えるでしょう。
グリスアップのついでにしておきたい5つのメンテナンス
さて本題はこちら。エイプのリアサスペンションをグリスアップをするには、左右ステップおよびリアブレーキペダル、リアタイヤを外さなくてはなりません。
そのついでに各部の状態チェックとメンテナンスを行ってしまいましょう。グリスアップのついでにできる5つのメンテナンスを解説します。
1.ハブダンパーの状態チェック
ハブダンパーとは、ドリブンスプロケットを支えるゴム製のクッションであり、瞬間的に過大な駆動力が伝わってタイヤグリップを失わないようにするための安全装置といえる重要な部分です。
スプロケットを回転方向にゆすってガタがあればゴムがヘタっています。
ガタがある状態だと、駆動力の伝達にわずかなタイムラグが発生してコントロール性が著しく低下します。
エイプ(ドラムブレーキ車)の場合は、固定しているスナップリングを外すために専用のプライヤーが必要です。
2.ハブベアリングのチェック
ホイールを支える左右2個のハブベアリングが、スムーズに回転するか確認しましょう。
グリスが足りないようならグリスアップ。ガタがあったり、スムーズに回転しないようなら交換です。
取り付け時にはベアリングとカラーの摺動面にもグリスを塗布してタイヤホイールを組み付けましょう。
3.リアブレーキチェック
ディスクブレーキ車ならキャリパー単体でチェック可能ですが、ドラムブレーキはホイール内側に機構が備わっているため、タイヤを外さなくては状態確認ができません。
ドラムブレーキのチェックポイントは以下の3点。
①ライニング(シューパッド)残量と状態
②ホイール側摺動面の状態
③作動カムのグリス状態
ライニング表面が炭化していたり、動作時に鳴きが発生するようならライニングの表面と角をならすようにヤスリがけをしましょう。
ホイール側の摺動面が荒れているようなら、そちらもヤスリで整えます。ライニング残量と、カムのグリスが切れていないかどうかも確認しましょう。
汚れているようならブレーキクリーナーを使って清掃します。とくに古いバイクはライニングから発生した粉状の汚れは吸い込まないよう注意してください。
4.リアブレーキペダルのグリスアップ
忘れがちなのがこの部分。ブレーキペダルピボットカラーのグリスアップです。
固着はしていなかったものの、案の定グリスが切れてサビが発生していました。ヤスリで磨いてグリスアップ。
グリスだまりが設けられているため、はみ出さない程度にグリスを多めに塗布しておきましょう。
グリスアップ後はドラムブレーキでも踏力コントロール性がアップし、リアブレーキが使いやすくなります。
5.ホイールバランス
走行すればホイールバランスは狂います。タイヤの磨耗やホイールウェイトの脱落は仕方がないとしても、タイヤ交換後直後はタイヤとホイールの位相ズレが起こりやすい状況です。
とくにビードクリームが乾ききって、タイヤがホイールになじむまでは急加速や急ブレーキは厳禁です。
125cc以下はホイールバランスを取らないのが一般的だそうですが、回転物のマスバランスは整っているに越したことはありません。
とはいえ、バイク屋さんに頼むと困惑されそうなので、こっそりとDIYで行ってしまいましょう。
DIYでバイクのホイールバランスを取るには専用のシャフト付き台座が必要です。
しかし、ハブベアリングさえがスムーズに動いてくれれば、アクスルシャフトをホイールに差し込んでタイヤを浮かせるだけでも重心部分は回転して下がります。
高い調整精度は望めないと思われますが、原付ならこれでも十分でしょう。
ホイールバランス調整後はシフトチェンジの回転合わせが容易になったり、タイヤのグリップ状態がわかりやすくなります。アンダーパワーかつローコストな原付ほど、ホイールバランスの効果がわかりやすいと思われます。
原付だからこそホイールバランス調整が必要!【専用工具不要】DIYでできる簡単なやり方 - エイプ@ログ
まとめ
エイプと言わず、バイクの各部動作は多くがグリスに依存しています。とくに走行中は常に動いているサスペンションリンクのグリス切れは足まわりの劣化を著しく助長します。乗り心地の悪さを感じたら早めのチェックとメンテナンスが肝心です。
また、スイングアーム周りは車体のなかでもっとも汚れやすい部分です。細部まできれいにできるのも分解清掃ならではのメリットと言えるでしょう。
↓根本的な乗り心地を改善させるには、スプリングをスムーズに動かしてやることが肝心です。サスペンションにスラストベアリングやスプリングシートを組み込めばローコストで乗り心地を劇的に改善させられます。
↓前回の作業はこちら