フロントフォークにスラストベアリングを仕込みました。安価な中国製ベアリングにもかかわらず、思わず笑ってしまうほど乗り心地に変化があります。
純正採用されるバイクもあるという、フロントフォークへのスラストベアリング組み込みの効果とメカニズム、ベアリングの選び方などについて解説します。
- スラストベアリングとは
- エイプに最適なベアリングは?
- 中国製スラストベアリングの選び方
- スラストベアリングの取り付け前に
- フロントフォークへスラストベアリング取付方法
- インプレッション
- スラストベアリングのまとめ
スラストベアリングとは
スラストベアリングはスラスト方向(軸に対して平行回転方向)の動きに対して働くベアリングです。螺旋状に巻かれたサスペンション(バネ)は、伸縮すると回転します。
そのためバネの両端が抑えられていると伸縮は規制され、実質的にバネレートが上がったのと同様の結果になります。
スラストベアリングを直巻バネの片側に組み込むと、そのスムーズな動きでバネの回転を促すことができるため、サスペンションの座り部の規制を開放できます。
その結果サスペンションの動き出しがスムーズになり、上下動の突っ張り感などの乗り心地の悪さが劇的に改善されます。
リアサスペンションにも使えるけれど
ベアリングの効果を発揮させ続けるには抵抗なく動き続けられるように状態を維持する必要があります。
そのため、グリス切れやゴミの噛み込みによってベアリングとして機能しなくなれば当然乗り心地は悪化します。
外部に露出したリアサスペンションのスプリングシートへの使用は高い効果を発揮するものの、サーキット走行などの限定された条件でなければベアリングはすぐに機能しなくなってしまいます。
その点、バイクのフォークはゴミが侵入しない密閉された構造であるうえ、潤滑に必要なオイルも充填されているためスラストベアリングの使用に最適な箇所。
フロントフォークならベアリングの効果を半永久的に持続させることができます。
エイプに最適なベアリングは?
エイプの純正インナーフォーク内径は24mmであるため、15/16"インチ規格のベアリングが外径23.8mmがベストマッチします。アイネットのフロントフォークも同様です。
スムーズな動作のために、より精度の高い国産を選びたいところではあるものの、安価な中国製ベアリングでも十分に機能します。また、コロタイプのベアリングとボールタイプのベアリングでも耐荷重や微細な動きに違いが出ると予想されます。
中国製スラストベアリングの選び方
今回使ったベアリングは、Amazonで購入した2個入748円(2021年4月現在)のスラストベアリングです。
Amazonでは、ベアリングだけでもかなりの数が販売されていますが、入数やワッシャが付属しているかどうかをしっかりと確認して購入しましょう。
もちろんサイズ違いなどの誤配送や、商品内容の表示ミス、発送に時間がかかるなどの事態も十分に起こりえます。
ベアリングだけを単品購入すると、サイズにあったワッシャを探すのが難しい場合があるため、ワッシャがセットになった製品の購入をおすすめします。
届いたベアリングは、幸いなことにサイズ通りでした。ちゃんと1パック2個入りでワッシャーも付属していました。
ただし、乱雑な梱包状態は中華クオリティ。ベアリングの精度も隙間が一定ではなく、もれなく中華クオリティです。とはいえ、手で回した限りではちゃんと機能してくれそうです。



スラストベアリングの取り付け前に
中国製のワッシャは精度は十分であるものの、取り付け前にフロントフォーク内壁と接するワッシャ外周を1500番のヤスリでさらに磨き上げました。
また、初期かじり防止のため、極圧特性に優れたモリブデングリスを微量塗布してなじませてからフロントフォークに取り付けします。
フロントフォークへスラストベアリング取付方法


ベアリングの取付方法はトップボルトとフォークカラーを外し、ワッシャー→ベアリング→ワッシャーの順でフロントフォークの中に入れるだけです。インナースプリングの直接上に乗せ、その上からフォークカラーを入れましょう。
フォークカラーとトップボルトの間で挟み込むと、バネの回転が偏心してベアリングの回転中心がズレるため上手く機能しない場合があります。
ベアリングを入れると、フロントフォークにベアリングの厚みぶんのプリロードがかかるため車高がわずかに上がったり、初期の縮み具合が硬くなったように感じられます。
乗り心地を優先させるならフォークカラーの長さを調整しましょう。
インプレッション
ハンドルを持ってフォークを縮めた感触はそれほど変化がありません。むしろプリロードがかかったぶん固くなったように感じられます。
乗り出してみてもそれほど変わらず。突き上げ感が減少して乗り心地が向上してはいるものの、平坦な路面ではそれほど大きな変化は感じられません。
しかし、大きな段差を乗り越えた際の突き上げ感は劇的に改善されています。
いつもなら、腰を浮かせつつ身を固めて通る踏切が平坦路のように通過できます。それは思わず笑ってしまうくらいの変化です。
微際な動きよりも、大きくフォークが動くシーンほど違いが体感できるようです。
また、フロントタイヤが太くなったように安定性が増したのが感じられますが、これはプリロードが大きくなったせいかもしれません。相対的にリアサスペンションの突き上げ感が気になりるようになりました。
スラストベアリングのまとめ
フロントフォークへのスラストベアリング組み込みは、車体の動きを劇的に改善させます。とくにサスペンション容量が少なく、段差での衝撃を吸収しきれない小型バイクほどベアリングの恩恵が大きいと思われます。
また、突き出し量を調整してフロント荷重を増やすと、よりフロントの仕事量が増え、ベアリングの乗り心地改善効果を感じ取りやすくなります。また、ベアリングの挟み込みによって増えたフロントフォークのプリロードを調整してやることでさらにベアリングの効果を引き出すことができます。
平坦路での乗り心地は、小さなコロタイプのベアリングよりも、ボールタイプのベアリングのほうが動きが良さそうです。
ただし、ボールベアリングは厚さが10m弱ほどになるため、フォークカラーの交換や加工が必要です。
↓今回使ったコロタイプのベアリング
ちゃんとワッシャー付きで2セット入っていました。価格は748円(2021年4月現在)。おそらく同内容の商品では最安値かと思われます。
↓後日検証しました。厚さが9mmあるためプリロード調整が必須となるものの、乗り心地ではボールタイプのベアリングの方が優れます。
価格は2個入りで600〜800円ほど。この価格でこれだけの効果が出れば費用対効果は十分です。どちらもAmazonからの発送であるため納期もそれほどかかりません。
以上、中国製スラストベアリングのレビューでした。
フロントフォークへのベアリング組み込みを思案している方の参考になれば幸いです。
↓後日、水道管カラーを使ってプリロード調整をしました。
市販状態のバイクはライダーによってはプリロードがかかりすぎている場合があります。カラーの長さを変えてプリロードと乗り心地の変化の関係をまとめています。
水道管は切削加工しやすいため、フロントフォークのセッティング出しに最適な素材です。樹脂製カラーに変えることで、金属製カラーで発生しがちな異音が解消されるメリットもあります。
2022年11月6日追加。ボールタイプのベアリングに変更したインプレッションおよびスラストベアリングと水道管カラーの耐久性についても検証しています。
↓フロントフォークのオーバーホールと同時に行えば、変化の把握はできませんが効率的に作業を進められます。
↓ベアリングを組み込んだことで、相対的にリアサスペンションの突き上げがきになりだしました。調整式のリアサスペンションに交換して前後バランスの改善を図ります。
↓スラストベアリングが装着できないリアサスペンションには、どこのご家庭にでもあるアレでをスラストベアリングのように挟み込むことで乗り心地の改善が図れます。