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原付にホイールバランスは必要か?【工具不要・DIYで簡易調整】

工具不要かつDIYで簡易的にホイールバランスをとる方法を解説します。小排気量バイクにホイールバランス調整は不要と言われているものの、重心バランスがズレた回転物は必ずブレが発生します。

狂ったホイールバランスでは気づかぬうちにバイク本来の性能をスポイルしているかもしれません。ある程度のバランスを取るだけなら、ホイールウェイトさえ購入すれば特別な出費も工具も不要です。

 

ホイールバランスとは

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バランスウェイト(重り)

ホイールバランス調整とは、おもり(バランスウェイト)を取り付けてホイールの回転バランスを最適化する作業です。

 

バイクに比べて幅広タイヤを装着する四輪では、横ブレを含めた動的バランス(ダイナミックバランス)を取る必要があるため、専用の機器がなければ調整不可能です。

しかし、細いタイヤを履くバイクなら、縦ブレのみを最適化する静的バランス(スタティックバランス)を取るのみの作業であるためDIYでも調整できます。

 

ホイールバランスが崩れた状態ではブレが発生し、速度に応じた周波数の振動を生じさせます。ハンドル周りの固有振動数とホイールの振動数が一致したときに共振が起こり、振動の波が増幅されることで耐えがたいほどの異常振動を生じさせます。

 

これはシミー現象と呼ばれ、低速域では40〜50km/h、高速域では100〜120km/hで発生しやすい現象です。これらの原因はおもにホイールバランスの狂いです。しかし、振動を完全に消すことはできません。ホイールバランス調整は、振動を消すというよりも共振周波数をズラす作業であるのが正確なところです。

 

ホイールバランスの崩れは性能にも影響する

ホイールバランスの問題はシミー現象だけではありません。ホイールバランスが崩れた状態は、ごくわずかとはいえタイヤの回転数にムラができます。重心部分が上に動く時は回転を減速させ、下に動く時には回転を加速させます。その動きは微細な上下動としてタイヤの接地荷重を変化させます。

 

ホイールバランスの崩れは、ポテンシャルエネルギーの変換ロスによる動力性能のロス、とタイヤグリップインフォメーションの低下に加え、あまりにひどいとタイヤの波状偏摩耗を引き起こします。これらのデメリットは、より円周が長い大径タイヤホイールほど顕著です。また、動力性能のロスはアンダーパワー車両ほど大きく影響します。

 

ホイールバランスはどんなときにズレる

ホイールバランスはタイヤの磨耗やバランスウェイトの脱落によって走行すればズレてきます。そのほかにもズレやすいバイクや元からズレているバイク、ズレやすい状況があります。

 

ズレやすいバイク

ホイールとタイヤの位相がズレることでも崩れます。とくにハイグリップタイヤを履くハイパワーの大型バイクでは急加速や急減速でズレやすいため、サーキットと一般道走行を併用するなら、ホイールバランスは定期的に確認しておきたい項目です。

 

ずれやすい状況

ビードクリームが乾ききらないタイヤ交換直後は、ホイールとタイヤのビードが滑りやすいため、どんな車両でもホイールバランスが崩れやすい状態です。タイヤを交換してからビードがなじむまでの走行距離100km程度の間は、急加速や急減速厳禁です。

 

ズレているバイク

ローコストでつくられてたバイクほどホイールバランスは崩れています。比較的高精度でつくられるキャストホイール装着車ならそれほど問題にならなくとも、エイプの純正スチールホイールのようにハブとの締結にボルトが使われているホイールは、重心バランスの観点では最悪と言えるホイールの代表です。

 

DIYでホイールバランスを取る方法

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コンクリートステップとパンタグラフジャッキを使ってのバランス調整

DIYでホイールバランスを取るには、市販のホイールバランサーを使用するのが一般的。安いものではネット通販で4〜5,000円程度で購入可能です。

 

とはいえ、市販のホイールバランサーはベアリングで保持できるテーパーシャフトを使うことでディスタンスカラーとホイールベアリングの摩擦抵抗を無視してより高精度のバランスが取れるようになっているだけです。

 

ホイールバランサーは大型で保管場所がかさばるうえ、それほど使用頻度が高くない工具であるため購入がためらわれます。ある程度のバランスを取るだけなら、わざわざ費用をかけずともホイールにアクスルシャフトを差し込むだけで十分です。

 

0円でホイールバランスを取るには

簡易ホイールバランス調整に必要なものは「ホイールウェイト」に加え、「同じ高さの台2つ」もしくは「高さが微調整ができるジャッキ」のいずれかのみです。ハブベアリングさえが正常であれば、どんな場所でもホイールバランスが取れます。

 

ホイールの半径以上の高さがある台にシャフトの片側を乗せてパンタグラフジャッキなどで両方を支持する方法や、フロントフォークやスイングアームを浮かせた状態にするだけでも作業ができます。

 

簡易ホイールバランス調整方法

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スイングアームでも作業可。工具などでシャフトを軽く叩くと摩擦が低減する

ホイールにシャフトを通し、両端を支持すると重力に従ってタイヤホイールの一番重い所が下に移動し、一番軽い部分は上に移動します。

 

もっとも軽い部分にホイールウェイトを貼り付けて重心を軸中心に移動させるのがホイールバランス調整作業です。

 

ホイールを軽く回して動きが止まったら、支持するシャフトを硬いもので連続的に軽く叩いて微細な振動を与えると、一時的に抵抗が減ってより高精度に一番重い場所が割り出せます。

 

ホイールが止まった位置の直上が一番軽い位置であるため、そこにウェイトを貼り付けます。マスキングテープなどでウェイトを仮止めし、ウェイトの数を増やしつつタイヤ回転させます。

 

惰性運動が止まってから戻る量が極小になった状態がホイールバランスのとれた状態です。止まる位置が不定になれば理想といえるでしょう。

 

ウェイト量と位置が決まったら、ウェイトを本止めします。ホイールウェイト裏はブチルゴムシールになっているため、台紙を剥がして貼り付けるだけで固定可能です。

 

走行中の脱落を防ぐため、貼付け部分は事前に汚れと油分をしっかりと落としておきましょう。ブチルゴムが定着するまで半日程度は放置することも忘れてはいけません。

 

どれくらいウェイトを貼り付ける?

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仮止め。前後ホイールともウェイト総量は40gほどになりました

わずか数十gのホイールウェイトとはいえ、足回りは軽い方が運動性能には有利です。

そのため通常は、タイヤの組み付け時にタイヤの一番軽い箇所(軽点)と、ホイールのなかで重くなりがちなエアバルブの位置を合わせることで貼り付けるホイールウェイトを削減するのが一般的です。

 

また、一般的にウェイト合計50g以上は異常とされています(ホイールの貼り付け部分によって異なります)。ウェイト取り付け前は、回転速度が遅くなると速度ムラが出るのに対し、バランス調整後はほぼ一定の速度で周り、それが止まる直前まで維持されるようになります。

 

インプレッションからわかる3つのメリット

ホイールバランスを調整したことによる走行中のホイールのブレ変化は、30km/hでは速度域が低いせいか、まったく感じることができません。

 

しかし、足元が軽くなった印象は受けます。また、加速のピックアップが鋭くなった気がするものの、テストした日は特別暑い日であったため、気温による燃調の変化が原因である可能性も拭いきれません。

 

変化がハッキリと感じられたのは空走時。ニュートラルで走行すると振動が減っているのがしかりと体感できます。

敷いたばかりの滑らかなアスファルト上では、ギアが入った状態でも手や身体に伝わる振動が減っているのがより明確にわかります。

 

1.シフトチェンジにも影響

ホイールバランス調整後は、シフトアップ・ダウン時の回転合わせが容易になり、ギアのつながりが早くなっていることが実感できます。

 

一般的に低いギアほど回転合わせの許容が狭くなります。とくに1速から2速へのシフトチェンジは劇的に変わりました。低いギアほどシフトチェンジのつながりがよくなる印象です。

 

これはシフトチェンジのわずかな間に起こる惰性走行時の速度変化(タイヤの回転速度変化)が少なくなったためと思われます。クラッチの耐久性もわずかながら向上することでしょう。

 

また、これまで4〜5速間でしかできなかったクラッチレスシフトが、3〜4速間でもできるようになりました。

 

2.ローギアでの車体の微細な暴れがなくなる

振動原がたくさんあるバイクに乗りながら、ホイールバランスの狂いが起こす振動だけを検知するのは、ポップミュージックを聞きながらベース音だけを聞き分けるような繊細な感覚が必要です。

 

しかし、相対的に検知可能です。とくに素早く吹き上がる1速のエンジン振動周波と、タイヤの回転周波の違いが極端になるため以前との違いが明確です。高いギアほど両者の周波数が近づくため検知は難しくなるようです。

 

感覚としては、ローギア大きくスロットルを開けても車体が暴れる感覚が少なくなるため、単気筒でも低いギアでのエンジン回転が滑らかに回るようになったと錯覚します。

また、加速中のタイヤに加わる遠心加速度の過渡変化も振動発生に大きな影響をおよぼしていると思われます。

 

3.グリップインフォメーションの向上

ホイールバランスを調整したことで、タイヤと路面がこすれるゴムの質感がわかりやすくなったことも挙げられます。

 

ホイールバランスの崩れによる超短期的なタイヤ荷重変化、つまり振動が少なくなるため、グリップインフォメーションが感じ取りやすくなると考えれば十分頷けます。タイヤの波状摩耗防止にも効果的です。

 

高速走行で重視されがちなホイールバランスですが、おもに低速ギアを使うジムカーナの方がホイールバランス調整のメリットを享受できるのではないかと思われます。

 

ただし、トラクションを稼ぐなら話は別。ホイールバランスが崩れた状態のタイヤの微細な荷重変化はトラクション性を向上させると推測します。

エンジン1回転あたりの回転変動が少ないマルチシリンダーエンジンであれば、あえてホイールバランスを崩すことでトラクションを稼ぐセッティングも有効かもしれません。

 

原付のホイールバランスのまとめ

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ローコストの極みとも言えるエイプ純正ホイール

もともと高精度でつくられるアルミキャストホイールならバランス調整は不要かもしれません。しかし、ハブとの締結にボルトを使用しているエイプの純正ホイールは最悪の重量バランスです。

 

そのため、ホイールバランス調整の変化が特別わかりやすかったと思われます。

 

ローコストでつくられる原付は総じてホイールバランスはよろしくないと捉えるべきでしょう。明らかにホイールバランスが崩れていると判断される場合は、DIYでの簡易ホイールバランスをおすすめします。

 

ホイールバランスの変化は原付の低速走行でもしっかりと実感できます。むしろアンダーパワーな原付の方が明確に違いがわかりやすいでしょう。

 

原付のホイールバランスは、必要ではないけれど気持ちよく走りたいなら調整したほうがいい項目です。アンダーパワーかつ趣味性の高いMT原付において、ホイールバランス調整は最適なチューニングメニューのひとつだと自信をもって言えます。

 

 ホイールウェイトは60g×2で800円程度(2021年4月現在)です。

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