点火系に一抹の不安を抱えていた私のエイプ。イグニッションコイルを交換するにも純正や純正強化品では大した変化は見込めません。
しかし、高性能イグニッションコイルキットは非常に高価。安価に手に入る高性能イグニッションコイルを探していたところ、都合のよい閉磁路式コイルが手に入ったためこれに交換します。
目次
- 閉磁路式イグニッションコイルとは?
- ウオタニSP2のようなイグニッションコイルは自動車用
- 流用にあたって準備するもの
- 取り付け
- 自動車用イグニッションコイルの流用インプレッション
- 閉磁路式イグニッションコイルはトルクアップに効果あり!
- ウオタニより安いアドバンス・プロ『雷電』強化点火コイルがおすすめ!
閉磁路式イグニッションコイルとは?
イグニッションコイルとは、いわば電圧変換器。エンジンシリンダー内の高温高圧下でスパークプラグに放電をさせるには数万ボルトの電圧が必要です。
しかし、バイクや車が一般的に用いる電圧はたったの12V。イグニッションコイルは2組のコイルと鉄心を使ってエンジン点火に必要な電圧を発生させる装置です。
イグニッションコイルの動作原理
導線を幾重にも巻いたコイルに電気を流すと周囲に磁界を発生させます。同時に、コイルは周囲の磁界が変化すると高電圧が流れる性質を持ちます。
この電磁誘導の仕組みを利用した点火システムがイグニッションコイルの動作原理です。
入力側である一次コイルへかかる電圧によって鉄心が帯びる磁力が決まります。スパークプラグにつながる二次側は、鉄心が帯びた磁力とコイルの巻き数が多いほど高電圧を発生させます。
開磁路式と閉磁路式の違い
イグニッションコイルは開磁路式と閉磁路式に分けられます。その大きな違いは、コイルにある鉄心の形状が「棒状」であるか「ループ状」であるかです。
エイプ純正の筒状のコイルは開磁路式です。内部には棒状の鉄心が入っており、コンパクトである反面、鉄心が帯びる磁束が外に漏れ出しやすく効率が低くなります。
それに対し、ウオタニや比較的新しい車などに用いられるイグニッションコイルは、ループ状の鉄心を使うことで磁束の強さを保持しやすく、より効率よく電圧を変換することができます。
ただし、イグニッションコイル自体が大型化してしまいノーマルの位置には取付けられません。とくに小さなバイクでは取付位置が限られてしまうデメリットがあります。
ウオタニSP2のようなイグニッションコイルは自動車用
バイク用高性能イグニッションコイルの代名詞ともいえるウオタニ。それ故、非常に高価であり、破格で買ったエイプに取り付けるには少々気が引けます。
代わりに目を付けたのが、自動車用のイグニッションコイルです。見つけたイグニッションコイルは、見れば見るほど『ウオタニ SP2 パワーコイル』や『アドバンス・プロ 「雷電」強化点火コイル』とよく似ています。
流用したコイルは日立製でした。イグニッションコイルをつくるメーカーは数が限られるため、メーカーがウオタニやアドバンス・プロにOEM供給しているか、もしくはそれぞれのチューニングパーツメーカーが製造元へ仕様ごとにオーダーしているのでしょう。
基本構造やコネクタ形状は同じようですが、ウオタニSP2の方は振動が大きなバイク用ということかボルト3点留めになっています。
流用にあたって準備するもの
- 中古イグニッションコイル(スズキやマツダ車などで広く使われていたものです(ヤフオク送料込み 1,800円)
- 090型 RFW 2極防水メスカプラー(アマゾン 送料込み 760円)
- 適当なプラグコード(愛車の使い古しを流用 0円)
- スパークプラグターミナル(使い古しのプラグから拝借 0円)
- 平型端子(工具箱より 0円)
- 0.7sqケーブル 2mほど(工具箱より 0円)
わずか2,500円で、ウオタニSP2同等のスペックが手に入る(かもしれない)期待を胸に、終始興奮気味で作業に取りかかります。
取り付け
大型の強化イグニッションコイルを装着するにあたっての最大の問題は取り付け位置です。コイル自体が大きいため純正と同じ位置には取り付けできません。
ウオタニのコイルキットは、専用ステーでホーンを留めているボルトに共留めしているものの、この位置はエンジン直上であるため熱害が心配です
さしあたり今回は動作テストということで、既存のステーを使って取り付けられる位置を探ります。ステーの邪魔な部分をカットしてエアクリーナーボックス前方の空いているナットに固定することにしました。
このイグニッションコイルは防振ゴムでステーに固定されているため、振動が多い単気筒エンジンには有効でしょう。
しかし、鉄心とフレームを電気的に接続することで磁束が強化され、効率が向上するとの話もききます。細かなことは差し置いて、とりあえず取り付けして動作確認をします。
配線作業
純正コイルのコネクタは使用できないため、流用するイグニッションコイルに適合する防水カプラーを組み立てます。
0.7sqのケーブルに防水シールゴムを通して端子を圧着。装着位置が確定していないためケーブルは長めに確保しておきます。
ケーブル反対側にはオス平型端子を圧着して、純正コイルの配線に接続します。イグニッションコイルの一次側コイルに入力極性はありません。
プラグコードも長いため丸めて養生します。このプラグケーブルも自動車の流用品ではあるものの、このイグニッションコイル専用のケーブルではないため二次側コネクタに差し込んでもキャップが自然と抜けてしまいます。
抜け防止にラバーキャップを結束バンドで締め付けて固定。また自動車用のプラグコードであるため、スパークプラグにはプラグターミナルの取り付けが必須となります。
自動車用イグニッションコイルの流用インプレッション
走り出し瞬間に、全回転域でのトルクが一枚上乗せされたような感覚があります。シフトアップ直後のスロットルピックアップがよくなっているのはハッキリと体感できます。
加えて、6,000rpm付近で感じていたトルクの落ち込みが解消され、回転上昇も滑らかになったように感じますが、点火力が弱くなった場合も同様の変化があるため、これが改善か改悪か定かではありません。
しかし、高負荷をかけてもノーマルイグニッションコイルで発生しがちであった失火症状はありません。
加速が鋭くなったというよりは、高負荷時でも安定したトルクを発揮できるようになった印象です。以前は失速していたゆるい上り坂も、低回転を維持したままグイグイ登ってくれるようになりました。ただし、最高速はほとんど変化がありませんでした。
閉磁路式イグニッションコイルはトルクアップに効果あり!
点火系を強化することで確実に着火され、安定して高トルクを発揮してくれるようになるようです。
ただし、現状のままではこのウオタニSP2のような閉磁路式強化イグニッションコイルの性能を最大限に発揮できているとはいえません。
長い一次側配線と、抵抗値の高いカーボンプラグコードがコイルの性能をスポイルしていることが懸念されます。
ウオタニのイグニッションコイルに交換すると、タコメーターのパルスが狂うとの噂があるものの、タコメーターに変化はありませんでした。
長い一次側配線が電気抵抗になっていることで正常に動作しているのかもしれません。
また、臨時で用意したプラグコードは、抵抗値の高いカーボンコードであることや、各部の接触不良も気になるところです。
すぐに戻せる状態にしてあるため、1点づつ効果を確認しながらリファインしていきます。まずは、イグニッションコイルを固定する場所を決めることが急務です。
今回使った、一次コイル入力で使った防水カプラーは汎用品。アマゾンで購入できるため、ウオタニの正規イグニッションコイルの補修部品としても使えます。
プラグコードの接点コネクタはウオタニの補修部品を使用。Amazonでは販売されておらず、楽天のWebikeで購入しました。対応コード径は7〜8mmです。
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↓Amazon商品では、こちらが流用できそうです。
ウオタニより安いアドバンス・プロ『雷電』強化点火コイルがおすすめ!
大阪にあるチューニングショップ「アドバンス・プロ」の 「雷電」という強化点火コイルも日立製やウオタニと同じ閉磁路式であり、これらは外観もよく似ています。
巻線数や細かな仕様は異なるかもしれませんが、ほぼ同様の性能を発揮してくれることでしょう。
今回流用した自動車用の中古イグニッションは、ヤフオクでも当時から2倍以上に価格高騰しているため、中古部品を選ぶメリットが少なくなっています。
流用するなら、コイル一次側に接続する防水コネクタや平型端子などがすべてセットになっている「アドバンス・プロ『雷電』」がおすすめです。
2023年6月現在、「ASウオタニSP」2の実売価格は1万円強であるのに対し「アドバンス・プロ『雷電』」は半額に近い6,000〜7,000円程度の値段で新品の閉磁路式イグニッションコイルが手に入ります。
↓こちらはコイル単品。価格は2024年2月時点で2.980円です。
中国の模倣品と思われますが、イグニッションコイルの仕組みは単純であるため性能に問題はないでしょう。Amazonに、紹介したのと同じ部品を使ってエイプに流用したレビューがあります。
↓↓↓イグニッションコイル流用の続きはこちら。取り付け編。
ミニバイクに自動車用イグニッションコイルを取付ける【位置決め作業】点火系強化
↓↓↓ NGKのプラグコードや、余分な配線をまとめた後の最終インプレッションはこちらです。イグニッションコイルの交換でエイプの走りが激変しました。
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