電気配線のメンテナンスは、インジェクション車はもちろん、キャブレター車でも重要です。
トラブル防止や、なんとなく調子が悪いといった症状の改善に効果があります。
カスタムすると頻繁にシートを外します。そのついでに行っておきたい電装系の端子状態維持方法を解説します。
- エイプのシートを外したら
- シート下の電装系の端子をメンテナンス
- 1.CDI・レギュレーター端子
- 2.アース端子・イグニッションコイル端子
- 3.テールランプ・リアウインカーのギボシ端子
- 4.バッテリー端子
- 5.リアフェンダー回りのボルト増し締め
- 6.エンジン・灯火類の動作チェック
- 端子メンテナンスのまとめ
エイプのシートを外したら
エイプのシートはボルト2本で留っているだけではあるものの、社外マフラーやグラブバーなどを取り付けていると脱着は結構な手間がかかります。
カスタムのためにシートをはずしたなら、ついでに電装系配線のメンテナンスをしておきましょう。
とくにエイプは、エンジン性能に関わるイグニッションコイルやCDIなどの点火系装置がシートとタンクの下にあります。おまけに外部に露出しているため端子の腐食が進行しやすくなっています。
これらの端子を正常な状態に保っておくことで、後々のトラブル防止に加え、エンジンフィーリングのアップにも効果があります。
そして、これらのメンテナンスはどんなバイクや車にも有効。おおよそ1年おきにやっておきたいメンテナンスです。
シート下の電装系の端子をメンテナンス
電装系の金属端子は使用していると酸化や腐食、汚れなどにより導通が悪くなります。変化量はわずかとはいえ、アンダーパワーな原付ほどパワー感やエンジンフィーリングに大きな影響を及ぼします。
メンテナンスのために準備するものは、細目の紙やすりと鉛筆。コンタクトスプレー(接点復活剤)圧着端子と圧着工具があれば万全です。
鉛筆の炭素は電気伝導率に優れるうえ、粉末状になると滑りやすいため端子着脱を助けます。
伝導率では同様の効果があるナノカーボンよりも性能は劣るものの、鉛筆はナノカーボンよりも遥かに安価で作業性にも優れています。
電気端子は劣化する
端子が緑色に変色するのは「緑青」と呼ばれる酸化銅。つまり銅のサビです。緑青は電気を通さないため接触不良の原因となります。
端子磨きの作業方法は、端子の強固な汚れや緑青を紙やすりで磨き落として、コンタクトスプレーを吹き付けて削りカスと油汚れを飛ばします。
その後、鉛筆で端子に色を塗るようにして黒檀を擦り付け、接続しては外してを何度か繰り返すことでひとつの端子のメンテナンスが完了します。
端子のメンテナンスに必要なもの
- 細目の紙やすり
- 鉛筆(濃さは2Hが炭素と樹脂のバランスがよく使いやすいそうです)
あると便利なもの
- コンタクトスプレー(接点復活剤)なければブレーキクリーナー
- 電工ペンチ
- 圧着端子
- グリス(熱伝導性に優れたシリコングリスがベスト)
作業手順
- 紙やすりで端子を磨く
- コンタクトスプレーでカスや油汚れを飛ばす
- 鉛筆を塗り込む
- 着脱を繰り返して馴染ませる。
1.CDI・レギュレーター端子
カプラーで接続されるCDIとレギュレーター端子は、劣化が少ないものの酸化は進行します。
カプラー内の端子を軽く磨いてから洗浄後、鉛筆を塗りましょう。
鉛筆は「ぬり絵」のように丁寧に塗る必要はありません。
加えて、レギュレーターは熱を発するため、フレームと接する部分に熱伝導率に優れたシリコングリスを薄く塗布して放熱を促してやります。
シリコングリスがなければ他のグリスでも構いません。PCのCPUを放熱させるためのヒートシンク取り付けと同じ要領です。
2.アース端子・イグニッションコイル端子
タンクを外した場所にあるアース端子とイグニッション端子、接続されるフレーム面も紙やすりで磨いて鉛筆です。
スパークプラグの点火電圧は、イグニッションコイルの一次電圧に依存するため、体感はできなくとも、配線端子の電気抵抗の増加で確実に点火性能が低下しています。
3.テールランプ・リアウインカーのギボシ端子
シートの後側あたりにはテールランプ・リアウインカーの配線ジャンクションがあります。これらはギボシ端子で接続されており、これらも磨いて洗浄、鉛筆です。
極端に接続が緩いものがあれば、メス側を狭めて(整形して)振動などで外れないようにしておきましょう。
なかには出荷状態から圧着不良の配線もあるためケーブルを引っ張ると断線する恐れがあります。しっかりと端子を掴んで外し、不良があればカシメ直し、もしくはギボシ端子を交換します。
この作業によって経年劣化による固着を防げるため、後々のカスタムのためにも有効です。ギボシ端子は接続を間違えないように1本づつ作業を行いましょう。
4.バッテリー端子
バッテリー搭載車はバッテリー端子もキレイに保っておきましょう。マイナス→プラスの順番で外し、処理後はプラス→マイナスの順番で取り付けます。
余力があればヘッドライト内とエンジン脇に配線ジャンクションの端子もチェック&清掃をしましょう。
5.リアフェンダー回りのボルト増し締め
電装系ではありませんが、リアフェンダーを止めているボルトが緩んでいないかどうかも、リアシートを外したタイミングで確認しておきましょう。
6.エンジン・灯火類の動作チェック
すべてのメンテナンスが終わったらシートを取付ける前に、エンジンの始動と、テールランプとリアウィンカーの点灯状態をチェックしましょう。これを怠ると、異常があった場合に再びシートを外す必要に迫られます。
端子メンテナンスのまとめ
電気配線のメンテナンスは手間がかかるものの、0円で確実に電装系のトラブル予防効果を発揮し、状態によってはパワー回復やフィーリングアップが期待できます。シフトペダルの引っかかりが改善することもあります。
こういった手間のかかる作業は整備工場などではやってくれません。作業後は、いつもよりバイクの調子が良いと実感できると思います。
また、キャブレターセッティングをしっかり出すには、その他の部分が正常であることが大前提です。
エイプには他に、ヘッドライト内とエンジン脇に配線ジャンクションがありますが、一度にすべてやるのは大変です。
ヘッドライトやエンジン脇のジャンクションは比較的手入れしやすいためいつでもできますが、CDI・レギュレーター・イグニッションコイル・テールランプ・リアウィンカーの配線端子はシートを外さなければアクセスできません。
これらは1年単位を目安に、まとめて行っておきたいメンテナンスです。
100均一の耐震ジェルシート(とくに青くて柔らかいの)は、乗り心地を改善するのに最適なアイテムです。シートを外したら、100均一の耐震ジェルシートをシートのクッション部分などに挟み込みましょう。
また、耐震ジェルシートは使っているとボロボロになるため、あまりに劣化しているようならシートを外したタイミングで定期的に交換することをおすすめします。