「以前よりパワーやレスポンスが低下した」「なんとなく調子が悪い」といった症状の原因は配線端子の汚れかもしれません。
配線端子を磨いたり清掃をしておくことは、インジェクション車はもちろん、キャブレター車でも各部の性能維持に有効です。また、バイクだけでなく車でも同じく有効です。
とくにバイクの電気配線周りのメンテナンスは、性能維持だけでなくトラブル防止にも効果的であるため、定期的にチェックしたい箇所といえます。
カスタムするとシートを外すことも多いでしょう。そのついでに行っておきたい電装系端子の状態維持方法を解説します。
- バイクのシートを外したら電装系のメンテナンスを!
- 電気配線や端子のメンテナンス方法
- 【作業箇所1】CDI・レギュレーター端子
- 【作業箇所2】アース端子・イグニッションコイル端子
- 【作業箇所3】テールランプ・リアウインカーのギボシ端子
- 【作業箇所4】バッテリー端子やヒューズ
- 【最後】シートを取り付ける前に必ず動作チェック
- 定期的な端子メンテナンスで快調を維持
バイクのシートを外したら電装系のメンテナンスを!
エイプのシートはボルト2本で留っているだけではあるものの、社外マフラーやグラブバーなどを取り付けていると脱着は結構な手間がかかります。バイクのシートを外したなら、ついでに電装系配線のメンテナンスをしておきましょう。
多くのバイクは、エンジン性能に関わるイグニッションコイルやCDIなどの点火系装置がシートとタンクの下にあります。おまけに外部に露出しているため端子の腐食が進行しやすくなっています。
これらの端子を正常な状態に保っておくことで、後々のトラブル防止に加え、エンジンフィーリングのアップにも効果があります。
こういった手間のかかる作業は整備工場などではやってくれません。作業後は、いつもよりバイクの調子が良いと実感できると思います。
そして、これらのメンテナンスはどんなバイクや車にも有効です。配線周りの手入れは、おおよそ1年おきにやっておきたいメンテナンスといえます。
電気配線や端子のメンテナンス方法
【端子のメンテナンスに必要なもの】
- 細目の紙やすり(1000番前後)
- 鉛筆(濃さは2Hが炭素と樹脂のバランスがよく使いやすいようです)
【あると便利なもの】
- コンタクトスプレー(接点復活剤)なければブレーキクリーナー
- 真鍮ブラシ
- 電工ペンチ
- 圧着端子
- グリス(熱伝導性に優れたシリコングリスなど)
電装系の金属端子は使用していると酸化や腐食、汚れなどにより導通が悪くなります。変化量はわずかとはいえ、アンダーパワーな原付ほどパワー感やエンジンフィーリングに大きな影響を及ぼします。
メンテナンスのために準備するものは、細目の紙やすりと鉛筆。洗浄用にコンタクトスプレー(接点復活剤)もしくはブレーキクリーナーを用意しましょう。
鉛筆の炭素は電気伝導率に優れるうえ、粉末状になると滑りやすいため端子着脱を助けます。伝導率では同様の効果があるナノカーボンよりも性能は劣るものの、鉛筆はナノカーボンよりも遥かに安価で作業性にも優れています。
配線が断線しかけていたり、端子が取れかかったりしている場合もあるため、圧着端子と圧着工具があれば万全です。
電気端子は劣化する
端子が緑色に変色するのは「緑青」と呼ばれる酸化銅。つまり銅のサビです。緑青は電気を通さないため端子の接触不良の原因となります。
端子磨きの作業方法は、端子の強固な汚れや緑青を紙やすりで磨き落として、コンタクトスプレーを吹き付けて削りカスと油汚れを飛ばします。
その後、鉛筆で端子に色を塗るようにして黒檀を擦り付け、接続しては外してを何度か繰り返すことでひとつの端子のメンテナンスが完了します。
ギボシ端子がすぐに抜けてしまうような箇所は、端子をペンチで整形して抜けづらくしておくこともトラブル防止に効果的です。
【作業手順】
- 紙やすりで端子を磨く
- コンタクトスプレーでカスや油汚れを飛ばす
- 鉛筆を塗り込む
- 着脱を繰り返して馴染ませる。
次項からは具体的な作業箇所を解説していきます。バッテリー搭載車は、必ずバッテリー端子を外してから作業しましょう。
【作業箇所1】CDI・レギュレーター端子
CDIとレギュレーター端子はカプラーで保護されているぶん劣化は少ないものの確実に酸化は進行します。
カプラー内の端子を軽く磨いてから洗浄後、鉛筆を塗りましょう。鉛筆は「ぬり絵」のように丁寧に塗る必要はありません。丁寧に塗ったところで、実際に通電するのはほんの一部の面積です。サラサラっと速記で文字を書くようなイメージで十分です。
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レギュレーター裏には念のため放熱グリスを
レギュレーターは稼働時に熱を発するため、フレームと接する部分に熱伝導率に優れたシリコングリスを薄く塗布して放熱を促してやることで延命や故障防止につながるかもしれません。
シリコングリスがなければ他のグリスでも構いません。PCのCPUを放熱させるためのヒートシンク取り付けと同じ要領です。
【作業箇所2】アース端子・イグニッションコイル端子
タンクを外した場所にあるアース端子とイグニッション端子、接続されるフレーム面も紙やすりで磨いて鉛筆を塗り込みます。
これらの箇所は走行性能に関わりやすい箇所。とくにスパークプラグの点火電圧はイグニッションコイルの一次電圧に依存するため、体感はできずとも、配線端子の電気抵抗の増加によって確実に点火性能が低下していると思われます。
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【作業箇所3】テールランプ・リアウインカーのギボシ端子
シートの後側あたりにはテールランプ・リアウインカーの配線ジャンクションがあります。これらはギボシ端子で接続されており、これらも磨いて洗浄、鉛筆です。
極端に接続が緩いものがあれば、振動などで外れないようにメス側を整形して確実に接続されるようにしておきましょう。
なかには出荷状態から圧着不良気味の配線もあり、強く引っ張ると断線するケーブルもあります。トラブルを防ぐためケーブルを引っ張るのではなく、しっかりと端子を掴んで外しましょう。
不良があればカシメ直し、もしくはギボシ端子を交換します。配線の導線部分に緑青が付着している場合は磨いて落とすか、配線をカットして端子を圧着しなおしておきましょう。
これら作業によって経年劣化による固着を防げるため、後々のカスタムの際の作業性アップにもつながります。ギボシ端子は接続を間違えないように、くれぐれも1本づつ作業してください。
ついでにリアフェンダーを止めているボルトなど、普段確認しづらい箇所もリアシートを外したタイミングで確認しておくとよいしょう。
【作業箇所4】バッテリー端子やヒューズ
バッテリー搭載車はバッテリー端子もキレイに保っておきましょう。マイナス→プラスの順番で外し、処理後はプラス→マイナスの順番で取り付けます。
長年使用したバッテリー端子には緑青が発生しがち。緑青は真鍮ブラシ等でこすり落とします。大量に付着している場合は、熱湯や重曹水を使ってキレイに落とせます。
余力があればヘッドライト内や配線ジャンクション、ヒューズなどの端子もチェック&清掃をしましょう。
【最後】シートを取り付ける前に必ず動作チェック
すべてのメンテナンスが終わったらシートを取付ける前に、エンジンの始動と、テールランプとリアウィンカーの点灯状態をチェックしましょう。これを怠ると、異常があった場合に再びシートを外す必要に迫られます。
定期的な端子メンテナンスで快調を維持
電気配線のメンテナンスは手間がかかるものの、0円で確実に電装系のトラブル予防効果を発揮し、状態によってはパワー回復やフィーリングアップが期待できます。
エンジンの振動が減ることでシフトペダルの引っかかりが改善する場合もありますし、キャブレターセッティングをしっかり出すには、その他の部分が正常であることが大前提です。
ヘッドライトやエンジン脇のジャンクションは比較的手入れしやすいため作業しやすいものの、CDIやレギュレーター・イグニッションコイルやテールランプなどはほとんどのバイクが配線端子はシートを外さなければアクセスできません。
これらは1年程度を目安に、シートを外したついでに行っておきたいメンテナンスです。
↓100均一の耐震ジェルシート(とくに青くて柔らかいの)は、乗り心地を改善するのに最適なアイテムです。シートを外したら、100均一の耐震ジェルシートをシートのクッション部分などに挟み込みましょう。
耐震ジェルシートは使っているとボロボロになるため、あまりに劣化しているようならシートを外したタイミングで定期的に交換することをおすすめします。