エイプ@ログ

ホンダ エイプを中心とした原付バイクのカスタム・チューニング・メンテナンスブログ

当ブログはアフィリエイト広告を利用しています。

塩ビ管で乗り心地を改善【フロントフォークのプリロード調整】水道管フォークカラーの作り方

スラストベアリングの組み込みで過剰になったフロントフォークのプリロードを補正しました。

フロントフォークカラーの代わりに使ったのはどこにでも売っている水道管(塩ビ管)。

プリロード最適化による乗り心地の向上のほか、フォークカラーを金属から樹脂に変えることで静粛性もアップするようです。

 

プリロードとは

プリロードとは停止状態でスプリングに加える予備荷重(プレ・ロード)のことであり、静止状態におけるサスペンションストロークの中点を決める値です。

ライダーの体重や積載物重量が同じ場合、プリロードを強めると縮側ストロークが伸びると同時に伸び側ストロークが狭くなります。プリロードを弱めるとその逆です。

ただし、プリロードを強くかけると、バネレートが変わっておらずともサスペンションが固くなったように感じられるようになります。

また、過剰にプリロードがかかった状態では荷重が抜けたときのバネの反発力が強くなるため跳ねるような動きが発生し、より乗り心地が悪く感じられます。

プリロードは、サスペンションを組み込む際の縮め具合を表すセット荷重と、ライダーと積載物を加えた車体重量の差し引きによって最適値が変動します。

プリロード調整は、車両総重量時の車高およびサスペンションストローク中点を最適化する作業と言えるでしょう。「サグ出し」とも呼ばれます。

 


フロントフォークにベアリングを組み込んだらプリロード調整は必須

honda_ape_front-fork_bering
フロントフォークにスラストベアリングを組み込んで、サスペンションが大きく動く荒れた路面での乗り心地は劇的に改善したものの、ストローク量が小さな平坦路ではフロント回りが終始跳ねるような挙動になりました。

高さを抑えたニードルタイプのベアリングでも3mm程度の厚さがあり、この状態ではフロントフォークは3mmのプリロードをかけたのと同じ状態になります。

仮にフロントフォークのスプリングレートが5kgf/mmだった場合、3mmのプリロードをかけると15kgの反発力が追加されることになります。

そのぶんフロントの車高は上がり、ストロークさせるためにはより大きな力を加えなければならず、伸び側のストロークはわずかに短くなります。

このように極端なプリロードをかけた状態は、荷重が抜けた瞬間にスプリングが反発してするため跳ねるような挙動が顕著に発生します。

また乗り心地が固いくせに、いざフロントに大きな荷重をかけると一気にフロントが沈み込み、挙動を乱す恐れがあります。

フロント周りにこのような症状が出る場合はプリロード過多です。ベアリングを組み込まずとも、市販のバイクでも極端に体重が軽いライダーが乗るとプリロード過多になる場合があります。

市販のバイクは、ライダーの体重65〜75kgを想定しているため、ライダーの体重や積載重量によってはプリロード過不足が生じます。

とくに軽量な小型バイクほど車両総重量を占めるライダーの体重割合が大きく、重量変化による挙動の変化は敏感です。

幸いなことに、バイクのフロントフォークは簡単に車高とプリロードを調整できる構造になっています。

乗り心地や乗り味に不満を感じるなら、フロントフォークのプリロード調整に加え、突き出し量の調整をしてみましょう。

 


フロントフォークのプリロード調整方法

honda_ape_front-fork_preload
フロント回りの跳ねるような動きを改善させるには、フロントフォークにかかる静止荷重を増やすか、プリロードを抜く方法が有効です。

静止荷重を増やすには、フロントフォークの突き出し量を増やし、バイクを前下りにしてやることで前後荷重分配を前寄りにできます。

ただし、前下り姿勢にするのには限界があるため、根本解決するにはフロントフォーク内のカラーの長さを調整してやる必要があります。

プリロードを調整するには、既存のカラーを短縮加工、もしくは同形状の鉄パイプなどを用いるのが一般的です。

ただし、最適なプリロードを探り出すためには、数mm単位でカラーの長さを調整する必要があるため、カラーの材質や強度はもちろん切削加工のしやすさも重要です。

 

水道管でフォークカラーを代用

honda_ape_front-fork_collar
今回は最適なカラー長を割り出すテストということで、水道管を使用しました。

水道管は、樹脂とはいえ強度・耐油性に優れるPVC(硬質塩化ビニール)製。加工しやすく、ホームセンターなどで安価に販売されているため、テストには最適な材料です。

樹脂は金属よりも制振性に優れるうえ肉厚もあるため、振動低減効果も期待できます。ただし耐薬性は低いため、洗浄にブレーキクリーナーやアルコールなどの薬品は使用厳禁です。

耐油性も備えているとはいえ、フォークオイルに浸されながらどれほどの耐久性を発揮するかは未知数です。

長期耐久性さえクリアできれば、水道管はフロントフォークに最適な素材と言えるでしょう。実際に長期間に渡って使っている方もいらっしゃるようです。

また、ひとくちに塩ビ管(PVC管)といっても、耐衝撃性に優れたHI-PVC管や、耐熱性に優れたHT管(PVCの耐熱温度35℃に対しHTは90℃)も存在します。

 

水道管フォークカラーの作り方

honda_ape_front-fork_collar_02
スラストベアリングで増えたプリロードを補正できる長さにカットし、ヤスリで長さや表面を整えて、既存のフォークカラーと入れ替えるだけです。

パイプカッターがあれば、ものの10分程度で制作できます。角面は強度や耐久性を増すために面取り加工をしておきましょう。

エイプの付いているアイネットのフロントフォークには65mmのカラーが装着されており、スラストベアリングの厚さ3.5mmを差し引いてノーマルと同じプリロードをかけるためには、カラーの長さを61.5mmに調整する必要があります。

ただし、セッティングに幅を持たせるために、カラーは短めに切り出し、不足分はワッシャーを追加して最適なプリロードに微調整します。

エイプのフロントフォーク(インナーフォーク)内径は実測25.5mmであるため、一般的なホームセンターで手に入る外形25mm×厚さ1.5mmのワッシャーがシム代わりに使えます。

プリロード調整に便利なアジャスター式トップボルトも販売されているものの、その価格は5,000円ほど。純

正フォークであれば他社種純正品や社外品が使えるはずすが、アイネットのトップボルトネジ寸法は純正と同じである保証はないため、導入は見送りします。

水道管は1mあたり218円(税込み)。長さの異なるカラーをいくつか作っておけば、トップボルトを開ける手間はかかるものの、シーンによってフロントのプリロードを自在に調整できます。

 

スラストベアリングおよび塩ビ管カラーはどれくらいで劣化する?


2021年4月にコロタイプのスラストベアリングを導入し、それから1年半が経ち約1,000kmほど走行しました。スラストベアリングの交換に際して劣化具合も確認しておきます。

とはいえ、心配していたスラストベアリングおよび水道管カラーの破損や磨耗劣化はみられませんでした。

ベアリングの方は小さいながらもコロはしっかり機能しているようで、簡易目視では破壊や偏磨耗、サビはありませんでした。翌5月に交換した塩化ビニール製の水道管カラーもフォークオイルに浸されながら1年半使用してもなんら変質や破損みらません。

通常走行であれば、おそらく最低3年程度は使えるでしょう。これなら消耗部品として考えなくてもよさそうです。

 

セッティングメモ

カラーの長さを変更した各プリロードでの感想メモです。

(ライダー体重55kg・アイネットフロントフォークトップボルト長15mm)

プリロード+3.5mm・絶対値21.5mm(標準金属カラー)

  • 段差を乗り越える際の乗り心地はスラストベアリングの効果で良好。
  • ただし、平坦路では路面の割れや路面の微細な凹凸でフロント回りが細かく上下動する。
  • フルブレーキ時の安定性・前後バランスは良好。

プリロード+1.5mm・絶対値19.5mm(水道管カラー)

  • フロントの上下動は一切なくなり、ベアリングの効果と相まってしっとりとしたハンドリング。微細な凹凸を上手く処理してくれる。
  • 視覚が捕らえた凹凸に備えて身体が強ばるものの、なんの振動も発生させず凹凸を乗り越えるため拍子抜けするほど乗り心地が改善。
  • まだ若干の固さがある。良くも悪くも芯がある。

プリロード±0mm・絶対値18.0mm(水道管カラー)

  • 乗り心地は良好。路面補修程度の凹凸なら無感覚で乗り越えられる。
  • フロント周りがユルいと感じる。相対的にリアサスペンションの固さが気になった。

プリロード-1.5mm・絶対値16.5mm(水道管カラー)

  • 乗り心地は良好ながら、プリロード±0mmと大きな変化は感じられず。
  • 速い速度で倒し気味に曲がると不安定になるときがあった。
  • フルブレーキ時の沈み込みが早く感じられる。やや不安。
  • リアサスペンションのリセッティングが必要。
  • 一般道ではベストと思われる。峠道での挙動は未確認。

 

水道管フォークカラーのまとめ

honda_ape_front-fork_collar_03
水道管のフォークカラーに交換した副次効果として、フロント周りが静かになったように感じられました。

恐らく、フロントフォークが路面追従できなかった際にカラーとトップボルト間に隙間が生じ、材質が金属から樹脂に変更したことで、ぶつかる際の打音が小さくなったものと推測されます。

また、金属ではなく樹脂を介することで路面からハンドルに伝わる振動も少なくなっているようにも思えます。

フロントフォークのプリロードは純正値を基準にして、3mmではやや過剰気味。走行環境に合わせて±2mmの範囲で調整するのが現状ベストという結論に達しました。

比較的バネレートが低いフロントフォークのプリロードは1mmではほとんど変化が感じられず、おおよそ2mm単位で動かさなければ変化がわかりづらいようです。

しかし、低い速度域であってもプリロードと突き出し量を数mm動かすだけでバイクの動きは大きく変わります。

プリロードとフロントフォークの突き出し量と合わせて調整すると、スロットルオンオフでフロント荷重が調整しやすくなるため、スロットル操作だけで旋回半径が自在にコントロールできるようになります。

市販状態のバイクは誰がどのように乗っても安定するようにセットされているため、スロットルオンでもオフでも終始アンダーステア気味のよう。

バイクが思い通りに動かないと感じるなら、それは操作とフロントフォークのセッティングがマッチしていないのかもしれません。

 

↓パイプカッターと言えば定番のSK11。エイプなら1,000円弱で買えるミニサイズで十分です。

 

↓フロントフォークにスラストベアリングを組み込みんだ記事はこちら

このブログの記事一覧へ移動