優れた潤滑性を誇るベルハンマーはサスペンションに塗布することで乗り心地を改善できます。
サイズやコストから機構が単純で性能に限界がある小型バイクのサスペンション性能を引き上げるのにベルハンマーは最適なケミカルアイテムといえるでしょう。
そのなかでもさらに高い極圧潤滑性能を誇る『LSベルハンマー Yamanaka Special(山中スペシャル)』をサスペンションの各部に塗布して効果を検証しました。
目次
- 施工箇所①フロントフォークオイルへ添加
- 施工箇所②オイルシールおよびフォーク摺動部
- 施工箇所③フロントフォークベアリング
- ベルハンマーはフォークオイル添加剤として微調整に
- 施工箇所④リアサスペンションリンク
- 施工箇所⑤ダンパーシャフト
- ベルハンマーはグリスの添加剤として活用できる
- まとめ:ベルハンマーは「油脂類のチューニングオイル」
施工箇所①フロントフォークオイルへ添加
ベルハンマーはフロントフォークオイルなどへ添加して使用することが公式に認められています。フロントフォークオイルへ添加することで、インナーパイプやアウターパイプ、シートパイプの摺動抵抗の低減され、乗り心地の改善が期待できます。
これにならってフォークオイルへ規定量を添加したインプレッションです。
フォークオイルへの添加量3%
エイプのフォークオイル規定量は174cc±2.5ccです。さしあたり6ccを添加し、濃度3%に抑えて様子をみます。
しかし、30km/h以下では変化はわからずじまい。30km/h+αの速度で、荒れた路面でフロントフォークの落ち着きが増したような気がするものの、はっきりとした変化は感じ取れませんでした。
フォークオイルへの添加量5%
5%添加時も変化は感じられず。ややブレーキング時のフロントの安定感が増した気はしますが断定はできません。
ベルハンマーの原液の粘度は、おおよそ30番前後とのことです。使用しているフォークオイルは10番であるため、ブレーキ時の安定性が向上したのはわずかにオイルの粘度が上がったせい、もしくは油面が上がっているせいかもしれません。
フォークオイルへの添加量7%
6%まで添加量を増やした時点で、ベルハンマーを添加して高くなった油面を調整しました。その結果、乗り心地が改善されました。
ベルハンマーの効果で足回りがスムーズに動いても、7%添加で約12ccぶんも油面が高くなっているため、ベルハンマー単体での効果を測るのは困難のようです。少なくとも乗り心地は悪くなっていることはありません。
フォークオイルへの添加総括
公式ではフォークオイルに対して5〜10%の添加を推奨しています。この添加量はフォークオイルをはじめ、エンジンオイルやトランスミッションオイル等も同様です。
原理上、フロントフォークがより早くより大きく動くシーンほどベルハンマーの効果が出やすい思われます。
また、ときおり起こるであろうスプリングとインナーパイプ内側との摩擦低減も期待できると思われますが、通常は問題視されない事象であるため効果もそれだけ小さくなるでしょう。
フロントフォークへのベルハンマー添加は、内部構造が単純な小型バイクのフォークほど効果が大きいと思われます。
しかし原付一種の速度帯で感じ取れた変化は微々たるものでした。同じフォーク構造かつ、より速度域が高い原付二種なら、さらに大きな変化が感じられるかもしれません。
今回、添加方法はフォークトップから流し入れる方法を採ったため、フォークオイルと混ざり効果が出るまでには時間差が発生することが懸念されます。
しかし、上記の感想は数km走行後のものです。また、日を改めても劇的な変化は感じ取れませんでした。
性能と即効性を高めるのであれば、フォークの組み付けオイルとして使い、さらにフォークへオイルを注入前に添加し撹拌したかたちで用いるのがよいでしょう。
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施工箇所②オイルシールおよびフォーク摺動部
オイルシールの締め付けもフロントフォークの動きをわずかに規制します。密閉度を保ったままスムーズに摺動できるようになれば、それだけ乗り心地もよくなります。
フロントフォークの外周とオイルシールが接して摺動する部分にベルハンマーを塗布したところ、停止状態で手を使ってフォークを沈めると動きが良くなった印象があります。しかし、走行時の変化はとくに感じとれませんでした。
施工箇所③フロントフォークベアリング
フロントフォークへスラストベアリングを入れている場合は、ベアリングの摺動部へも塗布しましょう。
すっかり慣れきってしまったスラストベアリングの効果が、ベルハンマーをベアリングに塗布したことで、装着直後の感動が蘇るほどまでに動きが改善されました。
とくに、ボールタイプのスラストベアリングの裏側やレースがグリス溜まりとして機能するため、確実かつ長期間に渡り効果が持続するでしょう。
ベアリングの外周にも塗布することでインナーパイプ内側との摩擦が低減できると思われます。
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ベルハンマーはフォークオイル添加剤として微調整に
フォークオイル添加量3%とベアリングへの塗布の組み合わせ時は、路面追従性の明らかな向上が確認できました。
また、添加量5%で上記のすべての箇所に塗布した状態では明確にフォークの動きがよくなっていることが実感できます。緩く波打った路面での追従性向上が顕著であり、フォーク伸び方向の動きが素早くスムーズになっていることが、ありありと感じられます。
各箇所へ使用した際の個々の変化はわずかでも、効果を総合するとしっかりと体感できる変化として現れるようです。
現在入っているオイルに添加する場合は、ベルハンマーが完全にフォークオイルに混ざりあってから、スポイトなどでオイルを上抜きして油面調整を行いましょう。
油面高は数ミリ高くなっただけでフロントフォークの動きに明確な影響をもたらします。
施工箇所④リアサスペンションリンク
エイプのリアサスペンションリンクにはベアリングなどは備わっておらず、グリスによる潤滑に依存しています。
サスペンションリンクへの塗布は、高い潤滑性と極圧性が備わるベルハンマーの特性が活かせる部分といえるでしょう。
しかし原液のベルハンマー単体では粘度が低く、リアサスペンションリンクへの単体使用は不適応であるため、グリスに添加するかたちで使用するのがベターと思われます。
使用グリスはスーパーゾイル(リチウムグリス)です。スイングアームピボットへは既存のグリスに添加しましたが、リンク部分のグリスは変質が顕著であったため、新しいグリスを使用しています。
荷重負担が少ないであろうオイルシール内側へは、ベルハンマーのみを塗布しました。
実質的にグリスアップをし直したためベルハンマー単体の効果とは言い難いものの、乗り出し直後から乗り心地の改善が体感できました。
また10km程度走行した時点で、さらにしなやかさが増したような変化がありました。継続した走行によって熱が入り、金属表面が改質されたのかもしれません。
継続して使用しているグリスも同じく金属表面改質効果をもつスーパーゾイルです。しかしスーパーゾイルでは、これまでグリスアップ後の走行中に変化が感じられたことはありませんでした。
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施工箇所⑤ダンパーシャフト
リアダンパーシャフトのオイルシールも、摺動面積は遥かに小さいもののフロントフォークのシールと同じくショックアブシソーバーの動きを規制します。
ダンパーシャフト部に適量を塗布すると、体重を乗せて車体を押し沈めた際に、より小さな力で動くようになったことが確認できました。しかし結果は塗布フロントフォークと同じく、実走行で明確な乗り心地の変化は感じられませんでした。
ベルハンマーはグリスの添加剤として活用できる
特定速度と特定路面下では明らかにリサスペンションの伸縮がスムーズになり、乗り心地の改善が確認できました。
前後サスペンションとも、とくに伸び方向の動きが速くなっている印象であり、沈下した形状の路面通過時に素早く車体を支え、車体の上下動が減少している様子です。
とくに緩く波打ったような路面では、改善されたフロントフォークも相まって水上高速ボートに乗っているような乗り心地を示すのが印象的でした。
とはいえ、大きく鋭い入力に対しては、さすがに縮み方向への伸縮による突き上げ感は残ります。
18段階あるリアサスペンションの減衰力を1段弱くすると、突き上げ感が気にならなくなりました。
タケガワのサスペンションは伸び側のみの減衰力調整のはずですが、縮み側にも影響があるのかもしれません。
他の減衰力も幾つか試しましたが、それぞれの変化がはっきりとわかるようになっているように感じます。
スイングアームのフリクションロスを抜くことで、サスペンションの特性の違いも明瞭に現れやすくなっているようです。
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まとめ:ベルハンマーは「油脂類のチューニングオイル」
車体の軽さは乗り心地に有利ではあるものの、冒頭で述べたように小さい車体はサイズの制約から機構を単純にせざるを得ません。
小型バイクの乗り心地は軽快というよりは軽薄であり、どれだけ改善しても大きく重いバイクのような乗り心地は出すことは不可能です。
同じ理由で、小型バイクは乗り心地改善のためにできることも限られます。懸架装置のみに限定すれば、スプリングレートと減衰力の設定に加え、スラストベアリングや手動部のグリスアップによるフリクションロスの低減程度のものでしょう。
ベルハンマーがサスペンションへおよぼす影響はわずかです。しかしわずかであっても乗り心地改善の手段が限られる小型バイクのサスペンション性能を引き上げられる点は有用です。
ベルハンマーは潤滑剤としては異常ともいえるほど高額ですが、変化の度合いを考慮すれば費用対効果は高いと実感できました。
ベルハンマーなら比較的低リスクで車やバイクに使える
ベルハンマーは、フロントフォークオイルやグリスへの添加して使用できる実績がある点も大きなメリットです。それは、乗り心地の悪化を最小限に抑えながら、粘度の微調整ができることを意味します。
高潤滑性能を謳う似たような商品は数多くあるものの、公式にオイル添加を推奨しているメーカーはそれほど多くありません。
ベルハンマーを使用するメリットは高い極圧潤滑性能はもちろん、メーカーが車やバイク各部への使用実績を公表していることで、比較的安心して使える点も大きいといえるでしょう。
スズキ機工サイト 『ベルハンマーよくある質問集 オートバイ・自転車編 』
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