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ホンダのバイク『エイプ』専門のカスタム・チューニング・メンテナンスブログ

『ベルハンマー山中スペシャル』でクラッチレバーは軽くなるか? 効果検証③操作編

高い潤滑性能を誇るベルハンマー。なかでも山中スペシャルは特殊添加剤を18倍まで濃縮配合した特別なベルハンマーです。

これにより、バイク操作の負担となるクラッチレバーを軽くできれば、運転が非常に楽になります。

クラッチのほか、ブレーキ周りや細かな箇所にベルハンマー山中スペシャルを使用して、その効果を検証していきます。

↓『LSベルハンマー 山中スペシャル』とは?

 

施工箇所①クラッチレバー

 

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レバーピボットだけでなく、クラッチワイヤーのタイコとアウターカラーにもベルハンマーを塗布

通常のグリスアップと同じように、クラッチレバーピボット、クラッチワイヤーのタイコ部分にベルハンマーが使えます。とはいえ塗布しても、動画等で絶賛されるほどの変化は感じられませんでした。

 

高い浸透性をもつベルハンマーならではの塗布ポイントは、エンジン側のクラッチピボットです。先端が細い化粧品詰め替え用の注射器を使えば、最低限の量を注入できます。しかし、こちらもいまいち効果は体感できません。

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エンジン側のクラッチピボット

もともとクラッチレバーが軽いせいもあってか、エイプでは劇的な改善とはいかず。

わずかに軽くなった印象はあるものの、これはベルハンマーの潤滑効果というよりは、グリスに比べて粘度が下がっている影響が大きいと思われます。

 

軽くなったというよりは、動きが良くなったというのが率直な感想です。半クラッチ時の必要な保持力が減り、戻り速度も確実に速くなっているため、シフトチェンジがしやすくなったような気がしないでもありません。

 

それでも後日確認したところ、クラッチレバーピボットボルトに薬液が黒く変色するコンタミネーションが確認できたため、ベルハンマーの特徴である表面の改質は行えているようです。

 

施工箇所②クラッチワイヤー

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クラッチワイヤーに対してベルハンマーの硬すぎる印象で、かえってレバーが重くなるように感じられました。

 

クラッチワイヤーには使い古したエンジンオイルが定説となっているのは、おそらく新品オイルでは粘度が高すぎるためだと思われます。

 

クラッチワイヤーにはサラダ油のように低粘度のオイルがベストマッチするでしょう。

 

施工箇所③フロント・ディスクブレーキ

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エイプのフロント側についている片持ちブレーキキャリパーには、パッドピンとスライドピンに使用してみました。スライドピンには既存のグリスに添加するかたちで塗布しています。

 

ただし塗布量が多すぎると熱がかかって流れ出し、ベルハンマーの高い潤滑性能が災いしてブレーキが効かなくなる恐れがあります。塗布量には注意するとともに、作業中はディスクやパッドに付着させないように細心の注意が必要です。

 

ベルハンマーの耐熱温度は200度程度で一般的なグリスよりも高めではあるものの、ブレーキに使うにはややリスクが高いと言わざるを得ません。

 

塗布後はコントロール性が増しているのが体感できました。多少荒めにレバーを握ってもカックンブレーキになる気配はなく、しっかりと握力に応じてしっかりと制動してくれるようになっています。

 

ただしこれは通常のグリスを使っても同じことで、ベルハンマー単体の効果とは言い切れません。ブレーキ周りは、グリスの種類うんぬんよりも通常のメンテナンスが大切です。

 

また、ブレーキレバーの摺動部とピボット、マスターシリンダーのプッシュロッド部にも塗布し、操作感の向上がなんとなく認められました。しかし明確な違いはわからずじまいです。

 

施工箇所④リア・ドラムブレーキ

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ドラムブレーキのライニングカム

リアのドラムブレーキへは、ライニングの動作カムと動作カムのシャフト部に塗布。こちらも量が多すぎるとブレーキが効かなくなるためため塗布量には注意しましょう。

 

塗布後はブレーキペダルが軽くなり、踏力でコントロールできるように。小さな力で済むようになったため、効き自体も強くなったように感じられます。カム部にはグリスがしっかりと残っていたため、この変化は気の所為ではないでしょう。

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リアブレーキペダルピボット

その後、リアブレーキペダルピボットやコントロールロッドの摺動部にも追加で塗布しましたが変化は感じられず。やはり極圧潤滑剤であるベルハンマーは、駆動系のように大きな力が掛かる部分ほど効果も高いようです。

 

組み付け方でもブレーキフィーリングは変わる

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リアブレーキ・ペダルレバーピボット

ただし、これらリアブレーキの変化はベルハンマーの効果ではなく、単に組み付けによる違いにより状態変化の可能性も考えられます。

 

今回の作業で気づいたことですが、とくにエイプのドラムブレーキのカムレバーは、レバーシャフトのスプライン固定ナットを締めすぎると、ピンが飛び出した特殊形状のワッシャがストロークを規制してしまう構造のようです。

 

これまでリアブレーキの効きが悪いと感じていたのは、この特殊ワッシャの規制により十分なライニング圧着力が確保できていなかった可能性があります。

 

スプライン固定ナットの締め付け具合でドラムブレーキのフィーリングが大きく変わります。ナットを緩めれば効かせられるようになり、締め付ければブレーキロック防止に働きます。

この部分は緩み止めナットになっているため緩めでも脱落等の問題はなさそうです。ブレーキロッドの遊びと併せて調整するとよいかもしれません。

 

施工箇所⑤スロットル&ワイヤー

クラッチワイヤーと同じく、ベルハンマーはスロットル周りやアクセルワイヤーに使うには硬すぎます。

抵抗になることに加え、汚れを呼び込み、かえって動作不良に陥らせる恐れがあるため未塗布としています。

施工箇所⑥サイドスタンド

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ひと冬を越して、渋くなっていたピボット部分に塗布するとサイドスタンドの上げ下げ操作が自転車のように軽くなりました。操作時に摺動するバネのフック部も摺動するためここへも塗布します。

 

これまでKURE 5‐56を使用していましたが、時間が経つと茶色く変色するのが難点でしたが、ベルハンマーはその兆しはなし。

 

ベルハンマーはその高い潤滑性能で、スーパー5-56よりも軽く操作できるようになり、しっかりとした耐水性(水置換性)も備わっています。

おそらく潤滑効果もより長く続くことでしょう。このサイドスタンドの軽やかさには感動を覚えました。

 

施工箇所⑦ヘルメットロック

こちらもロックシャフトに塗布した所、押し込みが軽くなり、解錠したときの戻りも速くなりました。それによるメリットはないものの、なんとなく気持ちよく使えるようになります。

 

とはいえベルハンマーは水置換性に加え、JIS規格NP-3相当の防錆効果も備えているそうなので、こういった手の届かない場所のメンテナンスオイルとしての役割も果たしてくれそうです。

汚れを呼び込む恐れからメットロックの鍵穴へは塗布していません。

 

まとめ:ベルハンマーの粘度は使いやすい。しかし万能ではない

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ベルハンマーの粘度は、グリスより柔らかく潤滑性も高いため、操作系にもよくマッチする印象です。ただし潤滑剤としては粘度が高いため、ワイヤー等への使用には適さないと思われます。また、ブレーキ周りへの使用にも危険がつきまといます。

 

ベルハンマーひとつでバイク全体メンテナンスができるかもと期待しましたが、そうはいかないよう。グリスとして使うなら、最近登場した耐熱温度800℃の『ベルハンマーメタルグリス』のほうが使い勝手が良さそうです。

 

バイクの操作系の潤滑に関しては、ワイヤーの取り回しや、パーツの組み付け方、定期的なグリスアップなどの基本作業の方が大事であることを今回の作業で痛感しました。

バイクの操作系を万全の状態にした上でならベルハンマーの高い潤滑性能により+αの効果が見込めるでしょう。

 

とくに変わり映えしないと思われるステムベアリングへのベルハンマー塗布は次回のステム分解整備時に行う予定です。

↓耐熱温度800℃を謳う新商品のベルハンマーメタルグリスです。Amazonのスズキ機工ショップではまだ販売されていないようであるため、購入する場合は楽天やYahoo!などのベルハンマー直営オンラインショップを利用しなくてはならないようです。

スタントライダーのOGAさんが発売直後にレビュー動画をYoutubeにアップしています。

 

5月11日追記:『LSベルハンマーSuper琉聖』が新発売

特殊極圧剤の配合量はそのままに原液タイプより低粘度化した『LSベルハンマーSuper琉聖』スプレーが新たにベルハンマーラインナップに追加されたようです。

この製品ならば、粘度抵抗をおさえたまま高い潤滑性能を発揮できるため、クラッチワイヤーやアクセルワイヤーにも使えそうです。ただし価格は100ml入りで2,970円と非常に高額です。

ベルハンマーは他のオイルとの親和性も高いため、一般的な低粘度の潤滑剤に原液タイプの山中スペシャルを添加するかたちで使っても十分な効果が得られると思われます。

 

↓極圧潤滑剤であるベルハンマーは駆動系への使用に最適です。ホイールベアリングとアクスシャフト、チェーンとメーターギアにベルハンマー山中スペシャルを塗布したところ、1割弱の燃費性能向上が確認できました。

↓ベルハンマーは小型バイクの乗り心地改善にも効果があります。

↓ベルハンマー山中スペシャルについての解説です。

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