チェーンやホイールベアリング、アクスルシャフトなどにスズキ機工『LSベルハンマー 山中スペシャル』を用いた効果の検証記事です。
ホンダ エイプ50のドライブトレインそれぞれの部位にベルハンマーを一箇所ずつ塗布しながらその都度試乗し、どの部分への使用でどれほどの変化があったかを記録しています。
結論から言うと、試験前までは眉唾だったベルハンマーの評価が一変するほどの効果がありました。
目次
- 施工箇所①ホイールベアリング(フロント)
- 施工箇所②ホイールベアリング(リア)
- 施工箇所③ドライブチェーン
- 施工箇所④前後アクスルシャフト
- 施工箇所⑤スピードメーターギア&ワイヤー
- 【ドライブトレインにベルハンマー】燃費への影響は?
- まとめ:「奇跡の潤滑剤」は伊達じゃない!
施工箇所①ホイールベアリング(フロント)
ホイールベアリングのグリスへ、ベルハンマーを添加するかたちで使用します。
ベアリング自体にガタつきはないものの、指で回すと以前よりもやや回り方が渋くなったように感じられました。ベルハンマーを塗布して指で回したところ若干軽く回るようになったもの、劇的な変化は感じられません。
しかし塗布後、バイクを手で押してみるとバイクが軽くなったように感じられました。
実走行してみると、出足が軽くなっているのがなんとなく分かります。以前なら低速ノックを起こすような発進の仕方でもスムーズに加速できるようになっており確実に走行抵抗が減っていることが体感できました。
たった1個のベアリングへの塗布だけでこれだけの変化が感じられるベルハンマーの性能には驚きを禁じ得ません。
施工箇所②ホイールベアリング(リア)
リアのホイールベアリングも、フロントと同様にガタつきはないものの回り方がやや渋くなっていました。来年あたり交換が必要になりそうです。
リアもフロントと同じく既存のグリスに添加するかたちで塗布。その際、ドラムブレーキカバーの内側のハウジングが、ホイル側とわずかに擦れているようで塗装がはがれているのを発見したため、ここへも塗布しました。
ただし、ブレーキライニングに付着してブレーキが効かなくなる恐れがあるため、塗布量には注意が必要です。(後日再確認した所、ハウジング部の油分は消えていました。取り付け不備の可能性も考えられます)
ベルハンマー塗布後、バイクを手で押した感じではやはり変化はわからず。しかし走行するとシフトアップ時の速度低下が少なくなり、ホイールバランスを取ったときと同じようにシフトの繋がりが改善されていることが確認できました。
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施工箇所③ドライブチェーン
ドライブチェーンはノンシールチェーンを使用しています。チェーン清掃後にピンとローラーの間、内プレートと外プレートの隙間に浸透させるようにチェーンの両側から注射器で1滴づつ塗布しました。
リアタイヤが浮いた状態で手で回転させてみると、塗布前は急速に回転数が低下するのに対し、ベルハンマー塗布後はよくあるベルハンマー検証動画と同じように惰性で回り続ける時間が明らかに長くなります。
その物理法則を無視したような回り方には違和感とともに感動を覚えるほど。同時に期待がこみ上げます。
前後ホイールベアリングとチェーンまで施工して、ようやくパワー感の違いがはっきりと感じられました。
しかし、カスタムなどでパワーを上げた際の印象とは異なり「エンジンの余力が増えた」というのがもっとも的を射た言葉です。
以前よりも数百rpm低い回転数からでもギアホールドのまま加速に転じられるようになっているのは抵抗減少の証。
50ccの原付バイクにしてはハイギヤードなスプロケットセットにも関わらず、3速のまま90度を曲がり、じんわりとスロットルを開ければ15km/h・2,000rpmからでも低速ノックを起こさず再加速ができるようになっています。
明確な変化にベルハンマーの性能が眉唾ではないことが体感できました。
《チェーンへの使用時の注意点》ベルハンマーの飛び散りについて
ベルハンマーは一般的なチェーンルブよりも粘度が低く、チェーンへの使用は遠走行時の心力で飛び散ることを多くのユーザーが警告しています。
チェーンへの塗布後、乗り出し30km/h以下の走行では一切の飛び散りは確認できませんでしたが、チェーンに熱が入り、粘性が低下するとおおよそ30km/h強の低速でも飛び散るようです。
チェーンには化粧品詰め替えようの注射器で最低量を塗布したにも関わらず、走行後は画像のようにタイヤの側面に放射状に飛び散った跡が見られました。
テスト前に、ベルハンマーをチェーンに使用するとこのような事態に陥ることを警告した動画を視聴していなければ、左カーブで転倒していたかもしれません。
参考動画:5:30秒から左折時にマンホール上でバランスを崩す様子が記録されています。
走行後のチェーンを観察すると、黒く変色したベルハンマーがチェーンのコマの各部から滲み出ていました。
薬液が黒くなるのはコンタミネーションと呼ばれる現象であり、金属表面が改質された際に起こる正常な作用とスズキ機工は説明しています。
ひとしきり飛び散ると、潤滑性能は保たれたまま、それ以降飛び散りは起きません。あくまで余分なベルハンマーが飛び散るだけのようです。
チェーンへの塗布量はほんの微量で十分のよう。とはいえある程度の量を塗布しなければ浸透しないと思われるため、塗布後はしっかりと拭き上げをしたうえで余分なベルハンマーを飛ばす慣らし運転が必須のようです。
タイヤに付着した薬液は確実に拭き取っておきましょう。
施工後、半年経ってもローラーの内側には薬液が残っており、スムーズ感もそこそこ残っています。ここまでの走行距離はおおよそ500km程度。これくらいの耐久性があれば、ベルハンマーをチェーンルブとして使用しても十分実用的といえるでしょう。
ベルハンマーの使用量
ここまでのベルハンマーの使用量は、前後4個のベアリングとチェーンに塗布しても3mlにも達していません。
ベルハンマー山中スペシャルの価格は80ml入りボトルで、通常の原液タイプの1,425円よりも遥かに高い2,970円と非常に高額です。
1mlあたり値段は約37円であるため、賞味100円程度の費用でこれだけの性能向上が見込めるのであれば、ベルハンマーのコストパフォーマンスは非常に高いものです。
化粧品詰め替え用の注射器を用いて塗布すれば、過剰な使用を抑えられるため、スプレータイプよりも原液タイプのほうがコスパは高いと思われます。
施工箇所④前後アクスルシャフト
アクスルシャフトへの塗布単体での違いを検証するため、あえてベアリング同時に施工しませんでした。
意外にも、アクスルシャフト単体への塗布でもわずかに抵抗低減を体感できました。ただし前後まとめての感想になります。
アクスルシャフトとホイールはベアリングを介して回転するため、原理上シャフトへ塗布は摩擦低減効果が期待できないはずです。しかし不思議なことに効果がはっきりと体感できました。
効果が出た理由は予想の域を出ませんが、おそらく走行中のホイールはアクスルシャフト〜インナーレース間でも回転をしているのでしょう。
走行中の上下振幅でタイヤの接地圧が一定値まで低下し、ベアリング抵抗よりもアクスルシャフト〜インナーレース間の抵抗の方が少ない条件が整うと、アクスルシャフトを軸にしてインナーレースごと回転しているのかもしれません。
加えて、ベアリングの動きが悪くなっていたこともこのような結果が出た一因かと思われます。
また、前後ベアリングとチェーンに加え、前後アクスルシャフトにまでベルハンマーを塗布してフロントタイヤ回りの騒音が低減していることに気が付きました。
ただし、アクスルシャフトは塗布面積が大きいためベルハンマーの消費量が増大します。
アクスルシャフトへの塗布後はトルク管理に注意
ベルハンマーをアクスルシャフトへ用いると、ネジ部に薬液が付着しがち。一度差し込み、引っかかってシャフトを再挿入すると確実にネジ部にベルハンマーが付着します。
ネジ部にわずかでもベルハンマーが残っていると、優れた潤滑性能が災いして、ナットを締め付けた際に確実にオーバートルクになります。
ブレーキクリーナーで洗い落とした後でも、ナットを締め付けてみるとグリスとは違う、どこまでも回って行くような気持ち悪さが残ります。それは、高い引張強度が持たされたアクスルシャフトであっても、感覚的には腕力だけでねじ切ることができそうなほどの滑り具合でした。
ネジ部にベルハンマーが付着したら、ブレーキクリーナーとブラッシングを併用してで確実に薬液を落とさなければ非常に危険です。
とくに締付トルク管理にトルクレンチを使用する場合はオーバートルクに厳重な注意が必要です。
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施工箇所⑤スピードメーターギア&ワイヤー
グリスが塗布されているメーターギアを手で回すとかなりの抵抗感が感じられます。一般的なグリスよりも粘度が低いベルハンマーに変えたことで軽く回るようになったものの、走行への影響はほとんど感じられませんでした。
ただし走行時にフロント周りから聞こえる騒音は確実に低下し、これまで気にならなかったメーターワイヤーの駆動音と思われるカラカラ音が気になるようになりました。
カラカラ音はメーターワイヤーにもベルハンマーを塗布することでわずかに改善されたものの、ワイヤーの取り付け方に不備があった可能性は拭いきれません。
スピードメーターギアとワイヤーは負荷がかかる部分ではないため、潤滑性能よりも粘度に着目したほうがよいと思われます。ベルハンマー原液よりもさらに低粘度のオイルが良さそうです。
もちろん理想は、非接触の電子センサー化です。体感ではメーターギアおよびワイヤーが走行におよぼす抵抗は、新品ホイールベアリング2個分程度に相当する印象です。とはいえ原付一種でなければ気づかない程度の抵抗でしょう。
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【ドライブトレインにベルハンマー】燃費への影響は?
駆動系へのベルハンマー塗布後は明らかに走行抵抗が減少しているため、燃費向上にも大きく影響することでしょう。予想ではドライブトレインへの塗布のみで1〜2割は燃費向上すると見込んでいました。
筆者は乗車頻度が少ないため、キャブレター内になるべく燃料を残さないように帰宅前に一定距離で燃料コックをオフにすることを習慣としており、ベルハンマー塗布後はオフにする距離が2割ほど伸びています。
燃費にはエンジンスペックや速度、路面状況や気象条件なども影響するため、長距離燃費がそのまま2割向上するとは思えませんが、速度が高いほど抵抗の絶対値は比例して大きくなるため燃費性能2割向上もあながち的外れな数値ではないと思えます。
これらを踏まえて、燃費データを収集しました。その記録を以下に残します。
2023年5月2日 燃費データ追加
ドライブトレインへのベルハンマー塗布後の燃費は、128km走行して1.87L=68.4km/Lでした。
ベルハンマー未塗布での直近の燃費は63.4km/Lであったため、ドライブトレインにベルハンマーを塗布した燃費の改善率は1割弱となります。
期待値には届かなかったものの、実質数百円の出費で燃費を1割近く改善できれば十分すぎる効果といえるでしょう。
収集データが少ないうえ、条件も異なるため信憑性には欠けますが、ベルハンマーはドライブトレインのロス低減に確実に効果があると断定できます。
以降の燃費データ
①走行距離113km・給油量1.62L=69.7km/L(2023年5月4日 )
②走行距離211km・給油量3.23L=65.3km/L(2023年5月18日)
③走行距離136km・給油量2.05L=66.3km/L(2023年6月6日)
④走行距離89.6km・給油量1.31L=68.4km/L(2023年6月12日)※チェーンへ再注油
走行距離が増えるごとに燃費が低下していくことが確認できました。この理由はベルハンマーの油膜が切れてきたせいかもしれません。
チェーンへの注油後は再び燃費数値がわずかに向上。押し歩きした際のバイクの重さも軽く感じられたことから、初期の効果が永続的に得られるわけではなく、走行距離100kmあたりから徐々に燃費性能が低下してくるようです。
しかし、最低でも500km程度はベルハンマーの効果が持続することも確認できました。
ノンシールチェーンの注油サイクルは一般的に約500kmとされているため、ベルハンマーはチェーンルブとして使うのに十分な性能保証が備わっているといえるでしょう。
まとめ:「奇跡の潤滑剤」は伊達じゃない!
ドライブトレインにベルハンマーを塗布すると、各部の回転抵抗が減少していることがはっきりと体感できました。
また、塗布直後よりも、ある程度の距離を走行してからの方が印象がよくなるように感じるのは金属表面の改質効果が出ているのかもしれません。しかし、プラセボではないとも言い切れません。
しかし、スロットルを開けずともバイクがスルスルと前へ進むようになったのは事実であり、傾斜とも呼べない緩い上り坂での速度低下が少なくなっているためパワーがない原付での運転が非常に楽になりました。
正直なところ、使用前はベルハンマーの謳い文句に対して懐疑的ではありました。
しかし、実際に使用すると簡単な作業かつ低コストでこれだけの性能を発揮できるベルハンマーが「奇跡の潤滑剤」と呼ばれるのは伊達ではないと思い知らされました。
↓ベルハンマーの原液を使うのであれば、先端が金属製で細いタイプの化粧品詰替え用注射器を使いましょう。高価なベルハンマーの使いすぎを抑えられるうえ、目盛り付きのものなら塗布量も計れます。
商品名は「コスメティックスポイト」。ダイソーなどの100円ショップでも販売されており、化粧品関係の売り場に置かれています。ベルハンマーは注射器のシールラバーを侵す恐れがあるため、予備を購入しておくことをおすすめします。
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