ドライブトレインそれぞれの部位にベルハンマーを一箇所ずつ塗布しながらその都度試乗し、どの部分への使用でどれほどの変化があるかを記録しています。
チェーンやホイールベアリング、アクスルシャフトなどにスズキ機工『LSベルハンマー 山中スペシャル』を用いて、その効果を検証します。
2023年5月2日 燃費データを追記しました。
- 施工箇所①ホイールベアリング(フロント)
- 施工箇所②ホイールベアリング(リア)
- 施工箇所③ドライブチェーン
- 施工箇所④前後アクスルシャフト
- 施工箇所⑤スピードメーターギア&ワイヤー
- ドライブトレインに塗布後の燃費への影響は?
- まとめ:「奇跡の潤滑剤」は伊達じゃない!
↓『LSベルハンマー 山中スペシャル』とは?
施工箇所①ホイールベアリング(フロント)
すでにホイールベアリングに付着しているグリスへ、ベルハンマーを添加するかたちで使用します。
ベアリング自体にガタつきはないものの、指で回すと以前よりもやや回り方が渋くなったように感じられました。ベルハンマーを塗布して指で回したところ若干軽く回るようになったもの、劇的な変化は感じられません。
しかし塗布後、バイクを手で押してみるとバイクが軽くなったように感じられました。
実走行してみると、出足が軽くなっているのがなんとなく分かります。以前なら低速ノックを起こすような発進の仕方でもスムーズに加速できるようになっており、たった一箇所へ塗布でこれだけの変化が感じられるベルハンマーの性能には驚きを禁じ得ません。
施工箇所②ホイールベアリング(リア)
リアのホイールベアリングも、フロントと同様にガタつきはないものの回り方がやや渋くなっていました。来年あたり交換が必要になりそうです。
リアもフロントと同じく既存のグリスに添加するかたちで塗布。その際、ドラムブレーキカバーの内側のハウジングが、ホイル側とわずかに擦れているようで塗装がはがれているのを発見したため、ここへも塗布しました。
ただし、ブレーキライニングに付着してブレーキが効かなくなる恐れがあるため、塗布量には注意が必要です。(後日再確認した所、ハウジング部の油分は消えていました。取り付け不備の可能性も。)
ベルハンマー塗布後、バイクを手で押した感じではやはり変化はわからず。しかし走行するとシフトアップ時の速度低下が少なくなり、ホイールバランスを取ったときと同じようにシフトの繋がりが改善されていることが確認できました。
施工箇所③ドライブチェーン
ドライブチェーンはノンシールチェーンを使用しています。チェーン清掃後にピンとローラーの間、内プレートと外プレートの隙間に浸透させるようにチェーンの両側から注射器で1滴づつ塗布しました。
リアタイヤが浮いた状態で手で回転させてみると、塗布前は急速に回転数が低下するのに対し、ベルハンマー塗布後はよくあるベルハンマー検証動画と同じように惰性で回り続けるようになります。
その物理法則を無視したような回り方に違和と感動と期待を覚えます
前後ホイールベアリングとチェーンまで施工して、ようやくパワー感の違いがはっきりと感じられました。
しかし、カスタムなどでパワーを上げたのとは印象は異なり、「エンジンの余力が増えた」というのがもっとも的を射た言葉です。
以前よりも数百rpm低い回転数からでもギアホールドのまま加速に転じられるようになっており、50ccにしてはハイギヤードなスプロケットセットにも関わらず、3速のまま90度を曲がりじんわりとスロットルを開ければ、2,000rpm15km/hからでも低速ノックを起こさず再加速ができるようになっています。
明確な変化にベルハンマーの性能が眉唾ではないことがはっきりと体感できました。
ベルハンマーの飛び散りについて
ベルハンマーはグリスはもちろん、普段使用しているヤマハのチェーンルブよりも粘度が低く、チェーンへの使用は遠心力で飛び散ることを多くのユーザーが警告しています。
チェーンへの塗布後、乗り出し30km/h以下では一切の飛び散りは確認できませんでしたが、熱が入り粘性が低下するとおおよそ30km/h強の低速でも飛び散るようです。
チェーンには化粧品詰め替えようの注射器で最低限の量を塗布したにも関わらず、走行後はタイヤの側面に放射状に飛び散った跡が見られました。
テスト前に、ベルハンマーをチェーンに使用するとこのような事態に陥ることを警告した動画を視聴していなければ、左カーブで転倒していたかもしれません。
↓参考動画:5:30秒から左折時にマンホール上でバランスを崩す様子が記録されています。
走行後のチェーンを観察すると、黒く変色したベルハンマーがチェーンのコマの各部から滲み出ていました。
薬液が黒くなるのはコンタミネーションと呼ばれる現象であり、金属表面が改質された際に起こる正常な作用とスズキ機工は説明しています。
ひとしきり飛び散ると、潤滑性能は保たれたまま、それ以降飛び散りは起きません。あくまで余分なベルハンマーが飛び散るようです。
チェーンへの塗布量はほんの微量で十分のよう。とはいえある程度の量を塗布しなければ浸透しないと思われるため、塗布後はしっかりと拭き上げをしたうえで余分なベルハンマーを飛ばす慣らし運転が必須のようです。
ベルハンマーの塗布量
ここまでのベルハンマーの使用量は、前後4個のベアリングとチェーンに塗布しても3mlにも達していません。
ベルハンマー山中スペシャルの価格は80ml入りボトルで、通常の原液タイプの1,425円よりも遥かに高い2,970円と非常に高額です。
1mlあたり値段は約37円であるため、賞味100円程度の費用でこれだけの性能向上が見込めるのであれば、ベルハンマーのコストパフォーマンスは非常に高いものといえるでしょう。
化粧品詰め替え用の注射器を用いて塗布すれば、過剰な使用を抑えられるため、スプレータイプよりも原液タイプのほうがコスパは高いと思われます。
施工箇所④前後アクスルシャフト
アクスルシャフトへの塗布単体での違いを検証するため、あえてベアリング同時に施工しませんでした。意外にも、アクスルシャフト単体への塗布でもわずかに抵抗低減を体感できました。ただし前後まとめての感想になります。
アクスルシャフトとホイールはベアリングを介するため、原理上シャフトへ塗布は摩擦低減効果は期待できないはずです。しかし効果がはっきりと体感できました。
おそらく、走行中の上下振幅でタイヤの接地圧が一定値まで低下し、ベアリング抵抗よりもアクスルシャフト〜インナーレース間の抵抗の方が少ない条件が整うと、アクスルシャフトを軸にしてインナーレースも回転するのかもしれません。
ベアリングの動きが悪くなっていたことも効果が出た一因かと思われます。
また、前後ベアリングとチェーンに加え、前後アクスルシャフトにまでベルハンマーを塗布してフロントタイヤ回りの騒音が低減していることに気付きました。
ただし、アクスルシャフトは塗布面積が大きいためベルハンマーの消費量が増大します。
アクスルシャフトへのベルハンマー塗布後はトルク管理に注意
ベルハンマーをアクスルシャフトへ用いると、ネジ部にベ薬液が付着しがちです。一度差し込み、引っかかってシャフトを再挿入すると確実にネジ部にベルハンマーが付着します。
ネジ部にわずかでもベルハンマーが残っていると、優れた潤滑性能が災いして、ナットを締め付けた際にオーバートルクになりがちです。
ブレーキクリーナーで洗い落とした状態でも、ナットを締め付けてみるとグリスとも違う、どこまでも回って行くような気持ち悪さが残ります。
高い引張強度が持たされたアクスルシャフトであっても、感覚的には腕力だけでねじ切ることができそうなほどの滑り具合でした。
ネジ部にベルハンマーが付着したらブレーキクリーナーとブラッシングを併用してで確実に薬液を落とさなければ非常に危険です。とくに締付トルク管理にトルクレンチを使用する場合はオーバートルクに厳重な注意が必要です。
施工箇所⑤スピードメーターギア&ワイヤー
グリスが塗布されているメーターギアを手で回すとかなりの抵抗感が感じられます。一般的なグリスよりも粘度が低いベルハンマーに変えたことで軽く回るようになったものの、走行への影響はほとんど感じられませんでした。
ただし走行時にフロント周りから聞こえる騒音は確実に低下し、これまで気にならなかったメーターワイヤーの駆動音と思われるカラカラ音が気になるようになりました。
カラカラ音はメーターワイヤーにベルハンマーを塗布したらわずかに改善されたものの、ワイヤーの取り付け方に不備があった可能性は拭いきれません。
スピードメーターギアとワイヤーは負荷がかかる部分ではないため、潤滑性能よりも粘度に依存する印象を受けました。ベルハンマー原液よりもさらに低粘度のオイルが良さそうです。
もちろん理想は、非接触の電子センサー化です。体感ではメーターギアおよびワイヤーが走行におよぼす抵抗は、新品ホイールベアリング2個分程度に相当する印象です。とはいえ原付一種でなければ気づかない程度の抵抗でしょう。
ドライブトレインに塗布後の燃費への影響は?
燃費は未計測です。しかし、明らかに走行抵抗が減少しているため、燃費向上にも大きく影響することでしょう。予想ではドライブトレインへの塗布のみで1〜2割は燃費向上が見込めると思われます。
乗車頻度が少ないため、キャブレター内になるべく燃料を残さないように帰宅前に一定距離で燃料コックをオフにすることを習慣としており、ベルハンマー塗布後は、オフにする距離が2割は確実に伸びています。
燃費にはエンジンスペックや速度、路面状況や気象条件なども影響するため、長距離燃費がそのまま2割向上するとは思えませんが、速度が高いほど抵抗の絶対値は比例して大きくなるため燃費性能2割向上もあながち的外れな数値ではないと思えます。
2023年5月2日追記
給油時に燃費計算したところ、128km走行して1.87L=68.4km/Lでした。
ベルハンマー塗布前の直近の燃費は63.4km/Lであったため、ドライブトレインにベルハンマーを塗布した燃費の改善率は1割弱となりました。
データが少ないうえ、条件も異なるため信憑性には欠けますが、ドライブトレインのロス低減は確実に燃費改善に効果があります。期待値にはとどかなかったものの、実質数百円の出費で1割近く改善できれば十分といえるでしょう。
2023年5月4日 燃費データ追加
走行距離113km・給油量1.62L=69.7km/L
2023年5月18日 燃費データ追加
走行距離211km・給油量3.23L=65.3km/L
(燃費低下を確認。ベルハンマーの油膜が切れてきた?もしくはブローバイの配管経路変更による変化。要検証)
まとめ:「奇跡の潤滑剤」は伊達じゃない!
ドライブトレインにベルハンマーを塗布すると、回転抵抗が減少しているのがはっきりと体感できました。
また、塗布直後よりも、走行するほど全体の印象がよくなるように感じるのは金属表面の改質効果が出ているのかもしれませんが、プラセボではないとも言い切れません。
しかし、低負荷でもバイクがスルスルと前へ進むようになったのは事実であり、上り坂とも呼べない緩い上り坂での速度低下が少なくなっているため原付での運転が非常に楽になります。
実際に使用するまでは、正直ベルハンマーの謳い文句に対して懐疑的ではありました。しかし、簡単な作業で、さらに低コストでこれだけの性能を発揮できるベルハンマーが「奇跡の潤滑剤」と呼ばれるのは伊達ではないと思い知らされました。
次回、ベルハンマー山中スペシャル・インプレッション第2回は『操作性改善編をお届けします。
↓ベルハンマーの原液を使うのであれば、先端が金属製で細いタイプの化粧品詰替え用注射器を使いましょう。高価なベルハンマーの使いすぎを抑えられるうえ、目盛り付きのものなら塗布量も計れます。
商品名は「コスメティックスポイト」とも。ダイソーなどの100円ショップでも販売されており、化粧品関係の売り場に置かれています。ベルハンマーは注射器のシールラバーを侵す恐れがあるため、予備を購入しておくとよいでしょう。
↓『ベルハンマー山中スペシャル』の売り上げの一部は、山中選手のレース参戦資金になるそうです。楽天やYahoo!の公式ショップに加え、Amazonでもスズキ機工のオンラインショップが開設されたようでお求めやすくなっています。