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ベルハンマーはバイクのエンジンオイルに使えるの?【クラッチ滑り】活用法を探る考察

ベルハンマーの潤滑性能の高さはバイクの車体各部に使用して体感できました。この優れた潤滑性能をもつベルハンマーのさらなる活用方法を考えます。

今回はレビューではなく、雑記やエッセイのようなものです。

目次

『LSベルハンマー 山中スペシャル』とは?

 

ベルハンマーは組み込みオイルとして使える

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ベルハンマーはエンジンを組み立てる際の「組み込みオイル」としても使用可能です。極圧潤滑剤としてのベルハンマーは金属表面を軟化させ、その後合金化し硬化すると謳う特性があります。

高い潤滑性そのものはベルハンマーによって生成された合金皮膜が摩耗した時点で失われてしまうものの、部品同士の当たり面が滑らかに仕上がることが予想されます。

新車の慣らし時運転時やカムシャフト等のエンジン内部の部品交換箇所に適量塗布しておけば、初期摩耗やかじりを抑え、より良好な"当たり"を作り出せるのではないかと思われます。

現在のエンジンは金属加工精度の向上にともない慣らし運転不要とは言われはするものの、それは車両の実用レベルの話であって、材料工学の観点からいえば慣らし運転は丁寧に行ったほうがよいのは明白です。

しかし、エンジン回転数を完璧に制御できない公道の走行は、エンジン単体で見た場合慣らし運転の場としてはふさわしくありません。

新車のエンジン内の各部にベルハンマーを塗布することで、通常のエンジンオイルには含まれない塩素系極圧成分の作用により、慣らし運転完了までの走行時間が早まるか、もしくは慣らし運転完了が遅くなる代わりに、初期摩耗の速度が抑えられ、公道でも時間をかけて良好な当たり面に仕上げられるかのどちらかになると予想されます。

最大の問題点は、新車および新品部品にベルハンマーを塗布する覚悟が決められるかどうかといえるでしょう。万が一エンジン内部が故障した場合、メーカーの想定していないベルハンマーを塗布したことで新車保証等が受けられなく懸念があります。

また強い極圧成分により、塗布する部分の材質や使用方法によっては変質や摩耗促進などを引き起こすリスクも拭い去りきれません。

ベルハンマーの注意点と使ってはいけない箇所【Yamanaka Special】バイク全体への使用量も公開 - エイプ@ログ

 

ベルハンマーはエンジンオイル添加剤として使える

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ベルハンマーの原液タイプはエンジンへの添加使用も効果が認められています。スズキ機工によれば『エンジンのタペット、カム等のノイズが静かになり、シリンダー、カム、クランク等の延命につながります』とのこと。

ガソリンレシプロエンジンのエネルギー効率は30%程度。トヨタ車に搭載される最新のハイブリッドエンジンでも40%程度です。

ガソリンが持っているエネルギーの半分以上が、エンジン内部の駆動ロスおよび熱として捨てられており、高い潤滑性を誇るベルハンマーをエンジンに使えれば、エンジン内部の出力ロスを低減でき、ひいてはエンジン性能のアップが狙えます。

さらにベルハンマーは高い潤滑性のほかに、一度潤滑面が出来上がると薬液が失われても、潤滑作用が継続する特性があります。

油膜が切れても潤滑性能が保たれるこの特性は、ドライスタートの悪影響を最小限に抑え、かつエンジンの焼き付き防止としても効果を発揮するでしょう。これは高回転を多用する小排気量エンジンには非常に魅力的な性能です。

しかし、エンジンオイルとギアオイルを共有する湿式クラッチを採用している車およびバイクは、クラッチ滑りを誘発するためベルハンマーをエンジン添加剤として使用することはできません。

 

どれくらいのベルハンマー添加でクラッチが滑る?

実際にエイプ100のエンジンオイルにベルハンマーを0.1〜0.6%添加しクラッチの滑り具合を検証している動画をみつけました。

動画の内容によると、エンジンオイルに直接添加した場合は0.1%程度の濃度でも明らかな影響が出るようですが、著しく駆動負荷ががかかるバイクトライアルで使用しても添加量が一定以下ならば、走行不能状態には陥らない模様です。

かといって添加量を0.1%以下に抑えれば問題が出ないとは言い切れません。同じエンジンであっても滑るタイミングはギア比と回転数にもよっても変動し、原則として高いギア比で高トルク発生回転数を使うような環境ほどクラッチ滑りは起こりやすくなる傾向にあります。

加えて動画のエイプ100は、トライアル用に装着された大径のドリブンスプロケットによって駆動負荷が減らされています。

とはいえ、少なくともベルハンマーを湿式クラッチエンジンのオイルへ添加したとしても、一定以下の濃度であれば、すぐにクラッチが滑るわけではないことが分かりました。

ベルハンマーによるエンジン駆動ロスの低減とクラッチのトルク伝達効率の低下はトレードオフ関係にあり、その「しきい値」を超えさえしなければ出力アップや燃費アップが狙えると思われます。

 

エンジンヘッドの要所だけに塗布なら?

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ベルハンマーは一度潤滑面が出来上がると、その後も潤滑作用が継続します。また、オイルに混入したからといって即座にクラッチが滑り出すわけではありません。

この2点の事項からエンジンヘッドの要所にだけベルハンマーを塗布すれば、クラッチにはほとんど影響を与えずエンジンに対して一時的なドーピング効果を与えられるのではないかと予想立てができます。

ただし少量とはいえ、塩素系および硫黄系極圧剤による金属への悪影響が懸念されます。しかし湿式クラッチ搭載エンジンであっても、乾式クラッチエンジンと内部構造や材質が大きく違うわけではないため、それほど大きな問題にはならないでしょう。

変速ギアに対してはむしろ極圧成分が摩耗抑制等の良い影響をもたらすかもしれません。

 

エイプのエンジンヘッドのオイルラインをチェック

エイプのエンジンヘッドのオイルラインを確認し、ベルハンマーを使う場合の塗布ポイントを探します。

エイプなどに搭載される縦型エンジンヘッドのオイルの流れは、オイルポンプ以降スタッドボルトを伝って、まずカムシャフトの軸受けへ供給され、溢れたオイルがカムシャフト下のオイル溜まりに集められるようです。

カム山は、オイル溜まりを舐めるように摺動面へオイルを付着させてロッカーアームとの潤滑を促すとともに、回転によってオイル溜まりのオイルを飛散させ、ヘッド全体にオイルを供給しているよう。

タイミングチェーンもクランクケースから絡め取ったオイルを少なからずヘッド内に供給していると思われます。

バルブヘッドとアジャストスクリューの打点やコッターは、ヘッド内に巻き上げられたオイルミストによって潤滑され、ロッカーアームのピボットはカムホルダー上部のオイル受けに溜まったオイルが流れ込むことで潤滑。バルブステムおよびガイドは原則オイルレスです。

したがって、エイプのエンジンヘッドにベルハンマーを使う場合は以下の箇所にごく少量だけ塗布します。

  • カムシャフトジャーナルの回転摺動面
  • カムとロッカーアームとの摺動面
  • バルブヘッドとタペットスクリューの打点部
  • バルブステムとコッターの摺動部(固着防止効果も期待)
  • バルブステムおよびガイドの摺動面(オイルレスメタルなので本来は注油不要)

予想されるベルハンマーの使用量は2〜3cc程度のものでしょう。エイプのオイルは約1L(1,000ml)であるため、ヘッドの要所に塗布してもエンジンオイルへ混入するベルハンマーの濃度は0.02〜0.03%以下にとどまります。

仮に、エンジンオイルに占めるベルハンマー濃度しきい値を1%に設定したとすれば、オイル交換までに3〜5回程度の塗布に抑えることで、クラッチへの影響を最小限に抑えられる計算になります。

クラッチ圧着力やスプロケットの歯数にも左右されますが、出力に対してクラッチの容量に余裕がある50ccエンジンなら、さらにクラッチ滑りは起こりにくくなると予想されます。

バルブクリアランスは1,000km走行後どれくらい大きくなる? 温間時はどれくらい狭くなる? - エイプ@ログ

 

まとめ

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エンジンヘッド要所へのベルハンマー少量塗布なら、おそらく何の問題も起こらず使えるしょう。ただし、この程度の塗布でどれだけエンジン性能に影響するか、またどれほどの期間に渡って効果が持続するかは未知数です。

塩素系・硫黄系極圧剤による悪影響については超長期に渡って観察しなければならないため正確な検証は不可能であり、仮に部品のクリアランスが過剰になったとしても、それがベルハンマーの影響だとは断定できません。

仮にクラッチが滑り出したとすると走行上の危険にもつながるため、湿式クラッチエンジン内への使用は非常にリスクある行為であることも認識する必要があります。

平時はクラッチが滑らずともとも、シフトアップ後スロットルを大きく開けた瞬間にクラッチが盛大に滑り出した場合、失速して後続車に追突される恐れがあります。また、コーナリング中に駆動力によってバイクを起こせず転倒する危険もあります。

ベルハンマーをエイプのエンジンヘッドへ塗布して、どれだけの効果が現れるか興味は尽きないものの、さまざまな懸念事項があるため安易に決行はできません。

バイクは動作の信頼性こそがなにより重要な乗り物であり、自ら信頼性を失わせる類の改造等は自殺行為以外のなにものでもないということが、実際にバイクに触れてみてよくわかりました。

結局のところ、単純にエンジン性能を向上させたいなら、より高性能なエンジンオイルを使うか、ベルハンマーと同様の効果を謳いながらもクラッチ滑りの心配をしなくてもよいスーパーゾイルのオイル添加剤を入れるのが確実という結論にいたりました。

 

↓後日スーパーゾイルスプレーをエンジンヘッドとプラグホールに塗布して、エンジン性能の変化を試してみました。性能向上は一時的であるもの、50km程度は金属表面改質効果による潤滑性能の向上が持続することがわかりました。

『LSベルハンマー Yamanaka Special』効果検証レポート一覧

  • 【ドライブトレインロス低減】編
  • 【操作性改善】編
  • 【乗り心地改善】編
  • 【使ってはいけない箇所】編

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