バルブクリアランス(タペットクリアランス)は、長く乗っていると摩耗や振動によってズレてくるものであり、定期的な調整がかかせません。
昨年夏に調整したきりであるバルブクリアランスを調整します。エイプのエンジンのバルブクリアランスが1,000km走行でどれくらい変化したのかと、冷間時と温間時はどれくらい変化するのかを見極めます。
1,000km走行後のズレ具合
昨年7月に調整した際のバルブクリアランスは、エイプの基準値下限である0.05mmに合わせ込んだはずでした。それが、およそ半年間・1,000kmの走行でIN側0.08mm、EX側0.17mmにまで広がっていました。
EX側はなぜか前回調整時にしっかり合わせ込むことができなかったため、変化量が大きくなった模様。熱による変化量が大きいためか、クリアランスが大きいため摩耗が進みやすかったとも原因として考えられます。
IN側を基準にすれば、エイプの縦型エンジンのアジャストスクリューは走行距離1,000kmあたりおよそ0.03ミリメートル摩耗するようです。
バルブクリアランス調整
IN側0.08mm→0.05mm(感覚的には0.06くらい)
EX側0.17mm→0.05mm
調整前でも気になるような大きなタペット音は感じられませんでしたが、調整後は明らかにエンジンノイズが小さくなったことを実感できました。
エンジンが起こす爆発の一発一発が一定のビートを刻むようになり、なめらかに回転上昇に変化するようになったのを感じるのは調整後の楽しみです。ただし、高回転域でややパワーがなくなったように感じられました。
多少バルブクリアランスが既定値を外れたところでエンジンの稼働には問題ありません。しかし、少しづつ変化してくため、その劣化具合を感じとるには鋭敏な感覚が必要。エンジンフィーリングを重視するのであればバルブクリアランス調整は、やはり定期的に行いたい作業です。
温間時のバルブクリアランス変化
走行後、手早くヘッドカバーとチェーンカバーを外し、エンジンが冷めるまえにクリアランス値を確認します。(※0.04mmは手持ちのシックネスゲージの最小単位)
IN側0.05mm→0.04mm(感覚的には0.03mm。0.04のシムがなんとか入る)
EX側0.05mm→0.04mm(感覚的には0.02〜0.03mm。0.04のシムがわずかに入らない)
温間時のバルブクリアランスは、エンジン温度にも左右されますが冷間時よりも0.03mmほど狭くなる模様。IN側の変化量がわずかに少ないのは、吸気で冷却されるためかもしれません。
温間時のクリアランスをゼロにするには、冷間時でIN側0.02mm・EX側0.03mmに合わせればよいことになります。(※あくまで、このエンジンでの数値です。)
雑感
温間時にバルブクリアランスがゼロになれば、エンジンは設計どおりの動きをします。しかし、そこまで調整を詰めるメリットがあるかどうかは疑問です。
もしかすると、温間時のバルブクリアランスを加味した状態が本来のエンジン設計上の動きなのかもしれません。こればかりは設計屋やレース屋でなければわかりません。
個人的な感想としては、バルブクリアランスを広めにとったほうが高回転での伸びがよいような気がします。
バルブクリアランスをゼロにして、わずか0.01mmバルブが下がったとしても、それがおよぼす吸排気効率への影響はたかが知れています。
アジャストスクリューの摩耗が進んでバルブクリアランスが広がった状態も『ならし運転』完了後のいち状態なのかもしれません。そう仮定すれば、今後摩耗が進むことよって高回転でパワーが出るようになるはずです。
温間時のIN・EX側のクリアランスを揃えて今回の調整は完了とします。前回は新品アジャストスクリューを使用したため初期摩耗が過分にあったと思います。
また、スクリューがタペットに当たる角度によっても摩耗具合は変わると思います。次回の調整時に、このデータがどのように変化するのか楽しみです。
エイプのバルブクリアランス調整に必要な工具とメンテナンスデータ
エイプのバルブクリアランス規定値
冷間 IN・EXともに 0.05〜0.1mm
ロックボルトの固定は9mmレンチです。
調整に特殊レンチが必要になるエイプ50には、マイナスドライバーで調整できるエイプ100用のアジャストスクリューへの交換がおすすめです。
バルブタイタイミングの調整方法は、他のサイトをご覧ください。
↓前回の作業の様子はこちらから
↓ 純正エアクリーナーから社外品へ交換するだけでもエンジンフィーリングは大きく改善します。