親指だけでアクセルを固定できる簡単操作の自作スロットルロッカー(アナログ・オートクルーズ)の改良版です。
前回と同じくアルミ線を使った簡易スロットルロッカーではありますが、スロットル保持力と見た目を改善しました。
この改良版は、市販の安価なスロットルロッカーよりも使いやすいと自信をもって言えます。
目次
前回の記事:
針金1本で後付け自作クルーズコントロール【洗濯バサミより使いやすい】親指ワンタッチ操作
スロットルロッカーとは
バイク乗車中は原則としてスロットルがある右手を離すことができません。迂闊に離そうものなら、バイクによってはトップギアでも強烈なエンジンブレーキがかかり、バイクはどんどん減速してしまいます。
そのため、ロングツーリングでは右手の痺れや疲労は大問題。走行中は右手を休めたくとも休ませられないのがバイクという乗り物の問題点です。
自動車では一般的になりつつある、電子制御で一定速を維持してくれるクルーズコントロールは、いまだ極一部のバイクにしか搭載されていません。
それ以外のバイクにクルーズコントロールを取付けるには、アナログ・クルーズコントロールとも呼ばれるスロットルロッカーを取付けて、機械的にスロットルグリップをロックさせる方法が一般的です。
1,000円以下で購入できるスロットルロッカーも販売されているものの、安価なものはお世辞にも使いやすいとは言えません。
そこで市販品よりも安価かつ使いやすいスロットルロッカーを自作しました。
改良版・自作スロットルロッカー
以前作ったスロットルロッカーは、アルミ線1本とペンチさえあれば誰でも、どんなバイクでも付けられるように考案しましたが、改良版はよりしっかりとスロットルレバーを固定できるようにすることと、スッキリと見せることに重点をおいて考案しました。
部品点数や工数は増えているものの、使いやすさと見た目のよさでは改良版の方が上です。
ただし、取付けは社外スロットルの開いている戻し側ワイヤー部ネジ穴を使っているため、戻しワイヤーを採用しているバイクおよび純正スロットルには取付けできません。
とはいえ、スロットルに巻き付けた金属線の変形によってロックする機構自体は単純かつ柔軟性が高いため、固定できる場所さえ確保できれば、どんなバイクにでも工夫次第で取付け可能です。
準備するもの
- M10×約15mm(ピッチ1.25)ボルト&ワッシャー2枚 ¥171(2本入り)
- 直径3mmアルミ丸棒 ¥128(1mあたり)
- 内径3mmシリコンチューブ ¥24(10cmあたり)
価格は近所のホームセンター調べ。原価はわずか数百円です。
作り方
- 3mm径のアルミ線に、内径3mmのシリコンチューブを被せます。ホースにシリコンスプレーを吹き入れると30cmくらいはスルリと入ります。長さは30cmほどあれば十分に足ります。
- M10のボルトにワッシャー2枚を入れ、開いているスロットルの戻り側ワイヤー取付け部に差し入れます。
ボルトはM10×25mmしか手に入らなかったため、適切な長さにカットしました。
ボルトの長さはスロットルの巻取りに不備が出ない長さに調整する必要があります。 - シリコンチューブを被せたアルミ線をボルトに沿って180°曲げます。手前側はストッパーになるため3cmほどの長さを確保しておきましょう。
- 奥側は、スロットルに巻き付けて手前に持ってきます。ストッパーに引っかかる長さを確保しつつ、スロットルに手を置いたまま操作しやすい長さでカットすれば完成です。
改良版のポイントはシリコンチューブ
シリコンチューブの表面は、サラッとしていますが、圧力をかけるとゴムのように変形しグリップに食いつきます。この微妙な摩擦がスロットルロッカーに最適でした。
クルーズコントロールOFFの状態ではスロットルの動きを妨げず、クルコンONの状態ではバネの反発に負けずにしっかりとスロットルを保持してくれます。
おかげで作動中のスロットルズレはほとんどありません。
おまけに、ロックを作動させるとスロットルがわずかに開く方向に動くため、安価な市販品より明らかに速度調整が容易です。ただし、ロックした状態でスロットルを強引にひねるとグリップが細かく削れてしまう点には注意が必要です。
キレイに仕上げるには
アルミ線とシリコンチューブを、ニッパーなどでまとめてカットしてしまうとシリコンチューブはわずかに縮んでアルミ線が露出してしまいます。
端面をキレイに仕上げるなら、長めにカットした後、シリコンチューブをめくってアルミ線だけを少し短くカットしましょう。
アルミ線の切断面でシリコンチューブへキズが付くのを防ぐためにヤスリで面取り作業も必須です。シリコンチューブはキズが付いたり、乱雑に切ったりすると、そこからボロボロになっていくため、ハサミで端面を切り直すとシリコンチューブの劣化を抑えられます。
シリコンチューブを長めにしておくことで、ケガの防止や、アルミ線の断面がグローブに引っかかったりするのを防ぐこともできます。
インプレッション
クルーズコントロールをONにするにはグリップに巻き付けた端のレバーをフックに引っ掛けるだけ。解除するには、引っ掛けたレバーを親指で払うだけです。
シリコンの摩擦のおかげで、クルーズコントロール作動時は振動が大きな原付単気筒エンジンでもスロットルズレはありません。数km走行してもズレは皆無です。
これなら、よりスロットル反力が強いバイクでも対応できるかと思います。原付一種の30km/hキープもこれがあれば楽々です。
シリコンチューブを被せたことで金属線の螺旋の絞りが弱くとも、表面摩擦でスロットルを保持してくれるようになったため、スロットルフィーリングを損ないにくくなっています。
変化が感じられるのは発進操作時にスロットルの摩擦抵抗がわずかに増えている程度であり、スロットル全開にしてもストッパーに当たった感触がしっかりわかります。
また、全体をコンパクトにまとめ、半透明シリコンのおかげで見た目もスッキリしたため、市販品のように目立たないのも特筆点です。ハンドルの内側を握る方の邪魔になりませんし、スイッチ操作の邪魔をすることもありません。
改良版は、取付けできるバイクは限られてしまいますが、それでも市販品より遥かに安価で使いやすくなっています。螺旋部分の絞り具合の調整や、金属線の材質や操作位置などを工夫すればさらに使いやすく改良できそうです。
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長期インプレッション
装着して2ヵ月ほど使いましたが、アルミ線のヘタリやシリコンの劣化などの症状はなく、取り付け直後と同じように使えています。一度ロックしてしまえば市販品にありがちな速度低下は感じられません。
スロットル開度を保持して乘る必要がないため、スロットルを強く握る必要がなく、長距離移動の手の痺れから開放されるのは大きなメリットです。市販のスロットルロッカーよりもオン・オフしやすいため、慣れれば街乗りでも使えます。
また、エンジン始動直後のエンジン回転が安定するまでのアイドルアップ代わりにも使うことができます。
↓改善前のスロットルロッカーにシリコンチューブを被せるだけでも同様のスロットル保持力の改善が見込まれます。 改良前のスロットルロッカーは、金属線を曲げるだけで、どんなバイクにでも付けられるクルーズコントロールです。
↓スロットルロッカーは原則としてトップギアで使いますが、バイクや走行環境によっては1段低いギアでホールドしたほうが路面傾斜によるアップダウンでも速度変動を抑えられます。また低い回転数だけを使い続けるのもエンジンにはよろしくありません。
以下の記事ではバイクごとの最適なエンジン回転数の選び方を解説しています。