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キャブレターにフル・ディンプル加工【トルクアップに効果あり】キャブ調整も

キャブレター出口にディンプル加工を追加しました。

結果は上々であり、全回転域で驚くほどエンジントルクがアップしてバイクが乗りやすくなります。

ディンプル加工と加工後のキャブレターセッティングと変化までをレポートします。

 

ディンプル加工とは?

ディンプル加工は本来、吸気壁面の摩擦抵抗を低減するための処理です。ディンプルの凸凹で発生する乱気流はベアリングのように働き、流速が上がるほど流動抵抗を低減します。

 

ただし、その効果が発揮されるには、ある程度の流速が必要であると同時に、絶対的な空気流量が減少してしまうデメリットがあります。

 

ただし、ここで着目するのは摩擦抵抗低減効果ではなく、壁面で発生する乱気流の方です。ディンプルの凹凸で発生する乱気流は、壁面を伝って流れる液状のガソリンを撹拌し、燃料の霧化を促進させると予想されます。

 

インマニ等へのディンプル加工は、インジェクションのように燃料を細かな霧状にはできないキャブレターエンジンにこそ最適なチューニング手法といえるでしょう。

 

今回は、さらに霧化を促進させるべくキャブレターにディンプル加工を追加していきます。ディンプル加工の詳細については、以下の2記事を読んでいただくと理解が深まると思います。

10km/h速くなるキャブレター改造【ディンプル加工】霧化促進で性能アップ 

インテークマニホールドにディンプル加工【キャブレター改造】

 

キャブレターにディンプル加工を追加

honda_ape_carburetor_before
honda_ape_carburetor_after
左:前回加工 右:今回加工

ジェットノズルから空気に乗って放出される燃料は放射状に広がります。できる限りノズルに近い箇所からディンプル加工を施すことで高い効果が得られると思われます。

 

しかし、エイプ純正PB14キャブレターの内径はわずか小指大。手持ちの手持ちのリューターでは、スロージェット付近まで刃が届かないため、まずリューター本体を削る加工を必要とします。

 

加工後は、スロージェットのノズル付近まで刃先が届くようになりました。ちなみに、使用しているのはダイソーの800円リューターです。

daiso_leutor_dimple_before
daiso_leutor_dimple_after
左:加工前 右:加工後

加工後インプレッション

キャブレター出口の下半分にディンプルを追加しただけで、スロットルのピックアップが鋭くなりました。微妙な開け閉めでエンジンが機敏に反応し、瞬時にトルクが立ち上がります。

 

ただし、その効果があるのは当然ながらスロットル半開だけです。全開では大きな変化は感じられません。半開と全開の差が分かりづらくなったため、電動機のように頭打ちするようなフィーリングになってしまいます。

 

全体にディンプル加工追加

f:id:halu-blues:20210929201659j:plain

下半分の加工で、ディンプル面積を増やすほど効果が出ることが確認できました。続いて、バランスを取るためにキャブ出口全体にディンプル加工を施します。

 

キャブレターの材質は意外と硬く、アルミ製のインマニのようには削れません。リューターの連続稼働時間は5分に指定されているため、冷却時間を挟みながら地道に作業を進める必要があります。

加工後インプレッション

キャブレター出口全体に加工を施したことで、予想通り全域でスロットルレスポンス・エンジントルクがアップしています。

 

感覚的には、ほんのわずかにスロットルを開けてもエンジンが反応してくれるようになり、トルクの立ち上がり方もスロットル開度に忠実で全閉から全開までリニアに反応します。

 

最高速度の向上はありませんでしたが、これまで感じていた6,000rpm付近のトルクの谷が幾分解消されたような気がします。発進時のトルクも確実にアップしています。

ただし、冷間・温間ともにエンジン始動性が極端に悪化しました。

 

キャブレター加工の注意点

加工時は内部にティッシュペーパーを詰めて、ノズルへの金属粉の侵入を防止しています。


キャブレター加工には大きなリスクが伴います。失敗すればエンジンが正常に稼働できなくな恐れがあるため、慎重な加工が求められます。

 

とはいえ、単純明快な仕組みのキャブレターなら、ジェットノズルやスロットルバルブなどの主要箇所さえ破損させなければ、大きな影響が出ることはないでしょう。

 

作業時は切粉などがノズル内に侵入しないように注意しましょう。セッティングへの悪影響を避けるために、加工後は必ず洗浄してから取り付けるようにしてください。

 

また、加工をすれば燃調は確実に変化するうえ、従来の調整セオリーが通用しなくなります。キャブレター加工をするなら、感覚でキャブ調整ができるセッティング技術は最低限必要になると思われます。

 

キャブレターセッティングメモ

ディンプル加工を施すと燃調が薄い方向に変化する傾向にあります。リセッティングをせずとも、とくに不具合はなかったためキャブレターセッティングの必要性は感じられませんでした。

 

しかし、燃料を増やすとエンジン特性が大きく変化します。やはりディンプル加工の追加によって燃調が薄くなっている模様です。

 

調整後は驚くほど加速感に変化がありました。ディンプル加工後は、調子が悪くなくともキャブセッティングは見直すべきです。

ニードルシムはミニ四駆用のワッシャを愛用しています。

調整1回目

  • メインジェット:#65
  • スロー:#36
  • ニードルジェット:下段
  • 【変更】ニードルシム:0.5mm1枚追加(合計1枚)

向上したスロットルピックアップにひとまわり厚くなったトルクがしっかりついてきます。

発進時の微低回転トルクもさらにアップしており、ハイギアードな車両にもかかわらずエンストしそうな気配は一切なくなりました。

 

エンジンの始動性は良好とは言えないまでも回復。しかし、アクセルを開け気味にしなければ、やや始動に手間取ります。始動に必要な燃料が十分にシリンダーへ入って行かないのかもしれません。

調整2回目

  • メインジェット:#65→#65
  • 【変更】スロー:#36→#38
  • 【変更】ニードルジェット:下段→中段
  • ニードルシム:0.5mm1枚(合計1枚)

始動性向上のため、スロー系統を含めて大きくリセッティング。アイドリング回転数は変化せずとも、アイドリング時の排気音が静かになりました。それ以外は変化がありません。

 

調整3回目

  • 【変更】ニードルシム:0.5mm1枚追加(合計2枚)

ピックアップの鋭さはそのまま、全回転域で大きくトルクが増しました。気のせいでは片付けられないほどに加速力向上。

最高速が5km/hほど向上し、無風状態ではコンスタントに5速ホールド加速で60km/hを突破します。

 

エンジン音・排気音が明らかに荒々しくなりました。その代わりシフトペダルの引っかかりが顕著に。エンジンの振動が増えている模様です。

調整4回目

  • 【変更】ニードルシム:0.5mm1枚追加(合計3枚)

さらに増量方向へ調整。燃調が濃すぎて走れなくなるかと思いきや、わずかにエンジン音と振動がマイルドになりました。シフトペダルの引っかかりもやや改善。まだ燃調が薄いのかもしれません。

 

ただし、微開度でのスロットルピックアップがわずかに悪化しています。スロットル中開度域は良好。高回転の伸びがわずかに失われた気がします。最高速に大きな変化はなく、エンジン始動性は冷感・温間ともに変化ありません。

 

調整5回目

  • 【変更】メインジェット:#65→#68
  • スロー:#36
  • ニードルジェット:中段
  • ニードルシム:0.5mm合計3枚

アイドリングから走行音まで全域で排気音が大きくなりました。トルク感はあるものの、回転上昇がやや重く感じられます。

シフトフィールの違和感はほぼなし。ただし、微開度でスロットルのつきが悪い。これは3枚重ねのワッシャーのせいだと思われます。

調整6回目

  • メインジェット:#68
  • スロー:#36
  • ニードルジェット:中段
  • 【変更】ニードルシム:0.5mm合計3枚→1枚(合計1枚)

エンジンが幾分軽やかに回るようになりました。3,000〜5,000rpmのフィーリングがとくに良好され、スロットル微開度での引っ掛かりも改善されています。

ワッシャーは最大でも1枚までに抑えた方が良いと思われます。

調整7回目

  • メインジェット:#68
  • スロー:#36
  • ニードルジェット:中段
  • 【変更】ニードルシム:0.5mm合計1枚→0枚

大きな変化は感じられないものの、エンジンがより軽やかに回るようになった印象です。シフトフィールやトルク感にも不満はなく、始動性も良好です。

ただし、メインジェットを交換してから大きくなった排気音は変わっていません。

 

現状のまとめ

キャブレターへのディンプル加工は想像以上に燃調が薄い方向に変化するようです。

 

これだけ変化しても、なんの不具合もなく走れてしまうのはディンプル加工の功罪といえるでしょう。ディンプル加工後は、キャブセッティングの許容範囲が広くなる代わりに、キャブの正確な合わせ込みが難しくなります。

 

とはいえ、ニードルシムを2枚にして燃料を増量したときの分厚くなったトルクフィーリングには感激しました。

ドライブスプロケットをもう1段上げようか検討できるほどのトルクアップは、これまで施したどのカスタムよりも大きな変化です。

 

ただし、実質的な流路面積が小さくなるためか、高回転の伸びは加工前に比べて低下します。

そのためキャブレターのディンプル加工は、口径が大きめのキャブレターへ交換した際の低下してしまう低速ドライバビリティの改善に効果があるかもしれません。

 

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