スプリングの張力だけでサイレンサーを固定するスリップオンマフラーは排気漏れが起こりがちです。
フランジ部分の排気漏れを抑制したいのなら、アルミテープや液体ガスケットを使用するよりも、アルミ板や銅板加工による自作ガスケットを強くおすすめします。
漏れる排気ガス量が過大だと、走行中はうるさく、停車時は排ガス臭が鼻を刺します。それに加えて、隙間があるとマフラーの性能が発揮しきれていない可能性もあります。
目次
- マフラーの隙間埋めに耐熱アルミテープや液体ガスケットはダメ?
- アルミ板加工スリップオンマフラーガスケットの作り方
- アルミ板加工ガスケットの効果は?
- マフラーの隙間がバイクにおよぼす悪影響
- まとめ:わずかでも排気漏れある場合にはしっかりしたガスケットを使いたい
マフラーの隙間埋めに耐熱アルミテープや液体ガスケットはダメ?
巻数で厚さを調整できるアルミテープはマフラーの隙間埋めに便利であるものの、密着させようとするとサイレンサー装着時に削れるか剥がれるかして結局気密性が落ちます。また着脱の度に擦れて、結局剥がれて隙間ができがちです。
また、マフラーのように熱がかかる部分には耐熱アルミテープを使うのが必須ですが、耐熱アルミテープは通常のアルミテープよりも遥かに高額です。
かといって耐熱仕様ではない普通のアルミテープをマフラーに使うと気密は保たれるものの、粘着剤が溶けて水のように流れ出しテープ自体の定着性が低下します。さらにいえば、燃調や排気温度などの条件が整うと粘着剤やテープ自体が燃えて車両火災に発展しかねません。
液体ガスケットは?
液体ガスケットは、そもそも金属表面同士の凹凸によってできる微細な隙間を埋めるものであり、マフラーの接合部のように大きな隙間を埋めるのには不適切です。
液体ガスケットは、あくまでガスケットの補助として使うのが本来の使い方です。
また乾燥時間がかかるうえ、薬液によって汚れてしまい整備性が低下することも液体ガスケットを使うデメリットです。車検があるバイクならともかく、原付にはそこまでの配慮は不要といえるでしょう。
アルミ板加工スリップオンマフラーガスケットの作り方
今回使用したのはダイソーの0.3mm厚の粘着剤付アルミ板。価格はもちろん税抜き100円です。
板厚は隙間量に応じて選び分けましょう。0.3mm程度の厚さなら普通のハサミでもキレイに切断できます。
用意するもの
- 薄めのアルミ板(0.3〜0.5mm厚程度)
- 金切りバサミ(0.3mmなら普通のハサミでも十分切れます)
- ハンマー
ガスケットの作り方
アルミ板を適当な寸法のリボン状に切り出し、メス側の円周内側に貼り付けて余分な長さはカット。水抜き穴を設けたい場合は、合わせ目を広めに確保して地面側に配置しましょう。こうすることでスチールマフラーなどの防錆性能も高められます。
製作のポイントは、出口から少しだけはみ出してアルミ板を当てがうことです。
はみ出した部分はハンマーなどで叩いて外側へ折り曲げることで前後方向のズレ防止のストッパーになることに加え、テーパーが付くことでパイプが差し入れやすくなります。
アルミ板自体に粘着剤の有無は問いませんが、粘着剤付き方が加工時に貼り付けて固定できるため思いの外便利でした。もちろん、板厚を変えたり2枚重ねて加工することで隙間の大きさに応じたガスケットが作れます。
板厚は、マフラーが手で簡単に抜き差しできない程度の固定具合を目安にするとよいでしょう。万全を期すなら液体ガスケットを薄く塗っておきます。
アルミ板ガスケットはテールエンドに装着するインナーサイレンサーの隙間埋めなどにも使用することで、より高い消音性能を発揮させられます。
アルミ板加工ガスケットの効果は?
装着後は、フランジ部分からの排気漏れに伴う音漏れがキレイになくなっています。
ただし、サイレンサーに流れ込む排気の流量が増えたためか、マフラー出口から発せられる排気音そのものは大きくなりました。
そのため音の発生源がやや後方に移ったただけで、走行時の体感的な音量はほぼ変わっていません。しかし、これなら速度が高まるほど、走行中の音は聞こえづらくなるはずです。
自作ガスケットの装着により排気の流れにも影響が出たようで、高回転が回りやすくなったような気もします。
また、スロットルオフ時のトルクバックが小さく感じられるようになり、スロットルオフにしたときの減速ショックや、エンジンブレーキが効いている間の排気音やフィーリングもガスケット無しのときとは明らかに異なります。
ガスケットが装着されたことで排気の抜けがどのような状態でも一定に保たれ、これまでバイクに感じていた安っぽさが薄れる印象を抱きました。マフラーフランジからの排気漏れは、バイクに対して思った以上に大きく影響するようです。
ただし、同時にシートから伝わる振動も明らかに増えました。排気ガスの圧力波による振動に加え、エキパイとサイレンサーの接合強度が増したことにより、エンジンの振動もダイレクトに伝わるようになったのだと思われます。
マフラーの隙間がバイクにおよぼす悪影響
マフラーの穴やフランジの隙間など排気経路に漏れがあると、消音されないままの音が漏れ出すことに加え、エンジン出力にも影響をおよぼします。
排気経路に過大な漏れが箇所がある状態は、エンジンの低速トルク確保にとって重要な排気管長がわずかに短くなることとほぼ同義です。
隙間が過大だと、排気が押し出されることで管内で発生する負圧による吸引作用も小さくなるため、特定回転域では燃焼室内の掃気が十分に行えず充填効率が低下し、その結果わずかとはいえエンジン出力が低下します。
とくに、しっかりと調整された純正マフラーや高性能マフラーほど、排気漏れによる悪影響が顕著に現れやすいといえるでしょう。
エンジン出力の観点では、入り口から出口まで一切の排気漏れを起こさない一本物のマフラーがベストです。しかし振動が大きいバイクは、マフラー全体を固定してしまうと脆い部分から折れてしまいがちです。
バイクのマフラーにスリップオンタイプが多いのは、ある程度の隙間を設けることでマフラーの破損を避けるための必須構造ともいえます。
そのためスリップオンマフラーはガスケット厚などを調整し、排気漏れを抑えつつも、フランジ部分を硬め過ぎない程度に固定するのがよいでしょう。
潰れやすいアルミや銅でつくった自作ガスケットなら自由に設計できるため、排気漏れを抑えつつ、耐久性とエンジンパフォーマンスを両立できます。
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まとめ:わずかでも排気漏れある場合にはしっかりしたガスケットを使いたい
装着しているのは車両購入時から装着されていた古いヨシムラサイクロンチタンです。ガスケットを付けただけで、こうも性能に変化が現れたのは意外な結果でした。
50ccのフレームに100cc用のマフラーが付いているため、車体から飛び出したマフラー固定ステーとの干渉を避けるため、差し込み量を浅くせざるを得ません。
そのためフランジ部分には、漏れ出した排気ガスによってススが大量に付着しています。
そのうえ、このマフラーはサイレンサーの入り口内部の口径が30mm程度まで絞られているため、その部分で増加した排気抵抗によってフランジ部分から盛大に排気漏れを起こしていたのだと思われます。
これらの要因が重なっていたことで、余計にガスケット装着後の変化がわかりやすかったのでしょう。
つまり、これまでヨシムラサイクロンマフラー本来の性能を発揮できていなかったということです。もしかしたら、新品時は専用のガスケットが付属していたのかもしれません。
わずかでも排気漏れを起こしているなら、車検の有無や程度に関わらずしっかりと塞いでおくのがよいでしょう。
自作ガスケットにはダイソーの粘着剤付きアルミ板がおすすめ
耐熱アルミテープや液体ガスケットの価格は1,000円程度。それに対し、ダイソーのアルミ板は税抜き100円です。
おまけに0.3mmの板厚は隙間にピッタリ。サイレンサーをエキパイに差し込む際は、手の力では狭くて差し入れづらいものの、エキパイにテンションをかけて装着するとエンジンの振動で自然と深く入っていくくらいの絶妙な固定具合です。裏面の粘着剤も加工時の作業性に貢献してくれました。
Amazonでも粘着剤付きのアルミ板は販売されていますが厚さが0.3mmで粘着テープ付きとなると、条件に合う商品はなかなかみつかりません。スリップオンマフラーの自作ガスケットにはダイソーの粘着剤付きアルミ板がおすすめです。
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